あらすじ
「村を壊します。あなたたちは丸呑みです。ごめんね」二足歩行の巨大な狸とともにやってきたあかりさんはそう告げた。村を焼き、村人を呑み込む〈権三郎狸〉の伝説は、古くからこの地に語り継がれている。あれはただの昔話ではなかったのか。中学3年生の住谷はじめは、戸惑いながらも抗おうとするが――。恩田陸、萩尾望都、森見登美彦が絶賛した、日本ファンタジーノベル大賞2017受賞作!(解説・森見登美彦)
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あらすじの「村を壊します。あなたたちは丸呑みです。ごめんね」という、軽い言い方と、言ってることの差に心惹かれた。
田舎の村に突如現れた村を焼き、村人を呑み込むという伝説の権三郎狸。
一ヶ月というタイムリミットの中で村人にどのような変化が起こるのかということがリアルに描かれていて、表紙やタイトルからは想像できないほど生々しいお話だった。
権三郎狸についてや、その他気になる場面が完全に解決されずに終わるのも、タイムリミットを感じさせる、余白、余韻としてとても好きだった。
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全員狸に丸呑みにされて滅びることが決まった村の、最後の一ヶ月。ある意味終末もの?
狸の怪異自体よりも、終わりを突きつけられて静かに呑気に狂っていく村人たちの様子が怖かった。
敢えて余白を残した終わり方が印象的で他の読者とあれこれ語りたくなる!
Posted by ブクログ
自身の身の丈では思いの全ては叶えることが出来ない、抗うことの出来ない運命。日々の生活の中で感じることでもある話であり、長くを見れば人の一生も同じようなものだと思う。この幸せが未来永劫に続けば良いと思う時があるがそれは叶わない話。
ファンタジーであり、ホラーであり、シュールであり、ユーモアでもあり、登場人物は、立場・環境の違いがあり、さまざまな思いや考えから色々な行動を起こすため、それぞれに妙な人間味を感じた。
読む人によって、様々な捉え方、感じ方が出来そうな話だ。私は切ない気持ちになってしまったので次は明るい気持ちになる小説を読もうと思ったが笑、読み終えて、一日一日を大切にして、前を向いて、出来る限り頑張って生きて行こうという気持ちにもなった。とても面白い作品でした。
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2、3回読んだけど何度読んでも面白い。終わりに向かって、村人それぞれがいろんなふうに壊れていくのが面白い。終わり方が、そんなにハッピーじゃないのもいい。
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引き込まれる設定と巧みな文体に魅了されてぐんぐん読み進めてしまった。面白い。
権三郎狸の出現によって、破滅の運命から逃れようとする人、抗おうとする人、受け入れる人、ベクトルは違えど着実に変化していく村の人々と、それでもどこかに漂う日常の雰囲気の間にギャップがあり、それによって物語がより一層深みを増している。「全てを諦めきった人が醸し出す静かな絶望」という感じ。それを中学三年生の少女の目線から描ききった作者の発想力、観察力、表現力は素晴らしいと思う。新潮文庫の解説は森見登美彦氏だが、森見の作品が好きな人には特におすすめです。
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物語の端々で、想像が膨らむ。
「この後って、」「この言葉って…」と読む人によって色んなお話が出来上がりそうです。
終わりに向けて、どんどん加速していくお話でした。
Posted by ブクログ
本作の読みどころは、日常では「悪」と見做される行為が、日常が崩壊したそばから仕切りを失って主人公の行為に雪崩れ込んでくるところにあると私は感じた。淡々としているところが、逆に凄まじい。だから、主人公と一緒に、自分の倫理観も麻痺していく。報復、暴行、火付、殺人。つくづく、「善行」なんてものは、極めて条件付きの世界でしか航行できないやわな船なんだと思わされる。
ファンタジーノベル大賞は、私の中ではまだ信頼できる賞モノのひとつ。酒見賢一氏しかり、森見登美彦氏しかり。今回もいい感じ。読み手に媚びてない作品は、よい。含みの多さも大いに歓迎できる。地名の消滅、自治体の消滅、死の遠さ、余命宣告を受けた後の生、などなど。掘り下げポイントがさらーっと詰め込まれている。しかも、そういうのを気にしなくても、登美彦氏が言うように十分、読み応えがある作品。
ただ、帯に「ディストピア・ファンタジー」ってあったけど、ディストピア?なのか??そこは何とも言えない。
Posted by ブクログ
そうか、こういうの、ファンタジーか。
妖怪話だけど、海外から見ればファンタジーなんだな。
でも帯に書いてる「ディストピア・ファンタジー」は嘘だろ。どこがディストピアやねん。
そして、フシギ系ファンタジーではなく、どちらかと言うとかなりのホラーだった。
グロいとかびっくりとかそういうのではなく、淡々と静かに、存在について考えてしまう怖さ。和風ホラーですねぇ。
そして、色々な点が説明ない系でもあるが、これこそまさに昔話というか民話というか、とにかく良い。
本屋で衝動買いして、帰りのマクドで1時間ほどで一気に読み終わってしまった。
姉がいなくなるときも怖いが、主人公が姉を襲った相手を角材3本が折れるまでボコボコにするのが一番怖かったかもしれない。一番怖いのは人間なんですねぇ。
いや、それは言い過ぎか。やはり姉の存在を少しずつ忘れていってしまうという表現がじわじわと、怖かった。
Posted by ブクログ
奇妙な話すぎて面白かった!
謎が多くてその意味は?とか結末はどうなるんだろうとか考えながら読み進めていたけど謎は謎のままで、主人公含め村の人々は丸呑みにされるなどの運命を受け入れるしかなくて、というか最終的には受け入れていて、変だった。
1人でも覚えていればなかったことにはならないから受け入れるしかないのかも。
死が迫ってやけくそになって?なのか加害行為にはしる人がいるのもリアルでこわかった。
Posted by ブクログ
「私たち丸呑みにされちゃうらしいよ」「そっか、じゃあ宿題やっても意味ないか」とズレた倫理観のままふわふわと話が進んでいくかと思うと、起承転結の転のところで急に「なんで大人しく受けいれてるんだ私は、変えられないと思うものでも変えてしまえばいいんだ!」と思い、「じゃあ殺すか」と極端な破壊行動に飛びつくあたり情緒が安定してなさすぎる。
かと思うと、結局やる気になったからといってなにが変わることもなく、逆に諦めとか受け入れとかそういう負の方向の劇的な変化もなく、すっと幕が引かれていく。
読み終わっても権三郎狸という不気味な存在があまり不気味に感じられないという不気味さがあっていいなと思う。
Posted by ブクログ
皆が滅びを受け入れて「せめて死ぬ前に楽しもう」と緩やかに狂ってゆく様子が不気味だった。
昔話を聞いてしまうと受け入れるしかなくなるのは、希望なのか絶望なのか……。
たぬきは可愛かったです。
Posted by ブクログ
祖父から聞いていた、「権三郎狸」の話では、美しい女が巨大な狸を村につれてきて、村の人々を次々と丸呑みにし、誰もいなくなった村に火を放ち、何もかも焼き尽くすのだという。5月はじめの連休、はじめは友達の綾子からの電話にあわてて駆けつけた。権三郎狸が現れたという。信楽焼の狸の置物のような狸を連れた女性あかりによると、5月30日に村の人達を飲むことが決まっているという…。
おそらく新人の作家で、ネット感覚の言語感のため、非常にスピード感のある文章である。時々主語が飛んだり、てにをはが抜けたりするも、それほど読みにくいと感じない。
ほのぼのアニメの原作のような話かいなと読み始め、途中までは「あ、私達、飲まれるんだ」とのんびり進むかと思いきや、案の定、人々のいろいろな反応に振り回され始める作品である。アニメ化されるようなテーマではあるが、中盤に結構エゲツない物があったりもするので、ちょっとどうだろうか。
我々の世代において、第一印象というか、全体の印象は、筒井康隆『死に方』の長編リメイクという感がある。もちろんあちらとは違い、権三郎狸は期日になるまでのんびりと過ごしているが、何もなかったように振る舞う人、おかしくなる人、無駄だと言われて逃げ惑う人など、いろいろな反応がある部分は、筒井康隆の作風を思い起こさせる。
日常的な終末ファンタジーという、なかなか面白いテーマで、読みやすさもあるため、各世代におすすめの作品であろう。
ただ、男性作家で最初の書き出しから、はじめが男の子だと錯覚してしまったことと、宮崎アニメのような中途半端なタイトルに改題してしまったこと(原題は違ったらしい)で星一つマイナス。
解説が狸つながりで森見登美彦ですか。なるほどね。
Posted by ブクログ
まずはタイトルのインパクトで手に取ったんだけど、少し読んでみて、なるほどのほほんとした感じの少し不思議なSFだろうなーと。
読み進めてみたらもっとディープで破天荒な藤子不二雄テイストのファンタジーだったと。気持ちよく騙されたなー。
暗く陰鬱な雰囲気が漂いがちな閉塞的な村話だし、暴力的なシーンもあるのに何故かあっけらかんと明るい。ある種バッドエンドなのに微笑ましい。
受け入れ難い現実をまぁいっかと諦観で受け止める人たちを見てるから、読んでる方もまぁこんな終わり方でもいっか、ってなるのかしらん。
ボリューム感も程よくキレイな作品だった。
Posted by ブクログ
面白かった。賭け値なしに面白い!舞台と設定をこれでもかというくらいに綺麗に進行した作品。登場人物にはあまり魅力を感じなかったが、システムの消費がずば抜けて凄かった。終盤で一気に物語を加速させる様には鳥肌が立った。又、主人公の独白や情景描写も良かった。漠然と良かったとしか言えないが、あまり想像力のない僕も世界観に上手くのめり込めることが出来たのだからとても素晴らしかったのだろう。ただ、後半の加速分、少しだけ前半が退屈だった。登場人物を魅力的に思えればそうではないのかもしれないが。何にせよ、良い作品だった。
Posted by ブクログ
いやあ凄いものを読んだなあと。活き活きと細部が描かれ、生活の匂いが行間から香り立ちそうなほど艶めかしいのに、ちょっと離れて全体を眺めようとすると、薄ぼんやりとした霞に包まれてしまう感じ。なんとも不思議な読後感。分かるけど分からない。分からないのに分かる。明晰夢な白昼夢を見ていた気分。
うまく言葉で感想をまとめることが出来ないけど、この作品を長編としてまとめ上げた手腕の見事さに舌を巻く。くどくどと長ったらしい感じを微塵も感じさせず、読後感は短編を読んだ時のそれに近い。
おそらく、これを映像化するのは大して難しくはないと思う。ラストだけCGでちょいちょいとやればいける。ただ、この作品の根幹とも言うべき空気感は、たぶん映像化できないと思う。まさに、小説という形態だから出来た表現。なんとも言えない居心地の悪さというか、仙台弁で言うところの「いづい」感じ。
いやあ凄いもの読んだわ。
Posted by ブクログ
不思議なお話。まさにファンタジー!?
唐突に始まり、唐突に終わる。
何このエンディング!?
面白かったんだけど、話は全然終わらない。
この後、どうなるの?これから先どうなるの?
Posted by ブクログ
あと一か月で村ごと死ぬことが決まった人々は・・・
というお話。
設定からしてものすごく暴力的ですが、どこかコミカル、ときどきファンタジック、全体を覆うホラーなカンジが面白かったです。
ズバっとネタバレしてるわけではないんですが、死ぬこととか生きることとかについて、人様におしらせするようなものでもない気がするけど、この本を読んで考えてしまったので書いてしまいます。
あ、でもやっぱネタバレしてますね。あはは。
なので、この先はうっかり読んでしまわれませんように、どうぞ。
信楽焼の狸にそっくりなバケモノと綺麗な女の人がやってきて、一か月後に村全体を丸呑みにするという。
その時点で村にいた人は全員対象になるという。
逃れることはできないという。
呑まれるときは痛くないし、かかわった人々の記憶からも消されるという。
このルールを知った時点で考えたことは「なにそれ、ステキ」でした。
そんな風に生きることをやめられるならラッキーだと。
痛くないし、悲しませることもなく、迷惑もかけない。
お話の中の人々はそんな風に考えているわけじゃないけど、多くが「あららー、マジかー」「来ちゃったかー」くらいの衝撃しか受けてない。まずそこに違和感。
あと一ヶ月で死ぬのだから学校も行かないし、もちろん宿題も提出しないし、蓄財もバーベキューで使ってしまうし、やってはいけないとわかっていることもやる。これには理解。
主人公も最初そんな感じなのですが、ある転機によって記憶を失いたくないと思い、生き延びようと決意する。
しかし、「覚えている」ために生き延びるって何なんでしょう。「ちゃんと覚えていればなかったことにならない」って何なんでしょう。
疎かにしていいこととは思っていないけど、それが生き延びる理由になるのか?わたしにとってはそんなの生きる理由になり得ない。
といってじゃぁオマエの生きる意味はなんなのだと問われれば「死なないからだ」と答えるしかない。
死なない以上生き続けるわけで、生きるのなら少しでも快適に生きたいから、仕事してお金も稼ぐし、愛想笑いもすれば、他人に親切にすることもあるし、自分の意見を通すためにケンカもするのだ。
まぁ、同調はできないが「そういうのもあるかな」と呑み込めたことと、全体的に飄々とした感じがツボだったので、面白かった。
Posted by ブクログ
女子中学生が主人公で文体は軽い印象だが、舞台は陸の孤島というべき山村、独自の民話にまつわる事件と、じんわり怖さが増してくる。解説の森見登美彦による読み解きも面白い。
札幌弘栄堂書店にて手書きポップ付きで平積みされていた。出版社の販促ではなく、書店オリジナルのプッシュは読書心をくすぐる。書店員が実際に読んで惚れ込んでおススメしているのがわかるから。結果、大正解。
Posted by ブクログ
あっさりと読めるが、記憶に残る作品。祖父から聞かされた昔話が導入で示されるが、それがリアルです。
「あとひと月で死ぬ」そう予告された村人が死を受け入れている様子が、リアリティに欠けると思いますが、村外出身の人達の取り乱す描写が、主人公が抱いた感想に通じるこの村の異質性、そして村と外の世界が違うということを表現しているような気がしました。
特にあちこちに信楽焼のたぬき置物が隣町には置いてある描写。「逃げられない」というのは、この信楽焼たぬきの置物が監視しているから?何故これを置くんだという主人公の指摘に、はっとした。もしかしたら、他の世界には、私たちが伝承で恐れている化け物、妖がマスコットのような置物として定着しているようなそんな少しの恐怖と妄想が湧きます笑
見せ場という最大の盛り上がりは微妙でした…。
Posted by ブクログ
理不尽かつ不可避に村を消滅させる存在と、それによって運命を狂わされていく人々のお話。そもそもが理不尽なので、救いも解決もない。緩やかな極限におかれた中で、どう受け入れ、どう立ち向かうのかそんなお話でした。
Posted by ブクログ
とても面白かった。そして、じわっと背筋が凍る。さらっと読んでも面白いのだが、そこかしこにイニュエンドゥな示唆に富んでいて、色々と思考をほじくられまくる。読み手の好きな深度で読める感じか。設定が絶妙。本文中に語られない部分がまた、読みながら自動でいくつものパターンを想像していってしまう。のんびりとしたアポカリプトノベル、大変ビジュアル的でバイオレンスシーンもあるのに、何故か若年層にもレコマンドしてしまいそうな一冊。刺さる言葉も多い。
>「自治会長のとこにも、真岡先生のとこにも芳須先生のとこにも行ったけど、でも言うことは一緒。そういうもんやから諦めなさいって。昔からこの村に伝わってることやからよそもんの君にはわからんやろうしまあ大変やろうけど、この村はそうなるもんやと決まってたんや、やって」
マインドコントロールの怖さというか、ある意味洗脳のような感じで、思考停止の恐ろしさをつくづくと考える。
Posted by ブクログ
「1ヶ月後、(この狸が)村人全員殺して村壊すね」と余命宣告されたのに村人は「しょうがないかー」と残された時間を気ままに過ごす。少しは狸陣営にアクションは起こすけれど、劇的に抗う訳でもないのが逆にリアルで怖い
雰囲気も単調寄りで掴みどころがなく怖い
Posted by ブクログ
話の面白さなのか、文章のせいか相当に引き込まれます。この先どうなるんだ?と。
ただ、内容と結末は結構エグいかな。
小説を深読みする人には、楽しめるんでしょう。
Posted by ブクログ
最初から最後の方までマジであっという間でこんなに私衝撃があって内容忘れられないのはこの本くらいかもしれないくらい。
ただ終わり方があっけなくてえ、、、こういう結末???まーじ???ってなってめっちゃよかった!!とはいえなかったかな、、、世界観が頭の中でどんどん作り出されていく感じはすごく好きだった。
Posted by ブクログ
1ヶ月後に隕石が落ちて地球滅亡でもなく、病気で余命1ヶ月でもなく、狸に呑み込まれ村が焼かれるまで1ヶ月。言い伝えがあるにしても素直に受け入れすぎなのが奇妙。呪いのせいでもなく、そこが選ばれる理由もわからないのに…。主人公の場合は姉を忘れないために積極的に動くが、単なるパニックものでないところが面白い。映像化できそうだけど、リアルに信楽焼の狸出てきたら怖いからアニメが良い。