あらすじ
日本の社会は高齢化・多死化のフロントランナーであるとともに、世界的なウィズ・コロナの状況を受け容れざるを得ない。
何事も正しい答えを見出し難いこの世界で、究極の問い「死」との向き合い方を考えることは、よく生きようとすることだ。
漱石の『こころ』、コロナ禍でベストセラーとなったカミュの『ペスト』、文豪ドストエフスキーのドッペルゲンガー物語、現代の古典カフカの『変身』から、村上春樹の短篇、SF、ミステリまで、小説家はいかに死に迫り、いかに死を描いてきたか? 登場人物はいかに危機と戦ったのか?
『「死」の哲学入門』に続き、死生観を問いなおす文学篇。
宗教学者による類例なき驚きの小説入門。
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Posted by ブクログ
大学で国文学を勉強している者としては、文学テクストの解釈に作者の実生活の情報を持ち込んだり、筆者の印象論が多かったりして、途中で読むのをやめてしまった。
『ダンス・ダンス・ダンス』の五反田くんは、表向きは理想的な人間として生活しているが内面には狂気が潜んでいる、というユング心理学の理論にピッタリ当てはめることのできる「わかりやすいキャラ」であるが、一方『謝肉祭』のヒロインは心理分析できない複雑な人物である、という意見はなるほどと思った。
ドッペルゲンガー(分身)が登場する文学作品は結構多いらしい。それを主に、ユングの「原型」という概念で分析している。
原型のなかで、私たちが認識しやすいのはシャドウと呼ばれるものである。自分の認めたくない(否定したい)性質を無意識の中にシャドウとして持っており、それを実在の他者に投影する。そのシャドウの存在を認める(無意識から意識に上げる)ことで
精神的な成長ができる、ということらしい。
私は、この考え方は最近公開されたスタジオジブリ作品『君たちはどう生きるか』の眞人と青鷺の関係に当てはめることができると思った。作中で、眞人は青鷺のことを嘘つきだと言っているが、眞人も自分でつけた頭の傷の理由を父親に尋ねられたときに嘘をついている。
あと、この本のおかげでCage The Elephantというロックバンドを知れた。「ComeALittle Closer亅という楽曲のMVがユングの「個性化」という理論を映像化したものになっているらしい。