あらすじ
世界史の中には悲惨な事件が多いが、ひとつの事件がそれ単体で完結するとは限らない。まるで呪われたように、ある悲惨な事件が別の悲惨な事件の引き鉄を引き、暗い歴史がつながっていってしまうケースも多い。そのような例を集めたのが本書だ。
事件同士の因果が見えてくれば、皮肉な歴史の流れや、人間の後ろ暗い本性も理解できるようになるだろう。
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Posted by ブクログ
今年(2024)のGWの大掃除で発掘された本のレビューは大方終わりましたが、その前に娘夫婦が宿泊した時に大慌てでスースケースにしまい込んだ本があり、それらの本のレビュー書きを終了させたく思っています。
記録によれば読破した日が、3年近く前のコロナ真っ只中の頃のようです。その頃は家にいることも多く、ネットで取り寄せた本を読むのが楽しみだったと思います。この本のテーマは世界史で習った有名な事件も取り上げていますが、それには、食糧危機・気候変動・感染症の流行が起因となっていたようですね。これは時代が経ってもあまり変わらないようで。将来を考える上でも、過去に起きたことを学んでおくことは何かの役に立つのではと思いました。
以下は気になったポイントです。
・リスボン地震(1755)の後、今では当たり前とも思われる「国家による復興への動き」が、初めて作り上げられた。これを機に欧州社会全体で、科学と技術の発展の歩みの中に「自然災害から人間と社会を守るにはどうすればいいか」という新しい視点が生まれ、耐震建築が考えだされ、地震学が始まった。(p20)ところが、大地震によりポルトガル経済は大きな打撃を受けた、国内経済が衰退し、その分を植民地経営に依存するようになるが、本国経済が力を失ったため、植民地経営も低迷し、結果的に国際的地位は低下していった(p21)
・富士山噴火はさまざまな形で記録が残されている、中でも特に大きかったのは、江戸時代中期の1707年(宝永4)12月16日のいわゆる「宝永噴火」である。この噴火によって、現在の私たちが目にする富士山の形が出来上がった(p22)この2ヶ月前には、放映の大地震(震源は和歌山)があり、これが富士山噴火の引き金になったと考える研究者も多い(p26)
・西パキスタンの中央政府と対立していたインドが、東パキスタンを支持したことで、そのまま第三次印パ戦争へと突き進んだ、この戦争でインドの勝利で終わったことで、東パキスタンは独立して、バングラデシュとなった(p33)
・1783年にアイスランドのラキ火山が噴火した、これにより気候変動が起き、1784年の冬はアメリカではミシシッピ川が凍った、日本では浅間山が噴火(1783)し、それにより天明の大飢饉が起きた(p36)
・1976年は中国にとって重要な分岐点となった、1月には毛沢東の理解者だった周恩来が死去、7月には紅軍第4軍を作った軍人の、主徳総司令が死去、その直後に唐山地震が起きた、そんな状況で9月に毛沢東が死去、10月には恐怖政治で恐れられた四人組が逮捕されて、ここに文化大革命は完全な終焉を迎えた(p45)
・2013年2月にロシアのチェラビンスクに、大きな人的被害を出す隕石の落下が起きている。近年の隕石の中ではずば抜けて大きく、17メートル、エネルギーはTNT火薬500キロトン(広島型原爆で16キロトン)であった、この落下により、4474棟の建物が損壊し、1491人が重軽傷を負った(p54)
・十字軍は、民衆で構成される民衆十字軍(統率力がなくさまざまなグループに分裂して壊滅)と、皇帝肝入りの正規十字軍があったが、正規軍も規律正しくなかった。十字軍に参加すれば、2年間はどんな罪に対する償いも免除、また戦いで命を落とせば殉教と認められるなど、信仰心を煽る特典があったから(p74)
・十字軍が7回目のチュニス攻撃に失敗したのち(1291年)それまで絶対的だった教皇の権威は大きく失墜し、戦いに参加した諸侯らは長きに渡る従軍の疲弊で経済的なダメージを負い没落した、これにより西ヨーロッパでは、国王の力が強まり、遠征の主要ルートだったイタリアを中心に商業が発展し、イスラムとの交易も盛んになり都市の発達が進んだ(p77)
・第一次世界大戦後の体制を決める「ベルサイユ条約」の交渉中にアメリカのウィルソン大統領は、スペイン風邪にかかってしまった。イギリスとフランスは、ドイツに対して巨額の賠償金を求めていたのに対して、ウィルソンは強く反対していた。しかしスペイン風邪で重症となり、気力と体力を失ってしまうと会議に復帰した後に、あっさりとその条件を飲んでしまった、これが、ヒトラーが再び戦争に出ることになる’p105)
・ペストは身分に関係なく死をもたらした、感染により多くの死者が出て農奴人口が減ったことで、労働力が不足し荘園の維持が難しくなった。農奴の待遇を良くせざるを得なくなった(p115)
・インカ帝国は、スペイン人征服者ピサロと200人以上の荒くれ者、そしてメキシコから伝播した天然痘ウィルスによって崩壊した、ところが先住民の多くが死に追いやられると、現地で植民地を経営していた欧州人は労働力不足に悩むことになり、アフリカから黒人を奴隷として輸入することで問題解決をした、ここから3世紀に渡って、大西洋奴隷貿易が続いた(p122)
・病原菌を兵器として使用するためには、1)短期間で致命的な感染症を引き起こす物質、2)ワクチン、治療薬がある、3)人から人へ感染しない、4)兵器として使った後の環境がすぐに修復できること、炭疽菌は開発を始めてみると、炭疽菌が撒き散らされた土地は除染しても簡単には元に戻らないとわかった。実験が行われた島(グリュナード島)は、48年間放置され続けた、1990年になって立ち入ったが、いまだに汚染されていることには変わりなく、今も無人島のまま(p145)
2021年9月3日読破
2024年6月12日作成