【感想・ネタバレ】足利事件(冤罪を証明した一冊のこの本)のレビュー

あらすじ

15年前から冤罪を訴え続けた著者! どうして菅家さんは逮捕され、起訴され、刑務所に入らなければならなかったのか? 克明な取材ですべてが明らかに――2009年6月、日本中が注目するなか、足利事件で無期懲役刑の判決を受けた菅家氏が、17年ぶりに千葉刑務所から釈放された。著者は1994年から「月刊現代」誌上で氏の無実を訴え続け、この本によってすでにそれを証明していた。なぜ足利事件のような悲劇が起きたのか……。綿密な取材で、その裏に潜むものを解き明かし、釈放のきっかけとなった著作。
◎「足利冤罪事件の本質は、おそらくは自白の強要やDNA鑑定の危うさにあるのではない。問題はむしろ、それらの錯誤を産み出した、ぼくたちひとりひとりが抱える予断や偏見の視線にあるのだ」<東浩紀>

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Posted by ブクログ

2025年のいまとなっては冤罪が確定した事件だが、本書の発表時には菅家さんは無期懲役判決が確定し収監中だった。
その時点で出版されているから、というわけではないだろうが、だれか個人の責任に帰するような文章ではない。著者は淡々と事実を積み上げていき、冤罪の疑いが極めて高いことを描いていき、批判的な筆致になるときも、属人的ではなく構造的に生まれた問題かのように描く。

本事件ではDNA鑑定がおおきな意味を持っていた。それもあって本書内でもこの事件におけるDNA鑑定への批判的な検討が行われる。専門的な内容になるため、知識がない自分にとってはわかりにくかった。
しかし、このわかりにくさと科学的根拠への信頼は、なぜか結びつくのである。新聞記事に「専門家らによる科学的なDNA鑑定により犯人であることが証明された」と書いてあって、どれほどの人間が疑えるだろうか。自分は、よくわからないがそうなんだ、と読み流してしまうと思う。

冤罪に至った責任の所在はあらゆるところにあるが、念のために書いておくと、栃木県警の警察官たちは、少なくとも事件発生の最初期に限っては、熱心すぎるほどに事件へ真摯に取り組んでいる。
本書を読むと、その熱心すぎることが冤罪を生んでしまったように見えるが、それにしても菅家さんが犯人とされるまでの過程はかなり雑である。疑惑といえるものさえほとんどない。
冤罪の被害者も、冤罪を生み出す構造の一部となることも、どちらも人ごとではないだろう。

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2025年08月02日

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