【感想・ネタバレ】水と礫のレビュー

あらすじ

東京でのドブ浚いの仕事中の事故をきっかけに故郷へと戻ったクザーノは、砂漠のむこうの幻の町へ旅立った――回帰する灼熱の旅が、一族の風景を映し出す。第57回文藝賞受賞の一大叙事詩。

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Posted by ブクログ

まず1ページ目の一行目から惹かれた。しかしその惹かれた文体は最初の方だけで、後はずっと平易な文が続く。それでもしっかりと強固な文体を確立しているように感じ、とても新人のようには思えない。文体は海外小説を翻訳したような文体で自分好みでもあった。
ガルシアマルケスに影響を受けているんだろうなって一瞬でわかるストーリーと家族の話。
それでも所々に謎を謎のままに残す文学性を兼ね備えており、作者のセンスに最後まで引き込まれた。

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2025年07月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

東京で失敗して故郷の町に戻ってきたクザーノがらくだのカサンドルとともに砂漠へと旅立ったのは、「東京から運んできた悲しい水分を全部蒸発させる」ためだった。やがてたどり着いた町で新たな暮らしを始めるクザーノを中心に、ホヨー、ラモン、クザーノ、コイーバ、ロメオ(すべて葉巻の銘柄)の5代にわたる父と子の系譜。日本であり日本でないふしぎな世界で彼らが生き見た景色が、差異と反復の語りによって何度も塗りなおされていく。マジックリアリズムのゲーム的な焼き直しのようにも読めて評価が割れそうだけど、個人的には楽しく読めた。

【メモ】
・読み始めてしばらく、クザーノはニコラウス・クザーヌスにちなんでいるのかなと想像していた。
・変幻自在なキャラとしてくり返し登場しなおす甲一の存在がおもしろい。クザーノ(たち)を旅へと駆り立てる甲一のあり様は、人間を善へと導く神話的な人物のようにも思える。
・簡潔で歯切れのよい短文のつらなりにヘミングウェイっぽさを感じていたら、まさに『老人と海』への言及があった。サンチャゴの度胸とはまた別の、ホヨーによって生きられた男らしさの物語。
・町の人々とちがって、外から来た人間は「やろうと思えば、何ものも捨てられる人間」という指摘にハッとした。
・「人と人を繫ぐのは旅」という台詞に、ティム・インゴルドの『ラインズ』をふと思い出した。『ラインズ』また読みたいな。

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2021年07月10日

Posted by ブクログ

ストーリーは複雑ではないものの、同じ出来事が違う視点で何度も繰り返される展開が複雑で作者の意図を十分に理解出来なかった。日本と何か他の国(砂漠のある国)とを繋ぐ出発点も意図が理解できないままだった。

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2022年07月24日

Posted by ブクログ

不思議な本。ファンタジーか。夢か。何度も同じようなシュチュエーションの舞台を観にいっているのか。少しずつ認識にずれがあって、語り部により違うところから話を聞いているかのような。繰り返される砂漠を旅する男。何がどうなるのか。謎を知りたくて読み進めてラビリンスじゃないか?と疑ったりする。人は風景の共有だけじゃなく魂も共有するのだと語る。なかなか嫌いじゃない時間だった。

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2021年05月19日

Posted by ブクログ

まるで、繰り返されながら拡大するゾエトロープが如く、アンダンテのリズムで振られていたはずのメトロノームがやがて振れ幅を拡大していく。
その速度を落とすことなく、未来に過去に振り動く。振り動かされながら、歩かされて行く。
初めて『水と礫』を読んだ感想はそうだった。

これは礫砂漠のごとく様々な技巧と躓きを散りばめられたページを、彼らの歩みと共にめくって行く。
この一冊丸ごとがそのまま「旅」。
物語を追う旅ではなく、存在を追う「旅」だ。
そのラストに緩やかに込み上げてくる感情の揺れは、心地よく味わうことができた。
しかし流石「文藝賞」作品。
もしあなたが、彼らと共に一筋縄ではいかない「旅」を体験したいならお勧めする一冊。

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2021年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人生とは半直線ではなく、網目状に連なるもの。物語が過去、未来へと拡張していくことでそれを体感できるのが面白い。甲一は新しい価値観を人生にもたらす存在のメタファーで、砂漠は未知の世界の入り口?それぞれの人生が波状に影響しあっていること。

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2025年07月28日

Posted by ブクログ

主人公クザーノの人生を核に、その先祖や子孫にまで話が及ぶ壮大な小説。基本となるストーリーを少しずつ形を変えながら何度も繰り返す“ループ構造”となっていて、その始まりや終わりに主人公以外の人達が描かれる。クザーノの直系親族以外は日本名で東京も登場するが、舞台となるのは東京と陸続き(?)の砂漠の街である。つまらなくはなかったが、よくわからなかったというのが正直な感想だ。

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2020年12月16日

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