あらすじ
ネット上の誹謗・中傷の現状を徹底取材!
2020年5月、SNS上で誹謗中傷を受けた末、女子プロレスラーの木村花さんが亡くなった。ネット上で、SNSによる暴力が過激化。匿名になることで、言葉が凶器へと変わり、容赦なく人の心を切りつける。果たして加害者はどんな人物で、動機は何なのか。背景には、社会の構造的な問題があるのだろうか。記者が徹底的な取材で掘り下げる。一方、被害の深刻化、多様化が進み、いつ誰が被害者になってもおかしくない。被害に遭ったらどう対処すべきなのか。そして今、何が議論されるべきなのか。ネットの功罪を検証し、SNSの未来を探る。
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Posted by ブクログ
自由の反対の手には想像力を。
2020年に出版された本なので、当時話題になった木村花さんの件がとっかかりとして示されている。SNSが劇的によくなったわけでもなく、かと言って全然ダメでもない。相変わらず「炎上」は起きている。
承認欲求、孤独感、匿名性というキーワードに加えて、この本で印象的だったのが「公正社会信念」という考え方だ。つまり、社会は「公正」であり、良いことをしたら報われ、悪いことをすると罰されると信じているということだ。特に、不幸に見舞われたのはその人に落ち度があったと結論付けるのを、公正社会信念の中でも「内在的公正推論」というそうだ。この傾向が強い人は、努力すれば報われると考えるから努力ができる。でも、弱者に対して努力不足と見做す自己責任論に持っていきがちだと。そのような意識がバッシングにつながる。自分の中にもその考えはしっかりあって、顔を出してくる。
その人の人生経験から生まれた考え方の傾向が匿名空間での攻撃性につながるのであれば、その根を断たなくてはならないが、問題は複雑だ。被害者が泣き寝入りするしかない仕組みも厄介だ。私はもうひとつの方向に目を向ける。ネットに限られたマナーもルールもない。現実と同じように発言を意識する。言葉を投げた向こう側に人がいることを忘れずに、その言葉の効果を想像する。こちらはネットが広まったここ20年の話ではなく、ずっと教育の中にあった。その方法を学ぶ方が、また新しい技術や世界が生まれてきても、対処できる。回り道かもしれないけど。