あらすじ
推理小説ファンが最後に犯罪実話に落ちつくように、怪奇小説愛好家も結局は、怪奇実話に落ちつくのが常道である。なぜなら、ここには、なまの恐怖と戦慄があるからだ――伝説の〈世界恐怖小説全集〉最終巻のために、英米怪奇小説翻訳の巨匠・平井呈一が編訳した幻の名アンソロジー『屍衣の花嫁』が、60年の時を経て、〈東西怪奇実話〉海外篇としてここに再臨! 怪奇を愛し霊異を尊ぶ、古き佳き大英帝国の気風がノスタルジックに横溢する、遠き世の怪談集。ハリファックス卿やE・オドンネルら、英国怪奇実話を代表する幽霊ハンターが集結!【収録作】1「インヴェラレイの竪琴弾き」/「鉄の檻の中の男」/「グレイミスの秘密」/「ヒントン・アンプナーの幽霊」/「エプワース牧師館の怪」/「ある幽霊屋敷の記録」/2「死神」/「首のない女」/「死の谷」/「女好きな幽霊」/「若い女優の死」/「画室の怪」/「魔のテーブル」/「貸家の怪」/「石切場の怪物」/「呪われたルドルフ」/「屍衣の花嫁」/「舵を北西に」/「鏡中影」/「夜汽車の女」/「浮標」/3「ベル・ウィッチ事件」/解説=平井呈一/新版解説=東 雅夫
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Posted by ブクログ
本書は、東京創元社が1958年から59年にかけて刊行した<世界恐怖小説全集>(全12巻)のうち第12巻が実に60年を経て文庫化されたもの。この全集に収録された作品のうち主要なものがその後の編集を経て、創元推理文庫『怪奇小説傑作集』になったことは知っていたのだが、本書の元版である平井呈一編 ”実話集” のことは良く知らなかった。
Ⅰに収められているのは、いわゆる幽霊屋敷もの。語り口がやや時代がかっていて少し読みづらく、またまとめて一度に読んでしまったので、何編も続くとちょっと退屈を感じてしまった。
Ⅱも実話とはあるのだが、あまりに思いがけない出来事が出来したり(例えば「死の谷」)、一応の解決があまりに現実離れし過ぎている(例えば「浮標」)ため、実話風小説といった感じがしないでもないが、このパートはバラエティーに富んでいてかなり面白い。
Ⅲは、1817年から21年にかけてテネシー州のジョン・ベルの農場で起こった怪異で、ポルタ―ガイストから始まり、家長のジョン・ベルを苦しめ遂には毒死に至らしめるという、アメリカでは結構有名な事件について、英国心霊研究会のフォーダー博士がその解釈を示した講演を収めている。
古い作品ではあるが、恐怖や戦慄は時代を超えるものだから、決して古臭いとは思わずに面白く読むことができた。
現代ではほとんど用いられない単語が使われていたりして、ちょっと調べる必要はあったりしたものの、古風な訳文ではあるがさすがにこなれていて読みやすい。(「サルもかっておいた」、「サルをかい」(171、172頁)とか、若い人は分かるだろうか?)