あらすじ
歌集としては異例のベストセラー。そして、映画化も決定!
いじめ、非正規雇用……逆境に負けず それでも生きる希望を歌い続け
32歳という若さで命を絶った歌人・の萩原慎一郎の歌集がついに文庫化。
解説:又吉直樹
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NHKニュースウオッチ9で「“非正規”歌人が残したもの」として紹介され、大反響。
10月16日放送、NHK「クローズアップ現代+」で特集、又吉直樹氏により大絶賛。
11月3日「朝日新聞」「売れてる本」、「日経新聞」書評欄「ベストセラーの裏側」掲載
11月20日「毎日新聞」特集ワイド掲載。
紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめするベスト30「キノベス!2019」、第8位。
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感情タグBEST3
Posted by ブクログ
心の柔らかいところを針で刺される痛み
作者の優しさ繊細さ、そして悲しみや怒りが外に向かずどこまでも自分の内側に向かって行く切なさ
やるせない気持ちと少し心が暖かくなるそんな一冊
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32歳の若さで去った歌人、萩原慎一郎さんの歌集
初めて歌集を読みました。
恋に食に労働に、命が日々暮らしている中で呟く言葉を口語体で歌われているので、凄く共感できるものが多かったです。
そして普段感じることのなかった、自分の心の奥行きを感じる事ができました。
この歌集が作品として素晴らしいモノなのかは分かりません。
ただ、生きている苦悩や乗り越えようとする足掻きが31文字に込められ、「命」だと思えました。
自分の在り方に迷っている今、この作品を手に取れたことに感謝です。
迷い道
されどもそこも
滑走路
まだ見えぬとて
先にある空
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心を掴まれる短歌集。
もともと短歌に興味はない。世代だが俵万智もスルーしてきた。
ひょんなことから萩原さんのことを知り、彼の短歌を幾つか目にしたら、もう書店に向かっていた。
手に取った文庫は思ったより薄くて彼の人生の短さを感じた。
萩原さんの短歌は閉塞感や絶望感を歌ったものから、若者らしい青春のキラキラを切り取ったものまで。その全てが瑞々しく繊細で、ひたすら優しい。
それは隣で寄り添いながら背中をさすってくれるよう。だが、その掌からはとてつもないエネルギーを発している。
私はこの歌集から前に進む力を貰っている。
若い人に読んでもらいたいと思う。
Posted by ブクログ
いっぱい好きな短歌があった
気持ちの見える何気ない日常の歌が好きだ
好きなのを3つほど
頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく
これというものみつからず苦しみし十七歳は歌に出会いき
至福とは特に悩みのない日々のことかもしれぬ食後のココア
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一首目、ニ首目から力強さを感じる。
「〜なのだ」と言い切っているもの、同じ言葉を繰り返し使っているものがお気に入り。
他の作品も読んでみたいと思ったが、本書が唯一の歌集らしいので、本書を思う存分堪能したいと思う。
Posted by ブクログ
小説を先に読んでしまっいて
その時に感じた「なぜいじめ? なぜ自殺?」という違和感
それが分かった
あとがきを読んで。
歌集はすばらしかった!
俵万智の歌を見て、これなら書けると勘違いして
短歌を始めた、と書いてあったけれど
その気持ちが分かる気がする。
というか、俵万智さんは恋の歌ばかりなので
「滑走路」の方がずっとずっと心に沁みる、私には
手元に置いておくね
また遭いにいくね
Posted by ブクログ
NHKで特集された際ゲストの又吉直樹さんが、歌集から垣間見える作者の人間性について、【生きづらかったんだろうなと思うが】【大好きです】というような発言をしていて、思わず大きく頷いた。だって、この歌集、あまりに優しいから。
作者は、子どもの頃周囲に馴染めずつまずき、大人になってからは非正規雇用から抜け出せず自分の望んだ生活を送れていなかったようだ。それでも短歌からは、人間へのあたたかい眼差しが感じられて切なくなる。
短歌が生きる糧だった作者。こうしたい、こうなりたい、じゃあどうしたらいいんだ、と常に足掻いて模索していただろうことが読み取れる。多くの人と同じ、不条理な世間に呑み込まれながらも、必死に生きる努力をしていたのだと思う。
この本は私にとって、自分を鼓舞するとき、傷ついたときに読み返す大切な本。作者はもういないけれど、あなたが残した歌は今日も誰かを救っていると思う。
Posted by ブクログ
詩集というものをほとんど買ったことがなく、たしかNHKニュース9でも取り上げられていて、買って読みたいと思っていた。
写真を撮影するときにピントが合うような言葉の選び方が上手で、とても感動した。
著者には生きて言葉を紡いで欲しかった...
Posted by ブクログ
映画から入る。
それはそれ。
仕事の辛さ、先の見えない生活、届かない想い、、、辛い歌たち。一方で色んなものに向ける優しいまなざしも感じられる歌たち。
短歌で飛び立ちたかった彼が、飛び立つことが決まった直後に命を絶つほど辛いことがあったのかと思うと胸が締め付けられる。
Posted by ブクログ
厳しい現実の中を生きていかなければならない苦しさ、そしてその中の光や希望、あるいはその影を、まさに言葉の中を飛ぶように自由に短歌で表現している。美しい。
Posted by ブクログ
著者がどういった人物か、一切の知識なしにたまたま手に取った。
表紙のデザインが美しかったのと、滑走路、という色々な物語を想起させるタイトルの「歌集」というものに興味を惹かれたからだ。
読み始めてみると、勢いがあって、静止があって、思考があって、日常があって、現実や当惑や希望があって、ぐいぐい引き込まれるように最後まで読んだ。
歌集を読む時の習慣で、印象に残った歌には細い付箋をつけるのだが、かなりの数の付箋がついた。
そして、最後の最後、解説や後書きを読んで、著者が32歳という若さで夭逝したことを知った。
氏が詠んだ短歌には、色々な想いが練り込まれていたに違いない。未来を感じさせる歌も確かにあった。それでも、それでも、死に直面したという事実が、またひとつのメッセージでもあるように感じた。
読み終えるまで、当たり前のように次の歌集や歌の変化を楽しみにしていた自分が、ふいに凪の海のようなところに投げ出されたように思った。この奇妙で沈痛な余韻もまた、作品の一部として受け止めるべき空白なのだろう。
好きな歌をいくつか引用しておく。
・真夜中の暗い部屋からこころからきみはもう一度走り出せばいい
・いつか手が触れると信じつつ いつも眼が捉えたる光源のあり
・僕たちのソファーでありし草地にて還らぬ友を想い続ける
・箱詰めの社会の底で潰された蜜柑のごとき若者がいる
・シュレッダーのごみ捨てにゆく シュレッダーのごみは誰かが捨てねばならず
・内部にて光り始めて(ここからだ)恋も短歌も人生だって
・完熟のトマトの中に水源のありて すなわち青春時代
・いまはまだショックだけれどそのうちに……そうだ、たこ焼食べて帰ろう
Posted by ブクログ
昭和20年代、第二芸術論争なるものがあったと聞いている。対象は俳句ではあったが、それは短歌をも巻き込むものだった。「(作家たちは)いつも慄いている。名も知らぬ土地の人の机の引き出しの中に、世紀の傑作が眠っているのではないか、と」出典にあたっていないので正確ではないが、おおよそ以上のような主張に、おおよそ俳人とか歌人とかと言われる作家たちが一斉に反発した。
現代、歌人と称するためには何が必要なのだろうか?
公の新聞や雑誌で、歌が頻繁に公開されていること?
歌集を出していること?
定義はどうでもいい。
むかし、おおよそ130年間に詠まれた歌が一冊の文集にまとめられた。万葉集といい、それは1300年の時を経て、そのうちの一部、或いはおおよそがいまだに人口に膾炙されている。
私は、あくまでも私の意見ではあるが、そうなって初めて歌人は歌人になると思っている。
そのためには、繰り返し繰り返し「その歌」が引用されなければならない。
ここに1人の若くて優しくて脆かった青年が、その最後の最後に編んだ一冊の歌集がある。
どうなんだろ。
バブル崩壊後、リーマンショックの最中、非正規労働者として20代を過ごした青年の心の記録として、20年後、100年後、1000年後に残る歌だろうか?「現代万葉集」があれば、一首でも採用されるだろうか?現代ならば、数万回ネットに載ったか、を基準にして選ぶことが出来るかもしれない。
慎一郎さんの歌が載るかどうかはわからない。現代は、1300年前と比べてあまりにも詠む人が多いから、難しいんじゃないかな、とも思う。でも、とも思う。何かの「気まぐれ」が、この時代の何かを掬い取って、たとえば以下のような歌が選ばれないとも限らないのではないかと。
抑圧されたままでいるなよ ぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ
きみといる夏の時間は愛しくて仕事だということを忘れる
牛丼屋頑張っているきみがいてきみの頑張り時給以上だ
紐引けば花咲くように電灯のともりて学びの時間になりぬ
電車に乗りながら夜空に伝書鳩放つがごとく送信したり
あのときのこと思い出し紙コップ潰してしまいたくなりぬ ふと
ぼくたちの腹部にナイフ刺さるごと同時多発テロ事件はあった
箱詰めの社会の底で潰された蜜柑のごとき若者がいる
コピー用紙補充しながらこのままで終わるわけにはいかぬ人生
だだだだだ 階段を駆けあがるのだ だだだだ、だだだ 駆けあがるのだ
Posted by ブクログ
現代短歌で有名(?)な歌人の萩原慎一郎の歌集で、彼が亡くなる直前に企画・編集され、死後出版された現代的な口語体の短歌を中心とした作品。芸人の又吉や文芸評論家の三枝昴之などによる解説もついている。学生時代のいじめの経験や、「非正規雇用」の中でやりがいを感じにくい仕事と生きがいとしての歌作との間の葛藤、短歌への情熱、日常の感動や虚しさなどが描かれている。「わかるわかる」と思える日常の切り取りや、「そんなふうに苦しんでいたのか」と思わせる彼の心の動きなど、人間についてこうもうまく、短歌で表せられるんだなあと感動した。彼の感性の鋭さや、表現力の高さにも驚かされるし、言葉ってすごいなと思った。
また、彼自身は過去のいじめの経験に起因する精神的な不調に苦しんでいたようであり、そういった彼の背景を想像することができ、感慨深い。
笹井宏之の「えーえんとくちから」とも感性が近いと思ったが、本書「滑走路」の方が、よりわかりやすく、共感できると思った。
Posted by ブクログ
なんとなくまた読みたくなったので、文庫版が出たこともあり、買ってみました…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
僕も非正規雇用で働いているためか、著者の心情がよく分かるような気が…それと年齢が僕と近いということもあって、より一層親近感を持って読み進めることができたのでした…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
映画も観ましたがアレはこの歌集の内容を表現できているとは思えませんでしたね…終始、暗いだけの映画でした。ってか、もう内容ほとんど思い出せませんが…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
なんというか…恋? している? 部分は正直アレですね…こちらがこっぱずかしくなってくるというか…そんな感じでしたけれどもまあ、著者の純真さがよく表れている部分かと存じます…。
解説は又吉さんでしたね…特にこれについてはコメント無しでお願いします…(笑) ただまあ、又吉さんみたく自分も何か事あるごとにこの歌集を取り出し、酒を飲みながら読んでみようとは思いましたよ!!
さようなら…。
ヽ(・ω・)/ズコー
Posted by ブクログ
萩原慎一郎(1984~2017年)氏は、早大人間科学部卒の歌人。私立武蔵中・高校時代に苛烈ないじめにあう中、17歳のときに偶々イベントに来ていた俵万智に刺激を受けて短歌を詠み始め、現代歌人協会の全国短歌大会や全日本短歌大会等で各賞を受賞。短歌結社「塔」(永田和宏主宰)、未来短歌会(岡井隆主宰)、りとむ短歌会(三枝昂之主宰)などに参加。高校卒業後もいじめの後遺症が続いたが、早大人間科学部の通信制を卒業し、その後は非正規による仕事を続けながら短歌の創作を続け、角川全国短歌大会準賞、NHK全国短歌大会近藤芳美賞(選者賞)、朝日歌壇賞、全日本短歌大会毎日新聞社賞、NHK全国短歌大会特選等を受賞した。
本歌集は、第1歌集として2017年12月に出版(2020年文庫化)されたが、長期間に亘るいじめに起因する精神的な不調から、出版準備中の同年6月に自死(享年32歳)。歌集は、多くの受賞歴などで既に短歌界では知名度が高かったことや、弟でギタリストの萩原健也がSNS等で広報活動を行ったことなどから、発売当初から話題となり、NHKのニュースウォッチ9ほか、主要なテレビ、新聞、雑誌などで取り上げられ、短歌集としては異例のヒットなった。また、2020年11月には本歌集を原作とした映画(主演:浅香航大、水川あさみ)が公開され、各賞を受賞している。
私は50代の会社員で、最近短歌に興味を持ち始め、俵万智、穂村弘、東直子、若手の木下龍也等の歌集・短歌入門書などを読み(『サラダ記念日』だけは1987年の発表時に読んでいたが)、その流れで本書を手に取った。
ページを繰り終えてみると、萩原氏が極めて繊細な感性の持ち主だったことがわかる(歌人になる人はいずれもそうなのだろうが)。それは生来のものもあるだろうし、不幸にして過去にいじめを受けたことによる精神状態の変化や、そのために非正規労働者に甘んじざるを得なかった境遇などが、それを一層鋭利なものにしていったのかも知れない。本歌集の中に「アイデアがひとつふたつと雲のごと浮びて それを歌にしている」という歌があるのだが、まさに自身の心の底から湧き出てくる叫びのようなものを、シンプルな言葉で次々に歌にしていったということなのだろう。そうした意味では、とても私小説的、近代短歌的な作品が多く、同じ1980年代生まれの歌人でも、岡野大嗣や木下龍也とは対照的(岡野や木下が前衛的というべきなのかも知れないが)で、また、一般的に共感を抱きやすいと言えるように思う。
若干32歳にして命を絶った歌人の、第1歌集にして遺作となった珠玉の作品集である。
(2021年12月了)
Posted by ブクログ
おそらく、製作年が早いものから順に収録しているのだろう。
項が進むにつれ、焦燥感というか踠きたいけれど踠けない無力感のようなものが大きくなっているような気がする。
解説で働くことの苦しさについて、啄木との比較があるが成る程なと思った。萩原氏の歌からは達成感の無い労働への失望のような悲しみを感じた。
ただ、彼の人生には歌を詠むことによる喜びと救い。そして恋もあったことに安堵した。
Posted by ブクログ
遅ればせながら読みました。
読んで感じたことを最初全く言語化できなかったけれど、解説を読んでようやく少し言語化できるようになった気がします。
特に又吉さんの読み解きの深さに救われました。
ようやく、自分が感じていたものの正体や、それでいて自分の読み解きの浅さが浮き彫りになったから。
詠み手の優しさ、彼の目を通して見た世界を今こうして追体験出来る奇跡。
口語の短歌なので、すぐそばで語り掛けてくれているようであり、励ましの歌にこんな情勢だからこそより救われている。
自らの翼で滑走路から飛び立った彼の心が今も自由で優しく美しくあれと願ってやみません。
この境地に自分は到底たどり着けませんが、少しでも近づけるよう何度も読み込もうと思う一冊です。
Posted by ブクログ
書店でふいに手に取ったのは、死んだ友達に名前が似ていたから。
で、ネットの評判など何も調べることなく読んで、不思議な気持ちになった。
もとから幻想耽美人工的な短歌のほうが好きなので本来の好みとはいえないが、それでも読み続けてしまった。
「ベランダで沈む太陽観ていたら急に切なくなってしまった」
とか、自分も体験したことがある、と思ったのだが、よく考えてみたら、そんな経験ないかもしれない。
なのにこの歌を読んだことで、記憶が上書きされたかのような気がする。
彼は僕に似ている。
いや、僕が勝手に彼に似ているような気がしているだけなのだ。
同じ国で似た年齢だから似た経験をしていてもおかしくはない。
しかし当たり前だが彼は僕と別の町で、「集中を持続した」人だ。
実際この人だって
「ひとの数だけ歌がある不思議かな たった三十一文字なのに」
と歌っているくらいだし。
だからいまこんなに響いても、一か月後には忘れている。
というか自分の生活にいまの気持ちは埋没していってしまう。
それも判っている。
穂村弘が「近代短歌の、私の生の一回性」みたいなこと、あるいは「現代短歌の棒立ちの歌」のようなことを言っていたし、それがおそらく歌人に読み手が仮託して読むことの不思議さ、交換可能性を思ってしまうことと、つながっているんじゃないか。
……よくわからないことを書いてしまった。
その後ネットで、凄いブームになった作品集だということを知りそうになって、慌てて調べるのをやめた。