あらすじ
フットライトを浴びる清純スター・葵輝代子は、母親の愛人とも知らずに、ひとりの男を愛するようになる……。母への激しい憎悪は、整形美容に駆りたて、清楚な美貌は、妖艶な女に変容してゆく。――男の事故死で、ふたりの女の愛憎のドラマに幕が下りる。女の生の烈しさを精緻に描き切った有吉文学の傑作長編。<上下巻>
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Posted by ブクログ
天は二物を与えずという事で納得しておきたい一般人。美貌に恵まれた人はどんなに骨身を削って努力をしても外見でしか評価されない。中身を評価してもらいたい為にあえて外見を醜くする美人の話しは昔からある。それでも、やはり評価はされない。だから美貌に恵まれた人は一般人よりも強い精神力と教養と知恵がないと辛い。異性からは、どうあってもチヤホヤされるし甘やかされるので長い目でみると一般人より落とし穴にはまりやすい。人の倍ほど切磋琢磨していくか、いい結婚相手を見つける環境、目を養わないと人生に翻弄されやすい。古い書物だが久々に共感とともに気付きと母娘の根底に女としての性があり、やはり美貌に恵まれて生まれることは数奇な人生を歩みやすい事と、リアリティさと最後はホラーを感じほどの秀作でした。
Posted by ブクログ
時は戦後間もない昭和中期。新劇の女王、森江耀子の前に突然、若い頃に生き別れた娘が現れた。顔も佇まいも母親と瓜二つ。田舎で祖母に育てられたとは思えないほどの垢抜けた美しさだ。母親に憧れて自分も女優になるという。その感動のご対面をカメラに収めようと、楽屋にマスコミが詰めかけた。なんてことない話を母親の視点から、娘の視点から何度も何度も繰り返し説明して長編にしている。ご対面部分だけで上巻の半分まで引っ張っているのだから、ちょっと退屈になってくるんですよねー。
母親の恋人を娘が好きになるところから話は面白くなるが、それでも大きな進展はない。しかし、母親と娘の微妙な心の動き。好きなんだけど相容れない複雑な気持ち。若さへの嫉妬、母親に似ているが故の人気に対する反抗、初めはおどおどしていた娘が、人気と金を得るうちにだんだん図太くわがままになっていく様子とか、見どころはたくさんある。新劇界と映画界の確執も作者が書きたかったところではないかと思う。