あらすじ
SNSでの誹謗中傷、自粛警察、不謹慎狩り、悪質クレーマー――奴らは何者か? なぜ自らが正義と思い込み、他人を際限なく過剰に攻撃するのか? 「炎上はマスメディアが生み出す」「SNSは世論を反映しない」「炎上加担者はごく少数」など、気鋭の研究者がデータ分析から意外な真実を導き出す。
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Posted by ブクログ
とっても面白かった!
ツイッターやSNSで誹謗中傷を書き込む人たちの「正体」が、ちゃと分析して書いてあります。ずいぶん前に「ウェブはバカと暇人のもの」という新書を読んで、これもかなり面白かったけど、本書の分析ではウェブで誹謗中傷を書き込んだりしている人は決して「バカで暇人」ではない。「今時の若者」が暇つぶしでやっているわけでもない。意外にも、社会的地位があり、経済的にも余裕があって、決して暇じゃないはずの管理職のおじさんだったりする。
また、「炎上」とは、個人や企業に対して多くの人から批判が集まって収集がつかなくなる、というイメージがあるが、ちゃんと分析してみると「炎上」のきっかけになる書き込みをしている人たちというのはほんの数名、多くてもせいぜい十数名とかで、その批判をテレビなどのマスメディアが面白おかしく取り上げることによって本当の「炎上」が起こっているのだ。
だから、誹謗中傷が飛び交い、人を傷つける(時には死に追い込む)ことがあるのをネット(ウェブ)のせいにし、ネットの匿名性を嘆いたりする意見をテレビで見るが、実はテレビが一番悪い(ネットに責任転嫁している)、みたいな。
第3章までは、インターネットが普及して誰でも情報を発信できる現代社会で、どうしても「極端な人」が力を持ってしまい、本当はそうではないのにその極端な意見があたかも「みんながそう思ってる」みたいに誤解されてしまうシステムがよく分かる。
第4章では、では「極端な人」に対して社会がどう対処すべきか、具体的かつ建設的に提言してあり希望が持てた。いろいろな具体的な方法があげられており、著者ご自身が「日本リスクコミュニケーション協会理事」というような肩書きをお持ちなので、本書に記された具体策は本当に実践される可能性も高いのではないだろうか。
私自身もメディアリテラシーの教育に携わる立場なので、とても参考になった。
あと、統計分析って面白いなーと思った!
Posted by ブクログ
◯新たなマスメディアであるネットやSNSのもつ根源的な特徴を正確に捉え、旧来のマスメディアによって、ネット情報が拡散されることにより、ネットにおける局所的な炎上が社会問題のようになる構造を示している。
◯ネットという一方向からの議論ができるツールにおいてのみ生じてしまう。双方向でのやりとりの中では、変な人と思われたり、会話が成り立たないため周りからも相手にされない。また、そのような状況だからこそ自分も自重するということである。
◯極端な人は、己の正義に従って他者に攻撃を加える、不寛容な人であるという。上記のツールによって、その特徴が強まり、さらには拡散されてしまうのだ。
◯この著者はここで終わらず、さらにそのための方策を二方向から検討している点に好感が持てる。
◯一つは被害者側に対する対応であり、もう一つは極端な人にならないための方策が示されている。
◯このような議論の展開は、まさに最新の社会学であり、若い人たちによって開拓される分野であるなとも感じた。