【感想・ネタバレ】新編 「終戦日記」を読むのレビュー

あらすじ

空襲、原爆投下、玉音放送・・・・・・そのとき日本人は何を思ったか。
高見順、永井荷風、山田風太郎、徳川夢声、木戸幸一らの日記に当時の心性を探る。
「終戦日記」を渉猟した旧版に、新たに「火垂るの墓」の原点「プレイボーイの子守唄」ほか、〈焼跡闇市派〉として戦争体験を綴ったエッセイ十三篇を増補した新編集版。
〈解説〉村上玄一

【目次より】
Ⅰ 「終戦日記」を読む

第一章 八月五日、広島
第二章 原爆投下とソ連参戦
第三章 空襲のさなかで
第四章 終戦前夜
第五章 八月十五日正午の記憶
第六章 遅すぎた神風
第七章 混乱の時代のはじまり
第八章 もう一つの「八月十五日」
第九章 インフレと飢えの中で

Ⅱ 「終戦」を書く、語る

清沢洌著『暗黒日記』

負けるとは思わなかった――わが十二月八日
ぼくの家族は焼き殺された
空襲は天変地異ではない
六月一日に終わっていれば
五十歩の距離
焼跡に謳歌したわが青春
プレイボーイの子守唄

焼跡闇市派の弁
再び焼跡闇市派の弁
人間の知恵と悪知恵
返り見すれば二十八年
すべてうやむやのまま七十年が過ぎた

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Posted by ブクログ

 あの戦争をどう伝えていくのか、時の経過とともに、ますます伝えることの難しさを思いながらも、幼い妹を死なせてしまった原体験を一生抱えて生きてきた著者が、戦時下の日々を記した作家や市井の人々の日記に拠りつつ自身の体験を振り返った表題作に、戦争体験に触れた関連エッセイを収録した一冊。

 著者野坂昭如は"焼跡闇市派"を自称していたが、無差別空襲を直接経験し、家を失い、近親者が亡くなった自分が、何とか戦争体験を伝えて行かなければならないとの使命感を生涯持ち続けた作家だったのだなと、本書を通読して強く感じさせられた。 

 小さい妹に食事をあげなければならないのに、つい自分が多くを食べてしまう。骨と皮ばかりになってしまった小さな子を日々見ていなければならなかった辛さは、いかばかりだったかと思う。


 印象に残ったところ。
 『「終戦日記」を読む』では、最初に、広島で被爆死した高等女学校1年生の8月5日の日記、「明日からは、家屋疎開の整理だ。一生懸命がんばろうと思う」に、胸がつまったと著者は言う。13、14才の日記に使われる常套句であろう、がんばろうと思うが、日記の筆者の最後の一句で、その人生が翌日には断ち切られてしまった。平凡な一句だけになおのこと、様々な思いが去来する。

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2020年08月10日

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