あらすじ
フランスのリヨンに留学した日本の一青年を主人公に、戦争で片腕を失ったドイツの神学生、拷問・虐殺をひそかに行った対独抵抗組織の内なる暗黒を描くことにより、人間と人間の疎外、異人種ゆえのコンプレックス、裁く者と裁かれる者の憎しみという問題を追究。遠藤文学の原点ともいうべき処女長編。
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Posted by ブクログ
君、俺は、青い葡萄を地上に求めすぎるんじゃ、ないだろうか―。
この話の登場人物の一人、ハンツの台詞です。
フランスで働く青年伊原と、片腕を失ったドイツ人基督教信者ハンツが出会う。
互いに戦争による後遺症ともいえる異国での人種差別を経験している二人が、ある女性を探し求めるというストーリー。
ドイツ人・日本人・ポーランド人それぞれの視点から描かれる悲しみと葛藤。
テーマは悪の普遍性と、神の沈黙だと思います
自らの帰属するものは何なのか?
神を信じないならば創るしかないのか?
国家や人種から人は逃げられないのか?
短い話なのに非常に多くの問いがあるように感じて、ドキドキしながら読みました。
それと目に付いたのは、日本語の文章のうつくしさ。
風景描写がきわだって美しく、さらに、えらびぬかれた漢字と日本語のバランスがとても好みでした。