あらすじ
●待望の農業戦略白書
日本農業が高齢化、農地荒廃に直面しているのは事実ですが、これから先どのような戦略を立てるべきなのでしょうか。世界の食糧事情・食習慣の変化、農業手法の革新、プレーヤーの状況の理解無しには、これからの日本農業の戦略は立てられません。本書は、世界的なコンサルティング企業マッキンゼーによる大局観が得られる農業戦略白書。
マッキンゼーというと日本では戦略立案のプロというイメージが圧倒的に強いのですが、その顧客に多くの世界的な農業関係企業を抱えていることもあり、食糧・農業動向の分析には実績があります。また、ここ数年の日本農業への法人参入を受けて農業ビジネス改革のレポートも公開してきました。本書は、これまで蓄積されてきたマッキンゼーの内外の食糧・農業関連の知見を初めて書籍としてまとめるもの。単に世界動向をまとめるのではなく、各動向が日本に及ぼす衝撃も解説する内容となります。
本書は、食と農のグローバル・メガトレンドを1大状況の変化、2アグリテックなどの抜本的な技術革新、3政策・規制の変化、4食習慣・ソーシャルファクターの影響、5農薬・種子・肥料など上流プレイヤーの変化、6消費者ニーズの変化、7代替品・代替手法の進化、8新規参入プレイヤーの8つのポイントで整理し、各々が日本農業にどのような影響を及ぼすのかを解説し、日本農業の生産性向上に何が必要か、進むべき方向と解決策は何かを提言します。マクロからミクロまでバランスの取れた内容になります。
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マッキンゼーが読み解く食と農の未来
著:アンドレ・アンドニアン・,川西 剛史・山田 唯人
世界の農業が大きく変わりつつある中、日本国内の農業に関する論調の多くは、国内の農業組織への批判や、既存の農業のやり方、国内企業への批評といった「内向きの議論」に費やされている。
本書は、そうした内向きの枠を飛び越えて、日本農業をマッキンゼーならではの「グローバルの視点」「他業界の視点」という2つの視点から捉え、そこから進むべき将来像および今後期待されるビジネス領域について展望している。
構成は以下の10章から成る。
①農業を取り巻くマクロエコノミクスの変化
②農業の未来を変える技術革新
③政策・規制の変化が農業に及ぼす影響
④食習慣・食生活の変化
⑤農業ビジネスをリードする上流プレイヤー
⑥世界に訪れる消費者ニーズの変化
⑦代替品・代替手法の登場
⑧新規参入プレイヤーの台頭
⑨日本農業に期待される新たな挑戦
⑩日本農業のポテンシャルを最大に発揮するために
「食と農」について、マッキンゼーによる「鳥の目」「虫の目」「魚の目」の要素が十二分に発揮され完成された本書。「食と農」については、木を見て、森を見ずでは、本質的な課題解決には至らず、過去から今ではなく、過去から未来を見据えた中でグローバルかつ、多くのプレイヤーを垣根を超えた建てつけで国策として取り組む必要性を強く感じた。
2020年に発刊された本書。時代の変化のスピードは早いものの、本質的な視点のブレはなく、ある程度想定できるデータとできないものを区分けしながら論じている点からも、切り分けて自身としても整理しながら読み進めることができた。
人類にとって「食」は生きるために必要なものでもあり、幸せのためにも活用することが出来る、なくてはならないもの。どちらの領域においても「日本の農業・水産業」は、グローバルな課題を解決し世界を救うと信じている。
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現在までと将来の食糧の消費傾向、そして栽培から消費までの周りのテクノロジーを中心とした企業の関わり方が参考になる本。
マッキンゼーの本らしく、とても簡潔にまとまっていて読みやすいし、課題点がシンプルに伝わる。
個人的には鶏肉の消費量が増えてきていること、外交が農業に影響を大きく与えている点(価格差がすくなく、関税で順番が変わる)が一章では記憶に残った。
2章では肥料の減退傾向、コネクトアンドオーケストラの存在の不足(商社がなりうる)、さまざまな現在使われているテクノロジーの紹介が印象的で、想像していた以上に関わり方があるなと感じた。
面白かったし、他の本を読んで食の傾向やアグテックへの理解を深めたい。
Posted by ブクログ
1.最近、日本の農業について考える機会が多く、討論する機会が増えてきたため、しっかりと自分の意見を持つために購入しました。
2.現代の農業は転換期を迎えており、日本の農業は外国と比べて出遅れている印象があります。その差を埋めるべく、マッキンゼーのコンサルタントが説いた日本の農業戦略が書かれています。
日本を取り巻く環境が目まぐるしく変化しています。特に、顕著なのは4つで、①食習慣の変化②技術革新③経済状況の変化④政策・規制の変化です。これらが劇的に変化しており、今の農業形態ではビジネスとして「成り立たないことを警鐘しています。この要因を踏まえ、日本の農業では、他業種参入の促進、環境保全型農業の普及、テクノロジーの活用という3つのキーワードをもとに展開していく必要があります。
ただ、これらを個人の農家や農協が独自にやっていくことは不可能なので、生産から消費まで一貫した戦略を立てることができる人を育成していかなくてはなりません。これを本書ではバリューチェーンの構築と呼んでいます。バリューチェーンの構築にはどうしたらいいのか、具体的な事例が記載されています。
3.日本の農業は縦割りになりすぎて、他産業との連携が弱い印象がありました。そのイメージはやはり事実であり、生産から消費までを一貫とした戦略を立てていかなくてはならないことを改めて感じました。
私は他業種との連携を強化することを重点的に行うことが必要だと考えています。従来のやり方では、市場に任せてその時の価格ですべてが決まるというやり方です。これではばくちと同じ考えになってしまいます。そうではなく、消費先まで確保されており、かつ生産者が価格を安定して供給できるシステムを構築していかなくてはなりません。そのためには、小売業や商社と連携したり、IT産業と連携したりしていく必要があります。販路の確保、ノウハウの可視化、情報共有の徹底というビジネスの発想を農業にも取り入れていかなくてはならないと思います。
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ー なお、農業の全体像を俯瞰し、日本農業の位置づけを理解するために、外部環境として①マクロエコノミクスの変化、②技術革新、③政策・規制の変化、④食習慣・ソーシャルファクターの影響の四つを配置し、それが影響を与える因子として⑤上流プレイヤーの変化、⑥消費者ニーズの変化、⑦代替品・代替手法の登場、⑧新規参入プレイヤーを導き出し、その結果としての日本農業の意味を考えていきます。
これは、我々マッキンゼーが事業の構成や方向性、将来像など、ビジネス分野での整理に使うForces at Work というフレームワークです。 ー
少し情報としては古いけど、食と農を考える上のでのフレームワークがしっかりしているので、将来的な検討の役に立つはず。
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この春から農業業界で働くのでその勉強。
全然知識がなかったので、得られる情報が新鮮で面白かった。
個人的にはグローバルな視点になった時に表面化される問題。
少しでも国の政策や、気候変動の影響を受けると、その農作物のランキングが大きく変わるのが興味深かった。
昨今ではコロナの影響、ロシア・ウクライナ問題などこの業界にモロに影響を与える出来事が起こっている。
ここからどう未来を見るか。起こりうる問題に対してどう動くか。考えることが多いけど、進化するのは技術だけじゃなく、人間も進化していく。
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院試まで時間がないため、掻い摘んで読んだ部分もあったけれど、分かりやすかったし、今後の動向を読めた気がする。落ち着いたら再度ゆっくり読み直したい。
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内容の薄さはあるものの自分が知らなかった部分を構造化して理解するには良かった。
• バイオ農薬は今後市場規模を拡大。効能や管理に課題。
• 中国の肉食需要の高まり→飼料用とうもろこしの需要拡大→中国による輸入量増加が起きてる
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あまり知識の無い分野を調べる為に読みましたが、図解やグラフで説明してくれるのでわかりやすいと感じた。
個人的には興味は深いが、身近な話題では無い為、新発見が多い書籍となった。
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アグリビジネスについて。どういう作物がどこで消費されているのか、という貿易データから、農業へのテックの導入といった最近のトレンドまで、広く・浅く論じられる。あまり偏った内容ではないので全体を俯瞰するのにはよいかも
・今後想定される世界の人口増に伴う需要増に対応するには、従来のタンパク源の増産に取り組むだけでなく、植物を原料にした代替品や藻類タンパク質、昆虫食、微生物や培養技術を用いた合成物質など、新たな代替タンパク源の開発が不可欠です。そのなかでも有力なのが、植物由来、昆虫由来、合成物質による代替タンパク源です。
・二〇一〇年代後半に、世界的大手化学会社のダウとデュポン、バイエルとモンサント、シンジェンタと中国化工集団(ChemChina)が合併して、三つの超巨大企業が誕生しました。ビッグ3と呼ばれるこれら超巨大企業は、農薬および種子事業を持ち、ビッグ3を合わせると業界全体の五〇%に及ぶシェアを握ることになったのです
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農業について知識がなくても、わかりやすく説明されている。図表が多用されており、うまくまとめられているのでわかりやすくてよい。
従来の農業の根本から変える農業テクノロジー(アグテック)について書かれている点では、世界の農業の発展に驚いた。ドローンを用いて播種や作物の状態を確認したり、AIを活用して温度や日照、CO2コントロールをしたり、無人トラクターをGPSで運転したりと、農業のやり方が大きく変わってきている。また、遺伝子組み換えとは異なるゲノム編集という内容があり、狙った遺伝子を潰すことで特性の有無を決めることができるという技術も出てきている。
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日本と世界の農業市場について、ファクトをもとに考え得るシナリオ、リスク、および求められる対応が述べられている。一つ一つのトピックはいずれもどこかで聞いたことある話ではあり、理解に困難を要する部分はない。本書の魅力としては、グラフを多用しているため状況を定量的に理解することができる点、説得力のあるスライドの例を学べる点、各企業の最新の業界動向について具体的に記述されている点、業界を分析する際に有用なフレームワーク"Forces at Work"を農業という実例に応用された形で学べる点の4点である。
4点目のフレームワークについて補足する。これは、「2025年までに起こり得る日本農業を取り巻く変化」という問題に対し、考え得る外部要因として①マクロエコノミクスの変化、②技術革新、③政策・規制の変化、④食習慣・ソーシャルファクターの変化、の4つに分けて考え、それらが実際に農業に影響を与える因子として⑤上流プレイヤーの変化、⑥消費者ニーズの変化、⑦代替品・代替手法の登場、⑧新規参入プレイヤー、を考え、それらを総合して日本農業の意味を考えるというものである(本書序章より引用、一部改変)。各項目ごとに章を設け論じているため、このフレームワークに馴染みのない人にとっても理解しやすい構造となっている。
本書で最も目新しかった概念を挙げるとすれば、「コストカーブ」の考え方であった。これは、各国の生産コストを比較し、その傾斜の大きさを用いて国際的な需要と供給を議論するものであり、コストの決定要因として生産者より地域の影響が大きいという農業の特性(生産技術が広く共有されており、気候・関税の影響が相対的に大きいため)をうまく取り込んでいる考え方であると感じた。
「未来」というよりはあくまで最新動向と課題、解決策の提案という内容であるが、農業市場についてファクトベースでざっと全体像をつかむことができる一冊である。
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他国のさまざまな農業分野をしっかりと分析し解説している本。
なるほどと思うことやたしかにと共感できる部分が多かった。その一部を紹介すると
自動運転の課題
アメリカと日本の違い、コスト面
農業従事者はテクノロジーを使わなくても立派に農業を営んでこれた。
その為、ドローンなどの精密機器を導入するにはより高収益や省力化が確証されてないと導入には振り切れません。
これは本当にごもっともな意見。
農家の当たり前と企業の当たり前
労働時間の問題など
農業の当たり前と企業の当たり前ミックスすれば日本の農業は衰退していくのではなく発展していくと感じた。
農家は高齢化が進んでおり、IT関連に弱い人が多いから息子などの後継者がいる農家はどんどん世代交代し最新のITやネットを使って情報管理をできる環境を作っていくべきだと思う。
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全体的にバリューチェーン全体に関する説明がグラフや表を多用しながらされており、わかりやすかった。
全体像やこれからの農業を創造するための一つの読み物として面白かった。
前半は結構かたく、難しめな内容だったが後半に行くに従って易しい内容になっていった。
Posted by ブクログ
マクロエコノミクスの変化や政策・規制の変化が農業に及ぼす影響という、グローバルな、ある意味他律的な変化が日本の農業に与える影響は勉強になった。コストカーブの考察から、他の産業と比較し農業は、災害、補助金などの影響を受けやすいということが理解できた。技術革新については、いち農業経営体でどこまでコントロールできるのか疑問に思った。湛水などは地域一帯で管理されていると聞いたことがある。複数の経営体と共同でないと実現しないものもあり、難しさがあると感じた。
Posted by ブクログ
本書は、世界的なコンサルティング企業マッキンゼーが、グローバルな視点と他業界で培った視点で、日本農業の未来戦略を立てたもの。食と農のトレンドを8パートに分けて紹介し、日本農業への影響と対処方法を提言。
Posted by ブクログ
農業をビジネスとして見て、需要傾向、技術動向、企業動向を主にグローバル視点で分析している本。
前半は現在までと近い未来での食と農業にまつわるグローバルデータの提示とその分析で、後半は日本農業の今後を提案している。
前半のグローバルデータでは食材の消費動向や、農作物のグローバル価格がどのように決まるかが詳細に分析されており、読み物として読むだけでも面白い。
ただ、このデータを見ると日本で主要穀物(小麦、大豆など)を育てるのは無謀に思えてくる。
しかし後半は少々、最先端動向のみにスポットライトが当たりすぎているように感じた。
特に日本長年の課題である食物自給率の低迷と就農者不足にもう少し踏み込んでもらえると有難かった。
農家を目指す人のみならず、農業や食に関わるビジネスを担う人や興味のある人にはいいかも。
Posted by ブクログ
ちょっと農業について勉強しておかないといけないことになって、
簡単にマクロ情報を得られそうな本をチョイス。
さすがナンバーワンのコンサルティング会社だけあって、
とてもよくまとまっています。
世界の食に関する課題をマクロな視点から勉強することで、
全体感を持った視点を獲得することができそうです。
この本が出たタイミングでは、まだロシアのウクライナ侵攻は始まっていなくて、
ウクライナ問題の影響によりこの本の主張もさらに変わりそうです。
意外に?ウクライナやロシアが小麦生産の重要なポジションを占めているようですが、
今後、日本も含めた西側諸国はロシアからの小麦を頼れなさそうですし。。
食について考えるきっかけにもなる一冊でした。
Posted by ブクログ
農業についてもっとよく知ろうと軽い気持ちで手を出したは良いものの予想以上に細かい内容で骨太だった。
これまでの農業のモデルと農業大国でのモデル、これから新規参入をしたい人・企業が多いに参考にできるものなのではないかと素人目には思える。
一点電子書籍での購入はお薦めしない。見にくいことこの上なし。。!
Posted by ブクログ
農業という未知の業界を知るために購入。コンサルらしく、業界の俯瞰的な分析と数多くの事例が記載されており、初学でも理解し易かった。一方で具体性の乏しい(ネットや記事からの表面的な情報)事例もあったので、本書で業界の概観を把握し、興味ある具体事例を深掘りすると良いと思った。
①農業の需要と世界のトレンド(人口増と需要の相関、気候変動による輸出国の変化)
②業界を革新させるアグテック(データ取得、水分と栄養の管理、作業の効率化、データによる意思決定、サプライチェーンのデジタル化)
③政策によって生じるダイナミクス(輸出入大国の政策転換)
④食生活の変化(世界的なカロリー過剰、培養肉)
⑤肥料、農薬界の企業合併(肥料は原材料生産国によって寡占状態か否かが決まる)
⑥消費から体験に価値がある時代へ(食料品eコマ、食品配達業の台頭、トレーサビリティ)
⑦技術発展による代替手段(広い土地、自然の土はもはや必要条件ではない、資金調達の変化)
⑧他分野からの参入(経営的視点の農業への導入)
⑨日本農業の課題と挑戦(逆算の栽培計画、労働者と土地のマッチング、資材販売方法、ベストプラクティスの明文化、国として一作物のブランディング)
⑩バリューチェーンをフラットに(生産、卸、小売の壁を取り払う指揮者、アクセラレータ、インベスター、インサイトエキスパート)
Posted by ブクログ
なんでこの本を手に取ったのか忘れてしまったが、ざっと読んでみた。5Fとかのフレームワークを使って現状分析、その後、大量の事例、提言と流れていく感じ。
対象読者は
農林水産省の役人と政治家?あと、一部の投資家といったところかな??
その筋の人向けのレポートと言った仕立て。圧倒的なデータ量を料理している感じは、コンサル志望の学生とかも読むと良いのかな。
分析されている中で、より細かい数値まで落とし込んでいるのが凄いなと、総論だと提言とかありきたりになりがちだけど、具体的な議論に落とし込んだ時に細かい数字は力持つから。
とりあえず、ニュートラルな評価。
Posted by ブクログ
さすが、マッキンゼー&カンパニーと言うべきか、食・農分野ではすでに当たり前に進められている構造改革についてしっかりと伝えてくれている。世界でSDGs(Sastainable Development Goals)の取組が進められると食・農の構造が大きく変化するという。
これからは第一次産業が第二次産業化してくるというかすでに変革がはじまっているということだ。
ただ、日本の農林水産業がどこまで変革できるのか、生産のパラダイムシフトが必要であることを認識した。それがどこまで進んでいるのだろうか。
以下、覚書
①生産側で温室効果ガスの排出を抑制する、②需要側の変化(フードロスの低減、肉の消費量の低減)、③農地の用途変更(Land Use, Land-Use Change and Forestry)、④新技術の開発(食物等の遺伝子編集による機能的な食物の栽培等)