【感想・ネタバレ】なみだふるはなのレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

水俣から福島へ。
近代の日本史において、国と企業の闘いが前景化・可視化され始めたのがサークル村による一連の活動からだったとするなら、そこから半世紀以上たった今、石牟礼さんは何を思うだろうか(何を思って旅立ったのだろう)。
本書は、写真家の藤原さんとの対談であり、震災を契機として露になった政府や企業の暴力性を足掛かりに、水俣病とその後(母胎を通じて継がれる苦しみは、現在のものであり、未来のものだ)に言及しながら、変わらない構造的な暴力が紡がれる。
日本には教科書に書かれていない公害がたくさんあったし、今も規模の大小に関わらず起こり続けている。その姿に接してきた二人の語りには、どこか諦めに近い幻滅も感じられつつ、石牟礼さんの影響を受けた現在の「サークル村」の可能性も垣間見える。それは意志を受け継いでいる人たちの存在だ(だからこそこの対談という形式が重要なのだ)。
対談は説教めいた言葉のやり取りも続くのだが、ただの年寄りの小言と思わせない、豊饒な精神がある(いや、ちょっと小言めいているかな)。何より、藤原さんに振る舞われる、石牟礼さんの手料理がとても魅力的で、ここにも市民であり続けることの豊かさを感じる。

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2020年05月11日

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