あらすじ
初出から現在まで50回近く出版された作品もある江戸川乱歩。その都度、編集・校訂を加えられたテキストから乱歩の「執筆時の気分」をはかることはできるのか。それぞれのテキストを対照させながら検証する。 乱歩ならではのキーワード(麻布区K町 鬼熊事件 開化アパート…)やオノマトペ(むくむく ねっとり ギョクン…)についても豊富な用例から掘りさげる。 「新青年」「キング」などで連載した初出の誌面も多数掲載。
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Posted by ブクログ
日本ミステリーの祖(厳密にいえば黒岩涙香辺りだけど)とも言われる江戸川乱歩の文章の歴史。松本清張が言うように全盛期は大正時代末期の短編集かもしれないが、本人が読み易いように後年まで手を加えている事もこの作家の不滅性を示している。発表当時の文章も古めかしく案外好きだけど、現代に残るバージョンの方が抜群に読みやすい。そう言う点を教えてくれる本。
本人が単に凝り性なのかもしれないけど読者の事を考えていることがよく分かる。
Posted by ブクログ
江戸川乱歩作品の表記や用語、バリアント間の異同を詳細に検証することで、乱歩の用いる言葉、ひいては乱歩が活動した大正から昭和にかけて持ちられた当時の日本語との関係について探る本。乱歩は人気作家で同じ作品が何度も書籍化されているが、その文章は乱歩自身、あるいは編者、出版社、時代の変遷による日本語の変化により、意図的な改変からルビの表記や送り仮名など様々な異同があり、それを一つひとつ丹念に検証していくという労作。乱歩の場合、足穂のように延々とリライトを繰り返す作家ではないぶん、その異同の大半は用語の異同で地味なもの多く、考えただけでも気が遠くなる。