【感想・ネタバレ】海月館水葬夜話のレビュー

あらすじ

遠田湊には「秘密」がある――。美しい海月の姿をした海神信仰の根付く穏やかな港町で、湊は司書として働いている。と同時に、幼なじみの凪と暮らす海月館で、家業を手伝ってもいる。死者たちの後悔を紐解き、海に還すのだ。今宵もまた、さまよえる魂がひとり――。それはやがて、静かな町で起きた凄惨な通り魔事件の暗部に繋がり!? 哀しくも優しい葬送のミステリー!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

その町の人は海神様より命をいただき、死して海神様への元へと還る。
そんな信仰がまだ根強く残る港町での死者との交流、と言っていいのか。
未練があって海神様の元へ還れずにいる死者の後悔を晴らす手伝いをしている湊。
ただその晴らす後悔の先には、容赦ない現実があって、なかなか心を抉ってくる。
身内を裏切ってまで愛する人を手に入れたのに、その人は実は……
血まみれの彼女が望んでいたことは、実は……
作中2話は本当に結構容赦がない。

中には、感動系の話もある。
はとこの話は美しい情景描写も相まって、胸打たれる話となっている。
双子の話も、兄の本当の想いを知ると、景色が反転するのが見事。

主人公の湊自身も結構な過去持ち。
何しろ今彼女と同居している相手は、実は……
ただ他の死者たちの話がメインであって、湊と彼との間に何があったのか具体的なエピソードは語られない。
彼らの会話から断片を察することができる程度。
本当のところは主役二人の話もしっかり読みたかったが、敢えて詳細は明かさないというのもありかなと思わせてくれた。
好きに解釈すればいいのだと思う。
好き、だからこそ憎んでいるという彼と。
そんな彼に今こそ殉じようとしている彼女と。
他者がどう解釈しようと正解はきっとない。
なぜなら、それを正しいかどうか決めるのは彼ら自身なのだから。

他人から見れば、死者にすがって生きていると痛ましく思われているのに、それでも幸せだと言い切る彼女なのだから。

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2020年08月01日

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