あらすじ
東京五輪中止! そのときアスリートたちは。
新型コロナで東京五輪は延期。今、アスリートたちは夢の舞台を信じ、黙々と練習に励んでいるが、かつての日本には、夢のみならず命までも奪われたアスリートたちがいた――。
1940年に開かれる予定だった“幻の東京五輪”。活躍が期待された選手たちは、戦争一色に染まる時代の中でスポーツの晴れ舞台から去り、戦地へと送られた。有名なアスリートたちは、国威発揚のために “宣伝効果”の高い激戦地に送り込まれ、多くの者が遠く離れた地で無念の死を遂げた。
いま再び、東京五輪が混乱する中、アスリートの尊厳を奪った戦争の事実を明らかにし、彼らの激動の人生を見つめる。
2019年8月18日に放送されたNHKスペシャル「戦争と“幻のオリンピック” アスリート 知られざる闘い」の書籍化。同番組は、北島康介や長谷部誠がガイド役となり“幻の東京五輪”で活躍が期待されたアスリートたちの無念の人生を辿り、話題となった。戦地に赴いたアスリートたちが家族に宛てた手紙や遺族の証言など、番組で放送できなかった重要資料も加え、個人のエピソードを軸に、戦争とスポーツの関係を改めて問う。
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Posted by ブクログ
当時はコロナで戦時中のオリンピックとリンクさせていただろうが
まさかロシアによるウクライナ侵攻で再び戦争におけるスポーツが出来なくなる現象が起こるとは、作者の方思いもよらなかったのではないだろうか。。
絵画などの作品は残せるけれど、スポーツというのは今その時が勝負だと感じたことはあるけれど
本作を読むと、本当にその期間にピークを迎えている選手がいたり、戦死したりで哀しい。。
そんな中水泳連盟が戦時中でも組織を残すことでいち早く戦後参加できる体制が整っていたり
また記録会という戦時中でも出来ることに取り組んでいたり、と松澤一鶴氏が印象深かった。
戦死した選手、結果が出せず、という事だが
国を背負ったアスリートのついても 詳細を知りたい。。
別の小説で朝鮮の人が日の丸が上がって辛い、というようなのを読んだことがあるけれど
スポーツは世界を一つにする とか 平和の祭典 とか
むしろこれは事実では無く願望であって 未だ叶っていないのでは。。。
Posted by ブクログ
戦争で返上となった1940年の幻の東京オリンピックに出場するはずだった、或いは出場できるくらいの実力だった方々のエピソード。
現在のレジェンドアスリートと、名残りある場所などに赴いたり、ドキュメンタリーの活字版なので淡々と進むが、最終版にさらなる展開が待っていた。
あの2020東京オリンピック(ほんとうは2021開催だが)に、満員の大観衆となるはずだった国立競技場のツアーに参加したことがあるが、選手が入場するエントランスからスタジアムに出た時の壮観さといったら無い。
あの時、自分はアスリートでもなんでもないが、ここが満員で大歓声で、多国籍のお祭り状態だったら、どんなにかアドレナリンが出てアスリートにとって最高な時間になっただろうと思うと、勝手に涙が溢れてきたのだが、それがオーバーラップしてもう最後は涙目。
そのチャンスを、一生に一度もつかめるかどうか分からない貴重なタイミングを、戦争のせいで失った選手たちの無念さ、やるせなさが、簡潔な文章から滲む。
さらに、大枠はNHKスペシャルの放送を以前に観ていたので、その焼き直しかなと思いきや、そこでは語られていなかった事実が肝だった。ぜひ最後まで読んでもらいたいものだ。
作中、大河ドラマ「いだてん」にも出てくる名前が重要人物として次々現れ、ドラマのキャスト表と照らし合わせながら読んでいくと、思い起こされてまたもや胸熱になった。あのドラマ好きだったのにな。