あらすじ
経済格差が拡大し「総中流社会」は完全に崩壊した。そして今、中流が下流へ“ 滑落”するリスクが急速に高まっている。コロナ禍により中流内部の分断も加速している。『新・日本の階級社会』著者がさまざまなデータを駆使し、現代日本の断層をつぶさに捉える。
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Posted by ブクログ
「社会学」はどんな主張をしても5年~10年後にはデータが出揃うことによってその主張が正しいかどうかがはっきりしてしまう。本書では多くの社会学者の過去の主張とその変遷まで言及しているから、思わず笑ってしまった。
本書での「1970年代からはじまる格差のトレンド」を鋭く追求する論考は政治家のごとく断定的だが、ここまでデータが揃っていると反論の余地もないと思えた。
過去に、政治家や評論家がさまざまな学者の言説を引用して「格差」の存在を論争していたことを思い起こす。今から振り返ると、誤った認識の下に政策を遂行していた政治家には是非本書を一読してもらいたいものだと思った。
「社会移動」についての考察は身近な問題でもあるために興味深いし、「中流の3つのタイプ」のクラスター考察にもとても驚いた。日本もアメリカの様に底流で分裂が進んでいるのではないかと考えてしまう。
「使命は」を読んでいて感じたが、著者は本書ではより政治的に踏み込んでいる様に思える。日本の現状が学者にも傍観出来なくなったということなのだろうかとも思った。
Posted by ブクログ
格差社会の形成が1970年代から始まっていた等、ジニ係数の推移からデータに基づいて説明があり説得力がある。一億総中流の古き良き時代の幻想は勘違いだったとの主張は面白い。たしかに設問方法が3段階なら中流と答えるし、過去の比べて暮らし向きが良くなったら中流と思えるし、他国のアンケートでも中流が多くて日本だけが中流と思う人が多かったわけではないという証拠をつきつけられると、うならざるを得ない。他国や他人の生活を知らなければNepalが幸福の国と信じていたネパール人と同じだね!
中間階級を資本家階級でも労働者階級でもない層と分類して、独立自営の旧中間階級とホワイトカラーの新中間階級に分ける。労働者階級から中間階級に一定の率では移動できるが、父親の階級と子供の階級が同じになりやすい等、階級の固定化も見て取れる。中流の思想をクラスター分類うすると10%の中流右翼、40%の中流保守、50%の中流リベラルに分けられる。自民党の受け皿は中流右翼・中流保守であり、中流リベラルと中流保守を統合する政治団体が望まれるとする(民主党政権が失敗して混乱の時期)
NISA等、中流が資本家に移行する方策議論があると、もっと良かった。