【感想・ネタバレ】老人と海(新潮文庫)のレビュー

「叩きつぶされることはあっても、負けやせん」
自らを慕う少年に見送られ、一人漁に出た不漁続きの老漁師。やがてその釣網にかかったのは、見たこともない巨大なカジキだった。老人とカジキは死闘を繰り広げるが・・・
カジキとの対決の際、老人からは何度も「あの子がいてくれりゃ」というセリフが出てきます。あの子とは自らを慕ってくれている少年のことでしょう。実際には少年はその場に存在せず、一人でカジキと戦わねばなりません。「人は人を望むが、結局は孤高に戦わねばならない」ということを暗に示しているかのようです。
自然の雄大さ、脅威。そして、それらと対峙する人間の、老いてもなお失うことのない尊厳。眩しいほどに力強い作品です。ぜひご一読ください!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

どんなに打ちのめされても、人間は負けるようには造られていないという、老人の闘志、誇りを持って生きる姿が、骨だけの無残な姿になってもなお人々を惹きつけるカジキと重なっていく。
年老いたからって魅力がなくなるわけではなく、色々経験してきた分、人生の骨格は強くなるし、人を惹きつける魅力とか智慧が増すのかもと感じた。

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2024年06月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

キューバの海でひとり小舟を漕ぐ老漁夫サンチャゴ。彼は長い間、魚を一匹も釣り上げることができずにいましたが、運命の日に巨大なカジキマグロを釣り上げます。その後、4日間にわたる激しい戦いが始まります。

私がこの物語を読んで、最も印象に残ったのは、サンチャゴの不屈の精神です。サンチャゴの闘志は、困難に直面したとき、人間がどれほど強くなれるかを示しています。また、サンチャゴと自然との関係は、人間が自然の一部であること、そしてそれに敬意を払うべきであることを教えてくれたように思いました。

他にも、本作から得られる教訓は多いです。それは例えば、挑戦することの大切さ、自然との共存の仕方、そして何より、困難に直面した時に見せる人間の強さと尊厳です。サンチャゴが最後に残ったのは、手に入れた獲物ではなく、その闘いを通じて得た自己の誇りでした。人間とは何か、生きるとは何かを考えさせられる作品でした。

ヘミングウェイは、「老人と海」を通じて、人間の内面と外界との関係、生と死、成功と失敗の間の微妙なバランスを巧みに描き出しています。このことが、本作を普遍的な魅力を持つ名作にしているのではないでしょうか。

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2024年06月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

感想と、ヘミングウェイについて調べたこと。

物語は、なんでもない話。主な登場人物は老人のみ。
物語のほとんどは誰とも出会わないし、会話もほぼなし。徹底した外面描写と変わり映えの無い風景に途中で少しうんざりした。

あらすじも、散々な目にあって、やっとこさ勝利したかと思えば、結局手ぶらでただいま。悲しすぎる。

過去の回想から、サンチャゴは若い頃、肉体的にも精神的にも、さぞ逞しい男だったのだろうということが分かる。それだけに、今の年老いた彼とのギャップを残酷に感じて胸が痛んだ。

「老いるって悲しい」と思って読んでいたが、少し調べたりしてどうやらそうじゃないと思い直した。おもに作者ヘミングウェイについて調べたので、煩雑になりそうだけどメモしていく。


1.ヘミングウェイの生き様
とりあえず何かのヒントになればとヘミングウェイの人生観について調べたところ、「英雄」「ヒーロー」は外せないキーワードだということがわかった。まずは彼の名言から。


-As you get older, it is harder to have heroes, but it is sort of necessary.-
(年老いてこそ必要なのに、歳を重ねるごとに、ヒーローを持つことが難しくなる。)


「ヒーローを持つ」とは違和感のある言い回しだが、原文の"have heros"を敢えてそのまま訳した。英語でも"英雄になる"は通常"be a hero"と言うから、敢えてhaveを使ったのだと思う。自分の中に、英雄を持つ。それが、ヘミングウェイが大事にしたこと。ポリシーみたいなものか。

ヘミングウェイ自身の人生に、その思想は如実に現れている。彼は軍隊に所属した事こそないものの、戦争では報道記者や十字軍として積極的に行動し、たくさん怪我をしたらしい。また、無駄に勇敢な言動や大胆な行動が多い人物だったとも言われる。

彼の人生の一部を抜粋してみる。そもそも趣味が釣り、狩猟、ボクシングの時点で、パワフルでアクティブ。もちろんお酒も大好きだし、アメリカンマッチョな人だなという印象。


・1917年(18歳)
アメリカが第一次世界大戦に参戦。ヨ-ロッパ派遣の兵役に志願するが、身体検査で不合格(ボクシングによる目の障害)。

・1918年(19歳)
第一次世界大戦の北イタリアの戦線に赤十字として赴き重傷を負う。(脚部に砲弾の破片を227も受ける負傷でミラノ陸軍病院に3か月入院。)10月には再びイタリア軍と戦線に出る。

・1930年(31歳)
狩猟に出掛けた際、自動車事故で入院。

・1932-34年(33-35歳)
スペイン滞在で闘牛を楽しんだり。アフリカ狩猟旅行中に赤痢にかかったにも関わらず旅行を敢行。

・1937年(38歳)
内戦中のスペインに特派員として渡る。バルセロナ、バレンシアなどを転戦。

・1941年(42歳)
報道特派員として中国およびアジアを取材旅行。(第二次世界大戦中)

・1942年(43歳)
愛艇ピラ-号を武器弾薬を搭載出来るよう改造し米海軍に提供。キュ-バ沖に侵攻してくるドイツ潜水艦の哨戒任務に従事。

・1944年(45歳)
イギリス空軍付き報道員となる。ロンドンでの自動車事故で頭部に負傷。ノルマンディ-上陸作戦に随行してフランスに渡る。所属を変えてフランス人のゲリラ軍に入り、パリ奪還作戦に必要な情報収集任務に就いた。パリが連合軍の手に戻る際には正規軍より先にパリに入り、ドイツとの国境線(ジ-クフリ-ト・ライン)まで行ったため、「ジュネ-ブ協定戦時非交戦者安全服務規定」違反の容疑で調査を受ける。11月には再び戦場に赴き、ユルトゲンの森の激戦に参加する。

・1953年(54歳)
夫婦でスペイン、アフリカ狩猟旅行にでかけるが、コンゴで反乱が勃発し、取材報道のためそのままケニヤに移動する。

・1954年(55歳)
ウガンダで飛行機墜落事故にあう。一命はとりとめたものの、頭蓋骨裂傷、全身火傷、脊髄損傷、内臓破裂。

・1961年(61歳)7月2日午前7時30分頃
玄関応接間で銃自殺。

※空白の20代はいわゆる「パリ修業時代」。フリーライターとしてスタートしたヘミングウェイが詩人や作家と出会って短編を発表したりして、作家としての人生を歩み出す土台となった期間。


すごいなヘミングウェイ、行動的にも程がある。「やりすぎ」と言いたい出来事だらけ。赤痢になっても狩猟旅行を敢行、愛艇を戦闘用に改造、パリ奪還作戦で正規軍より先にパリに入るなんてのは、もう「正気か?」と笑いたくなるレベル。でもこのエピソード好き。

とにかく、やりすぎだろうがなんだろうが、こういう前のめりな生き方が彼の思想であり信念だったらしい。

ヘミングウェイにとって「英雄を持つ」とは行動と切り離せないと考えて良さそうだ。



2.文学的評価
内容紹介にもあるように、本書の特徴は「徹底した写実描写」。本当に徹底していた。冒頭の海の形容と日の出の描写が好き。それから印象的だったのは、色の描写が多いこと。魚の色、海の色、雲の色、遠く見える陸地の丘の色とか。それらの表現や変化に敏感なところは「徹底した写実描写」の象徴だったと思う。

あとがきの解説によると、このような写実的な描写は、アメリカ文学の特徴らしい。アメリカ文学の特徴として他に「空間的」「今と未来を見ている」なんて言葉もあった。アメリカは大陸発見のあと、広大な空間に未来を見据えて1から築かれた国だからだそうだ。

これと対照的なのが、先に発展したヨーロッパ文学。こちらは内面的描写が特徴で、アメリカ文学とは反対に「時間的」で、「過去を見ている」らしい。ヨーロッパは古代からの長い歴史の上に築かれてきた国々だからとのこと。

<アメリカ文学>
・写実的
・空間的
・未来を見ている

<ヨーロッパ文学>
・内面的
・時間的
・過去を見ている


なんとなく言いたい事はわかる。いや、よくわからない。あれだ、いわゆるハリウッド映画とフランス映画の違いみたいなことだろうか。

ハリウッド映画でCGがよく使われ、技術がどんどん開発されているのは、非現実的なシーンにも写実性を求めるからだ。そして、誰が味方で誰が敵なのか、主人公はどんな人物で、どこにいて、なぜそこにいて、時間は何時で、これから何をしようとしていて、なぜそれがそこにあるのか、全部わかる。見て楽しむ要素が強い。(外面的)
そしてファンタジーだろうが実在の人物のドキュメンタリーだろうが、無い所から、空間を緻密に再現する(アメリカの歴史みたい)。作り手は話を未来に向かって紡いでいく。クライマックスは当然、物語を経た結末である。

一方フランス映画は、何だかはっきりしない話が多い。登場人物の人間関係も掴み辛い。リアリティよりも雰囲気を作りこんで世界観を演出し、「どんな人間なのか」という内面を丁寧に描くことで物語に引き込む。感じて楽しむ要素が強い。(内面的)
どんな人物かということは、どんな人生を歩んできたかという過去と切り離せない。ハリウッド映画と逆だ。作り手は話の過去を掘り下げていく。


この「老人と海」の徹底的な写実描写はつまり、アメリカ文学的だ。

しかし一方で、作中で老人の内側に迫る象徴的な瞬間が何度もある。ライオンの夢や腕相撲の話など。「人生を振り返り考えるには十分すぎる時間があった」という一説もあった。また、登場人物が極端に少ないのは、老人の内面により深く迫るためと言えないだろうか。

徹底的な写実描写を用いながら、老人の内面にアプローチしている。
その点が、それまでのアメリカ文学、ヨーロッパ文学を超えて新たに踏み込まれた作品だということで評価されたのだ。(ってあとがきの解説に書いてあった)



3.見えるものと見えないもの
前項で文学的評価のことに触れたが、まさかヘミングウェイがこの物語を手掛けるにあたって「おれはアメリカ文学とヨーロッパ文学の垣根を超える新しい文学の金字塔を打ち立ててやるぞ!」なんて考えていたわけないだろうと思う。

では、なぜヘミングウェイは写実(見えるもの)と内面(見えないもの)の描写を同時に行ったのだろう。

それはきっと簡単なことで、単純に、ヘミングウェイにとって見えるものと見えないものは切り離せないものだからだ。
両方あって初めて完全なものになる、ということ。

見えるもの=行動(体の動き)
見えないもの=精神(心の動き)

行動と精神は、両方揃うことで初めて完全になる。ヘミングウェイはそう考えていたのだろう。1で触れた通り、ヘミングウェイ自身がやたらと行動力のある人物だったことからも分かる。

英雄を持つ(to have heros)には、精神も行動も、両方が英雄的でなければならなかった。


4. 理想の老人
主人公サンチャゴは特別なものは何一つ持っていない、本当にただの老人だ。古びた道具と老いた体はあるが、最低限以下の装備と言っていい。さらに言えば運も無い。

なのにたった一人で海に出る。怪我をしようが、碌な食料がなかろうが、沖にどんどん流されようが、陽が沈み、夜の闇を漂流し、朝焼けに目を焼かれようが、自分を奮い立たせて戦う。

老人が単身、大海原へ漕ぎ出して、炎天下の下、4日も漂流しながら、悪戦苦闘のすえ巨大魚に勝利し、サメと戦って帰って来た!

なるほど行動は十分、勇敢で英雄的だ。

精神面はどうだろう。老人が単純に食うために、あるいは仕事だからという理由で漁に出たのだとしたら、ヘミングウェイの言う"英雄"ではない。それは生活のためであり、庶民的な精神で、内面的な部分で英雄的とは言えないからだ。

サンチャゴはこう言う。

「若い奴らは海を仕事場だとか敵とか思っていやがる」
「おまえを食う資格のある人間がいるだろうか-(中略)-いや、ひとりだっていやしない」


サンチャゴは海を仕事場とは思っていない。つまり漁を仕事と思っていない。そして食べることが目的で漁をしているのではないということがわかる。漁師にとって大事な取引相手であるはずの加工工場を悪く言ったりもしていた。

ではサンチャゴは何のために魚を獲るのか。
こんな一節がある。

「あの少年に、一風変わった老人だということを証明してやるんだ」


"一風変わった老人"とは?
人は、歳を取るごとに肉体的に衰え、精神面も弱気になっていくもの。ということは、"一風変わった老人"とは"強い老人"のことで、「あの少年に強い老人だと証明したい」というのが老人の思い。つまり老人は、心でも強さを求めている。
過酷な状況、強大な海と野生の力に挫けそうになりながらも"強さ"を求めて立ち向かっていく精神はまさにヒーロー的と言える。


サンチャゴは、心と行動の両方に「ヒーロー」を持っている。


サンチャゴは、ヘミングウェイの描く理想の老人の姿なのだ。


5.ロストジェネレーション
第一次世界大戦を10~20代で経験しているヘミングウェイの世代は所謂"ロストジェネレーション"と呼ばれる。神も科学も失った世代という意味だ。

19世紀の産業革命を経て、人々は産業技術の進化とともに生活を変え、資本主義化がすすみ科学がすすむと、神への信仰は薄れて自分たちの技術や科学を信頼するようになる。1882年、ニーチェは「神は死んだ」と言った。歴史上で繰り返された宗教戦争への軽蔑も相まって、人々は実生活でも精神的にも「神」から離れ、「現実」に目を向けるようになったのだ。特に先進国の科学技術の進歩と支配地域の拡大は凄まじく、若者の目に未来は明るく見えていたことだろう。

しかし20世紀になり、技術の進歩は失速。更に1914年には第一次世界大戦が勃発。築き上げた町は徹底的に破壊され、人々は疲弊し、最新技術の武器によって自国も他国も何万人もの尊い命を失った。しかも普仏戦争以来の大きな戦争であり、「戦争」を忘れかけた人々がいきなり世界大戦を目の当たりにする。絶望するのも無理はない。

神を見捨て、科学技術にも裏切られ、もう何を信じたらいいのか分からない。それが「ロストジェネレーション」失われた世代、迷子の世代。

自暴自棄な生き方をしたり、その場限りの楽しみしか考えられずにドラッグや酒に溺れていく若者が増えたとも言われている。"いい時代"を知っていながら「どうせ全て失うんだ」という諦めと、「何を信じればいいんだ」という苦悩から、未来に何かを残したり過去を反省したりすることをやめた人々。

物語の主人公サンチャゴも、一度手に入れたもの(魚)を失う。奪われぬよう、戦争同様 命をかけてサメと戦うが、結局失ってしまう。老人が持ち帰ったのは骨だけだった…。

ああ虚しい、と思いきや、残された骨は大きく立派で、その骨の一部は少年(未来を担う世代)の大切な宝物となる。戦争ですべて焼かれても、年老いてすべてを失っても、英雄を持っていれば残せるものがある。そんなメッセージを感じた。


6.過去・現在・未来
ライオンの夢が出てくるのは最初と最後そして途中一度の3回きりだが、かなり印象的だった。

老人が若い頃(過去)にアフリカで見たライオン。そしてライオンの夢に少年(未来を担う世代)は出てこないと明記してある。このことから、少年は未来、ライオンの夢は過去を表していると言える。

すると、こうだ。
ライオンの夢を見る⇒海で魚と戦う⇒少年に何かを残す
それは、過去を振り返り、自らの英雄を失わずに今を生き、それを未来に繋げるという意味だ。

最後にまたライオンの夢で終わるということは、この繋がりの繰り返しを意味している。そうして時代は紡がれていき、自らの英雄的性質は未来に繋がるのである。


7.ヘミングウェイの晩年
「老人と海」は、ヘミングウェイが50過ぎの頃書かれた作品だ。頑健な肉体と不屈の精神を持ち合わせ、自信とエネルギーに満ちた人生を歩んできた彼も、年を取るにつれ肉体的な衰えを感じ、4度の結婚を経て精神的な挫折も経験し、自分の中の「ヒーロー」が陰っていくのを感じていたのだろう。

それでも、この「老人と海」を書いたころ、まだヘミングウェイは人生に絶望していなかった。

ヘミングウェイが最終的に自殺という道を選んだのは、このあと飛行機事故にあったことが大きなきっかけの一つとなる。リハビリを頑張ったものの頑健な肉体を完全に取り戻すことは叶わなかった。命があっただけでも幸いというほどの大事故だったそうだが、そう簡単に「あーよかった!」と割り切って生き方を変えることはできなかったのだろう。

既に老いに不安を感じつつあったところに、事故という思いがけない出来事でポリシーである"行動力"に急ブレーキがかかってしまったことは、彼にとって大きな打撃だった。

更に、晩年はお気に入りのキューバでの生活が脅かされる事態(キューバ革命)と、視力低下や狩猟での婦人の怪我などの不安が重なりノイローゼでかなり参っていたそうな。精神的に強さを求め続けるモチベーションが保てなかった。


"強く生きる"とは難しいと考えさせられる。


以上が、調べたり読み返したり考えたりして、メモしたこと。

精神活動と現実のバランスは難しい。精神活動に没頭するあまり実生活が浮世離れしていったり、日々の生活に追われて考えることをやめてしまったり。
頭には意見があっても、それを行動で示すことができなかったり、怯えながらも行動では必要以上に強気だったり、挫折した心に体も引きずられてしまったり。いつも心にヒーローを宿すことは難しい。そして更に、それに見合う行動をすることは難しい。

いつか体力と気力のバランスが狂うこともあるだろう。何をしても体が付いてこないことがあるだろう。

若かりし頃の活発な精神と肉体を思い出して絶望することになるかもしれない。しかしそうなっても、常に自分の中の「英雄」とどう向き合い、何を行動にすればいいのか追究していくことが大切だ。

メッセージは前向きだけども、ヘミングウェイの抱えるダークな部分がなければこんな話は生まれなかっただろう。うーん、面白かった。

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2024年05月22日

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目標を達成しても困難は、また次から次へとやってくる。格闘中の心理描写に感情移入し、同時に共感する部分が多かった。自分も20年したらこんな風になるんかな?

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

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キューバで漁師をしている老人サンチアゴの物語。84日間の不漁の翌日からの3日間が描かれる。

まず、老人が一人で海の上で3日間カジキと闘い続けるというだけの状況で小説にしてしまうのがすごい。ボリューム的には大したことない(文庫で130ページ程度)にせよ、なかなか読ませる。

ひとつひとつの場面の描写がシンプルかつ丁寧で読みやすかったが、全編にわたって滲む自然への敬意が為せる業か、と解説を読んで納得。ヘミングウェイ本人も海釣りに一家言ある人だったとのこと。

結末もすごくいい。三日三晩の死闘の末に仕留めたカジキを、帰りの道すがらサメたちに食い散らかされるという悲劇に見舞われながら、なんとか帰り着く。悲壮感、徒労感はあるのだが、絶望感はない。また次に向かって立ち上がるんだろうな、ということがありありとわかる。「人間は叩きつぶされることはあっても、負けやせん。」ってすごいセリフだよな、と思う。

弟子的な存在なのか、マノーリンという少年が登場するが、その少年との師弟のような家族のような関係性も美しい。

いずれ再読する予感。

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2023年11月19日

Posted by ブクログ

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名作の一つとして手に取ってみた。
訳者である高見浩さんの腕もあるかと思うが、描写が綺麗で読みやすい。
少しずつ弱るカジキと体力が削られていく老人のやり取りは穏やかに、でもハラハラする展開。
また、捉えた後も次々とサメが襲ってきて、老いと戦いながらなんとか帰還するもほとんど失ってしまったカジキを見た時の虚しさなど、あっという間に読んでしまったが心に残る作品だった。

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2024年06月06日

Posted by ブクログ

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どんな困難が起ころうともその時に持っている物と知恵で乗り越えていく老人は強いと感じた。人間は負けるようにはできていないという言葉、老人の行動から物事を投げ出すのはその時できる全てのことをやった後にすべきことだと感じた。昨日と今日は違っていて運は必ず巡ってくる。

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2024年05月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ヘミングウェイが生前最後に発表した小説。ハードボイルドリアリズム。闘争的な老人のサンチャゴが海と戦う物語。あまりに有名なので1度は読んでみたいと思っていた作品。超写実的で世界観に深く入り込むことが出来た。老いと自然に立ち向かう老人がずっと漢の中の漢。釣り上げたマグロは虚しくも鮫に食べ尽くされてしまい骨だけになるが、老人は負けてはいない。「老人はライオンの夢を見ていた。」

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2024年02月05日

Posted by ブクログ

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84日間不漁だった老人サンチャゴが1人で小舟に乗り、超巨大なカジキマグロを勝ち取るが、帰途鮫に襲われて獲物を奪い取られる物語。神に祈ったり船上で様々な工夫を凝らしてカジキマグロに勝つも結局は鮫に食いちぎられる様は老人の徒労とリアリズムを感じられる。しかし、それに絶望を感じていない様からバッドエンド感はない。野球選手と老人自らを照らし合わせて奮起する場面があるも野球選手の実績に対して老人のそれは残念であることはアメリカ特有の新資本主義による格差も暗示していると思いました。

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2024年02月01日

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