あらすじ
小学生の息子を連れて鹿を追う週末ハンターの倉内と、トラブルで死体を抱えた詐欺集団のリーダー加藤。獲物を狙う狩猟者と死体遺棄を図る犯罪者が山中で出くわしてしまった――。息もつかせぬ展開と圧倒的リアリティに痺れる表題作。世界最難関の雪山で飢えと寒さに蝕まれていく極限の状況下、人の倫理観の矛盾を鋭く問う短編「K2」。サバイバル登山家が実体験を基に描く唯一無二の犯罪小説。(解説・杉江松恋)
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Posted by ブクログ
「息子と狩猟に」
週末ハンターと詐欺師の対比
「獲物」を追う両者
人と人以外の動物の違いって?
「K2」
登山の話
小説を読んでて、息苦しくなったのは初めて
本読んでたはずがランニング後みたいな感覚に笑
何回も読みたい
Posted by ブクログ
人間と動物、同じ1つの命なのに価値や重さに違いがあるんだろうか。人間は殺してはいけないけど動物は許可があれば殺しても良い。その違いって、何だろう。倫理的に当たり前のことかもしれないけど、正面から向き合って考えたら明確にその理由や根拠を言語化するのって簡単ではない。人間社会で生活していたら疑問にも思わないことを自然の世界の中で生きる時間を持つ筆者が突き付けてくる感じ。ハラハラする展開にスリルを味わいつつ、読後にズッシリと考えさせられた。
Posted by ブクログ
オープニングのおれおれ詐欺のシーンが何となく好みに合わなくて、ちょっと寝かそうかと思ったけど山に入ってからの展開は凄かった!
心臓バクバクし過ぎて、本文入ってこなくなって、何度も読み直しながら読んだ。こんなに心拍数あがるのはマイケル・コルレオーネがソロッツォとルイズで会うシーンを観る時くらいだよ!!
狩猟やる友達に読ませて話聞きたい。
K2
こっちもすごい。運命を分けたザイル的な話かと思ったら予想外の角度から殴られた。統計通り3割3分の結果がそこにあって良かったのか悪かったのか。勿論良かったんだろう。。。
Posted by ブクログ
父親の葛藤と後半の場の空気の緊迫感が良かった。また、死生観について考えさせられる興味深い内容だった。
また、同じく収録されていた「K 2」は、生き延びるためにあらゆる手段を尽くす2人のとった行動に驚いた。
どちらの作品も後半の展開が面白かった。
Posted by ブクログ
著者初のフィクションは意外にもポップで嬉しい誤算!
服部文祥さんを有名にしたといえる、サバイバル登山関連のノンフィクションは以前に読んでいましたが、この『息子と狩猟に』は服部さん初の小説とのこと。死生観が伝わるようなノンフィクションさながらの作風なのかなと思ったのですが、意外や意外しっかりエンタメしていて(エンタメを軽視している訳ではないです)素直に面白いと思える読後感でした。もちろんそういった死生観や、命を奪う行為について考えさせられるものではありましたが、けして重厚な手触りではありません。
特殊詐欺グループのリーダーと、週末狩猟をする男とその小学生の息子。全く別々の人生が、ある一点に向けてじわじわと近づいていき、二つの視点の入れ替わりがだんだん早くなり、ついに交差した瞬間に物語はクライマックスを迎えます。読み始めから、並走する二筋のストーリーがいつどこで交差するかワクワクさせてくれました。
むしろ併載の短編「K2」のほうが、読む前に私がイメージした作風に近いけれど、それでも予想以上にしっかり盛り上がりのある展開や構造で、小説として楽しめるものでした。
登山家というイメージもあり、俗っぽさを遠ざけ、やや難しく重たい作風なのかなと思ったけど、まさかここまでポップだったなんて嬉しい誤算でした。
Posted by ブクログ
この小説には2編の短編が描かれている。一つは「狩猟」、もうひとつは「登山」がテーマである。
どちらも服部さんのこれまで培ってきた経験が活かされたテーマではあるが、もちろん「サバイバル登山家」なんて名乗る人の書く小説が、そんな単純な作品なはずがない。
私たちが暮らす人間界と、動物たちが暮らす山々などの自然界。
狩猟や高所登山には厳しいルールやマナーが存在するのだが、人間界にあるタブーやモラルは、自然界ではタブーやモラルとして存在するのだろうか?
夜中に鹿を撃つこと(捉えること)はいけないことなのか?
サバンナでライオンがインパラを捉えて食べることはいけないことなのか?
仲間を見捨てて自分だけが生きようとすることはいけないことなのか?
チーターに狙いを定められたシマウマを見捨てて自分だけが逃げることはいけないことなのか?
それぞれの世界でのタブーとモラルの境界線を考えさせられる、一癖も二癖もある作品。
Posted by ブクログ
詐欺と狩猟のシンクロニシティをテーマにしたタイトル作と、エベレストに次ぐ標高を誇るK2登頂にまつわる恐ろしい秘密を題材にした小説を収納する著作。いずれも著者ならではのリアリティ溢れる文体で極限時における人間の心理状況を見事に炙り出した佳作。
Posted by ブクログ
生きると言うことは他の命を奪って自分の命をつなぐことなのだということを考えさせられる本。人間が生きるために獣を殺して肉を食べる、という日常的なことから、相手を殺さなければ自分が殺されるというシチュエーションや、人肉でも食べないと餓死してしまうというシチュエーションまで、「これをしないと死んでしまう」または「殺される」という状況で人間はどんな思考をしてどんな行動を取るのか?またそういうシチュエーションを切り抜けて生き残った後、どうやって心の安定を保とうとするのか?深い。
Posted by ブクログ
息子を連れて狩猟に出かけた倉内と詐欺グループリーダー加藤の話が並行に進む。
トラブルを抱え山に入った加藤と、倉内親子は遭遇してしまう。
狩猟、詐欺のシーンは、リアリティがありグイグイ引き込まれた。
終盤、親子の会話にゾクッとくる怖さも感じられる。
Posted by ブクログ
服部文祥『息子と狩猟に』新潮文庫。
サバイバル登山家による犯罪小説。『息子と狩猟に』と『K2』の2編を収録。
『息子と狩猟に』。従来の犯罪小説とは一線を画した不思議な味わいの短編。小学生の息子を連れて狩猟のために山に入った倉内は、死体遺棄のために山に入って来た特殊詐欺グループと遭遇する。殺す者と殺される者……不思議な味わいの原因は善人と悪人の立場が入れ替わっているためか。
『K2』。K2に登頂し、下山中に遭難した二人の登山家。生きるために二人が選んだのは……現代の『ひかりごけ』或いは『野火』……しかし、所詮は二番煎じとしか思えなかった。
本体価格520円
★★★