あらすじ
政策保有株式(株式持合い)は多く持つほど利益率が低く、取引関係の維持・強化にはつながらない。
全上場企業のデータから、会計数値の変化を検証。
買収防衛、高株価維持、取引先との関係強化など様々な目的で導入され、“根雪"のように残る政策保有株式(株式持合い)。全上場企業のデータを基に、その効果を定量分析。その経済的効果がもはや失われていることを明らかにする。
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Posted by ブクログ
政策保有株式とは、何なのか。何の意味がるのか。そした疑問に答えるべく、多くの実証分析をもとに「意味がない」と看破するのが本書である。研究書でありながら、非常に理路が明解で、日本企業の慣習に対する筆致は痛快そのものである。
最終章で、記載されている言葉も、印象深い。当たり前のことが当たり前に書いてあるが、心に留めておきたい。
~株式持ち合いは株式を買わせない行為であり、資金調達という株式公開の本来的意義からは説明することができない。もちろん局地的、短期的に買収防衛をしなければならない局面もあろうが、総体的に考えれば株式公開と株式持ち合いは相容れないものである。~
株の持ち合いは、株式買い占めの脅威が存在した時代には、防衛策として有益な鎧であったが、今は自らの手足を縛る重し、経営改善の足枷になっている。会社は公器であり、健全なる市場からの監視の目があってこそ、その役割を発揮する。株式持ち合いは、そうした緊張関係を停止させ、企業の成長へのインセンティブを一定削ぐものである。
最近、プロフェッショナル・オートノミーという言葉を聞き、とても納得した覚えがある。元々は医師等で言われている言葉であり、一般の人ではわからない境地であるからこそ、一定の自由が許される。しかしながら、その自由は強力な自己規律を伴う。過去、ノブレス・オブリージュという言葉にも強い共感を覚えたが、その言葉に近く、少々発展させた言い方かもしれない。
プロフェッショナル・オートノミーはプロフェッショナルや、高度な能力がある人間は、自己規律ができるからこそ、その専門性を活かすために一定の自由が許されるというものである。自由が許されるのは、社会や顧客にとっての利益や貢献を前提としているという点も重要である。
話はそれたが、円谷先生は、最後に日本企業の経営の自由度と規律を高め、世界に打って出ていくべきである、と看破する。
まさに、自由と規律は、プロフェッショナルに必要な要素である。日本企業はムラ社会的な感覚の延長線上である株式持ち合いという因習を打破し、自由と規律を持った高潔な企業経営への道を進むべきであろう。