あらすじ
探偵嫌いの僕と迷宮落としの魔女。
妹にまつわる不思議な現象、「やよいトリップ」。未来視とも思えるその力が原因で巻き込まれたとある事件をきっかけに、訪れた洋館。
洋館の表札には『探偵事務所 ラビリンス』。
そして、古めいた書架に囲まれるように彼女はいた――。
魔女のような帽子に黒い服。書架に囲まれた空間そのものが一つの芸術作品のように美しい佇まい。
「解かれない謎は神秘と呼ばれる。謎は謎のまま――シュレディンガーの密室さ」
彼女――焔螺は、世界を神秘で埋め尽くしたいのだと言った。
「私は決して『探偵』なんかじゃない。神秘を解き明かすなんて無粋な真似はしないよ」
探偵じゃないなら、いったい何なんだ。
問えばふたたび、用意していたように即答だった。
「魔女さ」
まったく、時代錯誤も甚だしいと嘆かずにはいられない。
神秘的で、ミステリアスな一人の魔女に、この日――僕は出会った。
第14回小学館ライトノベル大賞・審査員特別賞受賞。
ゲスト審査員・若木民喜氏絶賛の新感覚「迷宮落とし」謎解き(?)開幕!
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
犯人になるために本を見つけ出すという最後。
探偵が敵になるが、主人公は別に犯罪者という訳では無いストーリーがとても良かった。
ぜひ読んで欲しい。
Posted by ブクログ
化物語のような不思議な世界観を醸しているように感じた。
ラノベとは思えない圧倒的な語彙で楽しめた。
次巻はやよいトリップについて深く掘り下げるようなので楽しみ。
変わってるけど微妙なミステリ
ミステリというジャンルを皮肉った作品は数あれど、その中の犯人側を擁護する役を主役に置くというのは中々見てこなかった。
犯人の視点でもコロンボのような探偵に敗北するのをよく見ていただけに、犯行側が探偵に勝利というのは中々面白い設定だ。
しかしようするに迷宮入りして欲しい主役側は行きすぎれば犯罪を擁護することになるわけである。それは無理があろうとのことで、少々小規模な学園事件に留まっている。読者と主役たちだけに共有される「真実」も誰かが大きく損することはないように配慮されている。
最終章では謎を傍若無人に解決していく探偵の業やそれに対する主役側の存在意義が出てくるが、それがあっても結局重犯罪を迷宮入りにすることはできない。
ここがジレンマになってしまう。現代の許される神秘(つまるところ迷宮入りのトリック)が都市伝説程度にしかないという意味でもあるのだが、その範囲で戦わねばならない展開に息苦しさを感じた。もちろん設定は新鮮だったのだが、穿ち方が良くなかったかなと思う。