あらすじ
とある人間が死の淵から帰ってきた。
――ただいま!!
エロも哲学も垣根なく綴った、突然の病からよみがえるまでの怒涛の3年間。
アルバム制作やライブ、ドラマ撮影に執筆。
やりたかったことは次々と仕事になったが、片時も休まる暇がない。
自分がなりたいと思う姿を追いかけるほどに消耗していく中、
突然の病に襲われた。
……まだ死ねない。
これから飛び上がるほど嬉しいことが起こるはずなんだ。
死の淵から蘇った3年間をエロも哲学も垣根なしに綴る。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
星野源の『よみがえる変態』は、一見すると軽やかで笑いを誘うエッセイ集である。しかし、その底に流れるものは、決して軽薄なものではない。むしろ、闇の中でなお光を見出そうとする人間の強靭な意思であり、絶望をも笑いへと変換する稀有な表現力である。
本書には、下世話なユーモアや日常の小さな出来事が散りばめられている。だがそれらは単なる戯れではなく、読者に生きる力を与える「肯定の言葉」として響く。くだらないことを笑い飛ばす余裕の中に、人生の苦しみを引き受け、それを昇華していく強さが宿っている。
特筆すべきは、著者が自らの病との闘いを赤裸々に描きながらも、それを悲嘆としてではなく、むしろ「生の実感」として提示している点である。死の影を間近に見つめながらも、なお「笑い」を手放さずに綴られる言葉は、読む者に大いなる励ましを与える。
『よみがえる変態』は、エッセイという枠を超えて、人間の尊厳と希望を示す書である。星野源という存在は、弱さを隠さず、孤独を恐れず、愚かささえも味方につけて生きている。その姿は、現代を生きる私たちに「どのような状況にあっても、人はなお笑い、なお愛し、なお希望を紡ぐことができる」という真実を教えてくれる。
読み終えたとき、胸に残るのは単なる笑いではない。むしろそれは、生きることの豊かさを再認識させる、確かな余韻である。