あらすじ
正体不明の男に乗っ取られた飛行機は、ヒマラヤ山脈のさらに奥地に不時着する。辿り着いた先には不老不死の楽園があったのだが――。世界中で読み継がれる冒険小説の名作が、美しい訳文で待望の復刊!
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Posted by ブクログ
シャングリラ、飛行機が乗っ取られて不時着し桃源郷にすむことになる4人が性格もバラバラでそこでの生活、そしてここに連れて来られた理由などを知る。
最後はどうなったのか現実に起こったことか、夢想か読者に任せる話は空想好きの自分にはいい終わり方だった。
そして欧米人が書いたにしてはいい加減なぞんざいではなく崇高さが垣間見れて訳がいいのか日本人が書いた小説のような読みやすく違和感なく再読したい一冊。
Posted by ブクログ
理想郷を表す言葉”シャングリラ”の初出の作品。1933年に発表後、翌年ホーソンデン賞を受賞 。2度映画化されている冒険小説の名作。
本書は、現在の視点で描かれるプロローグから、11章からなる過去の視点の本篇、そしてプロローグの続きとなるエピローグで終わる構成になっています。
その本篇で語られる”シャングリ・ラ”の暮らしぶりは、まるで老荘思想の世界観のようで自分は好きですが、事件に巻き込まれて暮らし始めた4人の登場人物のうち、一人の若者にとっては退屈極まりない場所だったようです。その彼の上司である主人公との後半のやり取りが興味深くて面白かったですね。まるで自分が若い頃に年配の人に対して思っていたことを、ストレートに代弁していて苦笑いしましたが(反省)…万人に共通な理想郷は無いでしょうね。価値観は人それぞれで、年を重ねれば変わってきますしね。ある人にはユートピアでも、別の人にはディストピアという感じかな。
この小説、最後は主人公が心変わりする心境や不老不死の秘密、エピローグの女性の話しなど、結末は多く語られないですが、それとなく想像で補えて読後感も良かったです。文章も、高尚で美しい訳文は、読んでいて心地よかったですね。ただし、旧漢字が多く、もう少しルビが丁寧に振ってあったり、難しい言葉の注釈があればいいのになとも思いました。
正誤(新装版初版)
P49の7行目:
とやこう思案するうちにも、
↓
と、こう思案するうちにも、
P134の13行目:
ここは黙っいることだな。
↓
ここは黙っていることだな。
P134の18行目:
食事が済んで後である。
↓
食事が済んだ後である。
P148の18行目
これをしも室温のせいとする考えに傾いて
↓
これをさも室温のせいとする考えに傾いて
P166の10行目:
全神経を傾けて聞き入ったたことが、
↓
全神経を傾けて聞き入ってたことが、
P190の6行目:
成り行きをむしろ珍らかに快く思った。
↓
成り行きをむしろ珍かに快く思った。
他:
長文のセリフで、改行した先頭の余分な「 が複数箇所。
Posted by ブクログ
謎の人に飛行機がハイジャックされて、中国ともチベットとも区切りがつかないヒマラヤ山脈に不時着する。さらにわけの分からない修行僧に案内され、僧院シャングリ・ラ(豪華)に招かれる。コンウェイ他2人は帰らなくて良さそうな雰囲気を出すが、コンウェイの同僚マリンソンは反抗的な態度をとりつつ帰ろうと主張する。そんな中、コンウェイは僧院の中でも一番偉い僧と面会することになる。
不老不死に近く、ゆっくりなペースで老いていく環境のシャングリ・ラ。暮らしは寝て食べて遊んでに近い。山奥にいるのにピアノもハープシコードも図書室もある。某外資系ホテルを思い出した。1回泊まってみたいとすら思う。
あと話の根幹ではないが、シャングリ・ラでショパンの弟子を名乗る男がコンウェイに出版されてない曲を教え、コンウェイがシャングリ・ラから帰還後に弾いた話。夢があるなぁと思った。作曲家が生きていたら当然お蔵入りになった曲だってある。どんな曲だろう。想像が膨らんで、なんとも夢を見てるかのようだった。
Posted by ブクログ
フランクキャプラ監督の映画をみてすぐに原作を読んでみた。登場人物のコンウェイとチャンは同じ名前ながら、若い領事館マリンソン・当方伝道会のミスプリンクロウ・指名手配の詐欺師アメリカ人バーナードとなっている。映画が原作を丁寧になぞってつくり、シャングリラの描写も誠に綺麗にできていることを感じた。原作では大ラマ僧との対話そしてマリンソンとの口論をメインに挿げられているが、逆に原作ではなぜコンウェイがマリンソンと一緒に青の谷を脱出することを決意したのか明瞭な理由がない、プロローグとエピローグも映画のほうが丁寧に描写されていた。原作でようやく理解できたのが、シャングリラを認めずなにがなんでも脱出しようとするマリンソンの文明国ならではの価値観。ビートルズがあれだけ賞賛していたインドをあっさり離れたのと似ている気がする。