【感想・ネタバレ】もうダメかも――死ぬ確率の統計学のレビュー

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Posted by ブクログ 2020年08月07日

事故や暴行など外的な原因で、イングランドとウェールズで亡くなるのは百万人に一人。この一日のリスクを1マイクロモートとして、様々なリスクがその何倍あるか考えたり、様々な避妊法による妊娠率の比較、19世紀のウィーンの産科の死亡率、鉄道に乗って死ぬ確率など様々なリスクについて考える。

なかなか面白かった...続きを読む

毎週エクスタシーを服用すると2マイクロモート、バイクで45キロ走ると4、マラソンが7、全身麻酔とスカイダイビングが10だそうだ。普通に生活している時に発生してるリスクの10倍なら大したことない、と言えなくもない。計算したことのないことを無闇に恐れるのは正しくないかも知れない。

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Posted by ブクログ 2020年12月06日

文体が眠たくなるが、中身は面白い。
100万分の1の確率をマイクロモートと定義して、イギリスで一日の間に平均して死亡する確率と同じとする。また30分寿命が縮む確率をマイクロライフと定義し、アルコール一杯目は1マイクロライフ寿命が増加、2杯目以降は0.5マイクロライフ寿命が縮むそうな。このような新単位...続きを読む系を導入することで、様々なリスクの横並びを比較することが可能になる。出産のリスクは120マイクロモート、スキューバダイビングのリスクは5マイクロモート、アフガニスタン駐留は1日当たり47マイクロモート。
これらのリスクを理解する人の心は不安定?で、リスクを400分の1ととるか安全は400分の399ととるかで態度が変わる。また、同じような人が400人いたら死ぬのが1人として、同じような人って誰?の定義が難しい。「確率はまっとうな概念に見えて、直感的に難しくてややこしいもの」であり、「伝える側が、伝えようとしている内容を、本当はよくわかっていない、確率とは混乱そのもの」であるというのが結論である。もしも?とそれがどうした!の2面的解釈を個別事例毎に使い分けることが確率を御するコツのようである。

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Posted by ブクログ 2020年12月04日

タイトルよりも、副題の「死ぬ確率の統計学」の方がわかりやすいかもしれない。
本書は人が生まれてから死ぬまでの間に出くわす死亡リスクについて考察するもの。統計的な事実と3人のモデル(ノーム、プルーデンス、ケビン)の人生を重ね合わせて、ストーリー仕立てで、ちょっとユーモラスに、いささかシニカルに概観して...続きを読むいく。

原題の"The Norm Chronicles"は、モデルの1人のノーム(Norm)の名と、普通名詞としての標準的な状況(norm)を重ねたもの。つまりは、「(ノームに代表されるような)一般的な人の人生のあれこれ」というところだろうか。
章ごとに、人生の途上で出会うさまざまな出来事が考察されるわけだが、乳児期、自己、薬物、出産、交通機関、安全衛生、ライフスタイル、手術、老後のお金、とまぁ生きていればいろんなことがあるわけである。

本書前半では、マイクロモートと呼ばれる基準が随所に出てくる(提唱者は著者らではない)。マイクロは100万分の1、モート(mort)は死の意で、死亡確率100万分の1を指す。
生きていれば危険はつきものだけれど、死ぬほどのことはそう多くはない。イングランド/ウェールズ(*著者はイギリス人)では、事故や事件で亡くなる人は毎日50人ほどだという。この地域の人口は合わせて5000万程度なので、つまり100万人に1人が劇的な出来事で命を落とすことになる。これを1マイクロモートと呼ぶ。普通の暮らしをしていて不慮の死を遂げる確率はこれくらいですよ、ということだ。これがもうちょっと危ないこと、例えばスキューバダイビングをするとか、全身麻酔を受けるとかになると、確率は10マイクロモートに上がる。こうして危険を換算すると、急性のリスクを比較することが可能になるわけである(まぁざっくりと、だけど)。

本書の中で、著者らはもう1つの基準、マイクロライフも提唱している。こちらは成人の人生を100万等分した1個の単位のことで、概ね30分間に当たる。これは何の役に立つかというと慢性リスクを考えるのにちょうどよいのだという。単純にぼんやりと時間を過ごすだけでもマイクロライフは減っていくわけだが、不健康な生活をしていればその分、マイクロライフもどんどんと減っていく。たばこ2本で1マイクロライフ減り、ウェストが2.5センチ太くなるごとに1マイクロライフ減る。ハンバーガー1個で1マイクロライフ、度数が高いビール1リットルで1マイクロライフ。
1個のハンバーガーで死ぬことはめったにないけれど、積み重なれば寿命は短くなっていく、というお話。

さらりと読んで、ふぅん、そうかというところだが。独特のシニカルな語り口は何となくイギリスっぽい感じがする。
イギリスはコホート研究(cf.『ライフ・プロジェクト』)みたいなものも盛んなようで、統計的に物事を見る地盤のようなものがあるのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2021年01月05日

主に死亡やその他の災難の原因別の確率についての種種雑多な記述。おもしろいが、この和文タイトルは、ミスリーディング。原タイトルは、The Norm Chronicles (ノーム(登場人物の名前、標準という単語のダジャレ)の歴史)。うーん、直訳は、売り物にならないな。
ちょっと前まで、出産時の死亡率は...続きを読む、家庭内のほうが病院より低かったんだね。原因は院内感染。現在も医療関係者が院内感染に神経を使う理由がよく分かる。

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Posted by ブクログ 2020年07月06日

「リスク」が何なのか、を自分なりに考えるにあたって、いろいろとヒントがもらえるのだが、いかんせん、なにか癖のある文章でよみづらいかな。

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Posted by ブクログ 2020年04月26日

 様々な確率やリスクに接する際、我々が決まって陥る混乱──結局、この数字は一体我々にとって何を表しているのか──の正体とは何か、そしてそれはなぜ生じるのか。この謎に、人生の様々なライフステージにおけるイベントを題材として迫る本。ベイズ統計学を専門とするケンブリッジ大学教授と数学に関する著書のあるジャ...続きを読むーナリストの共著である。彼らによれば、我々のリスク=確率をめぐる混乱とは、リスクが表明するドライな「数字」と、その出来事を経験することになる人々が紡ぐウェットな「物語」という、2つの全く異なるアスペクトが「確率」という概念の中に同居していることにあるという。本書の目指すのは、これら2つの側面を同時に扱いながらこの混乱を解きほぐして行こうというもの。その上で著者らは「人にとって確率は存在しない」と嘯く。一体どういうことなのか?

 本書で扱われるリスクイベントは幼児誘拐や交通事故、オーバードーズ、ベースジャンプや隕石衝突まで多岐に亘るが、これらを同一平面上で比較するのは直感的には殆ど不可能である。そこで各イベントのリスクを測るゲージとして導入されるのが「マイクロモート(MM)」「マイクロライフ(ML)」という単位であり、これが本書全般の中核をなす著者ら独自のアイディアとなっている。MMとは外因による急性リスクによる死亡確率100万分の1のことで、平均的イギリス人が1日に突発的な致死性イベントで死ぬ確率にほぼ等しい。たとえば1MMはサイクリング45kmで生ずる死亡率だが、鉄道で同じリスクを実現するには12,000kmを要する。MLはその慢性リスクバージョンであり、平均的イギリス成人の平均余命の1/100万を指し、時間にして概ね30分程度。タバコ1本の喫煙は0.5MLを消費、つまり統計上15分だけ余命が短くなる。ハンバーガー1個は1MLだ。こうして異なるリスクファクターの比較を行いながら、隠された人間の諸リスクに対する不合理な態度を炙り出してゆく。

 ・「顕現性」。子供の事故は比較的確率の低い事象だが、よりありふれた他の事象よりも大きな評価値が割り振られがちだ。その為子供の危険な遊びを必要以上に忌避してしまい、かえってリスクへの対処法を学ぶ機会を奪っているという。
 ・「確率」と「成り行き」。たとえば100万分の1という確率は、いざ我が身に起こってしまえばもはや固有の経験(成り行き)としての評価を受けるため、もはや意味をなさない。
・「バイアスのかかった同化」。新たな情報に接した場合、人々は各自の信条や直感に合う事実のみを取捨選択する為、元来の信条を強める結果となりがちである。リスク評価の一部は信条により行われ、リスクそのものに対する評価とは乖離する。ポリティカルグループごとに環境リスクに対する割引率は異なるのだ。
・「感情ヒューリスティック」。出産に関するリスクは、その後に得られる利益(子供の獲得)に対する期待が大きい場合、自分だけでなく他の誰にとっても小さいと見積もられる。
・「リスクホメオタシス(リスク補償)」。自動車装備の性能が上がりリスクが変動すると、リスク水準を以前と同じに保とうとしてかえってリスクテイクをするようになる。
・「エッジワーク」。高等で難易度の高いスキルを用いることで、過剰社会から逃避し自己決定性を取り戻そうとする心性。ベースジャンプ等のエクストリーム・スポーツの本来相当に高いリスクは、自ら選ぶという自己決定のステップを踏んでいる為、たとえば疫病や放射能などの逃れられない「不本意な」リスクに比べて過小評価される。いわば主観と客観のズレがスリルを増幅させている。
・「健常労働者効果」。炭鉱などの本来高リスクであるべき業種は、そもそも通常より頑健な成人により担われることが多い為、統計上リスクは低位に算出される。

 本書で扱われるトピックはまだまだあるが、通底するテーマはせめぎ合う「確率」と「物語」の間で翻弄される人間の姿だ。「確率」は時に冷徹に人間的感情を削ぎ落とすが、「物語」は逆に余計な不合理を増幅して判断を誤らせる。しかし著者らはさらに歩を進め、なんと確率の客観性を否定する。「あなたに〇〇が起こる確率△△%」とは、あなたと同じバックグラウンドの人100人がいた場合、△△人に〇〇が起こる」という意味であり、あなたの「習性」を客観的に直接描写するものではない。むしろ確率とは、特定の分野の特定の文脈において合理的に見積もられた「賭けオッズ」に過ぎないというのである。この数々のオッズにどのようなウエイトづけを行うかはあなた次第、というわけだ。いわば構成主義的に確率を捉えた考え方であり、MMやMLのアイディアよりもここが本書の最もオリジナリティの高い部分だと思う。

 全般的に、ストレートで簡潔な表現とは程遠いイギリス人特有のアイロニックな文体のため、少なからず読み辛さを感じたのが残念。これでもかと言わんばかりの物量の統計ネタの連打を、この文章で繰り出されては受け止めるのに骨が折れた。もう少し気軽に読みたかったのだが。

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