【感想・ネタバレ】日本人の哲学1 哲学者列伝のレビュー

あらすじ

日本の歴史はほとんどの時代で偉大な哲学者を有している。存在論、認識論、人生論の三位一体をめざす。狭義の哲学が無視してきた人生論に光を当てる。現代から古代へ、時代を逆順に進むスタイル。誰にでも理解でき、利用できる思考の具体例で構成。

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Posted by ブクログ

現代から古代へとさかのぼるかたちで、日本思想史のなかから著者の考える代表的な哲学者を選び出し、その思想について簡単な解説をおこなっている本です。

ただし中心になっているのは近世以降の思想史で、「戦後の哲学者たち」には、吉本隆明、小室直樹、丸山眞男、司馬遼太郎、山本七平が、「戦前の哲学者たち」には、石橋湛山、柳田國男、徳富蘇峰、三宅雪嶺、福沢諭吉が、「江戸後期の哲学者たち」には、佐藤一斎、山形蟠桃、富永仲基、石田梅岩が、「江戸前期の哲学者たち」には、荻生徂徠、新井白石、伊藤仁斎、鈴木正三がとりあげられています。

日本の戦後思想を領導した丸山眞男に対して厳しい批判をおこなった思想家の一人に、谷沢永一がいます。もっともわたくし自身は、谷沢に丸山と並ぶほどの思想的な膂力があったとは思えないのですが、その博識には敬意を表するにやぶさかではありません。ところで、東京大学で教鞭を取った丸山がアカデミズムに巨大な学統を築いたのに対し、谷沢の思想を引き継ぐような「祖述者」はほとんど見当たりません。一つには谷沢の狷介さが原因だったのかもしれませんが、論争のなかで自説を展開することの多かった谷沢に体系的な著述がなかったことも、原因の一つだったように思います。

著者は、そうした谷沢の数少ない思想的継承者の一人であり、本シリーズは谷沢から引き継いだ日本観に基づいて書かれた体系的な日本思想史といえるのではないでしょうか。そのような意味で、わたくし自身は著者や谷沢の立場に対してあまり賛同できないことが多いものの、興味深く読みました。

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2017年11月30日

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