あらすじ
欧米ビジネススクールで初めての日本人学長による
イノベーションのための戦略論
筆者の学問の専門領域はミクロ経済学の応用分野である産業組織論と国際経済学です。経済学の博士号を取得した後25年近くは、この領域を研究し、講義を担当してきました。1995年に欧州から米国に移ってからは、産業組織論とその理論的基礎をとする競争戦略論に領域を広げました。競争戦略はマイケル・ポーターが1980年に出版した著書Competitive Strategyにその端を発するといっても過言ではないでしょう。
筆者をデザイン思考に向かわせたのは、ドラッカースクールの講義での学生からの質問です。
「新しい事業機会は、どうやって見つけるのですか?」
講義で、イノベーションは大事だからイノベーションを起こしなさいとあなたはいつもいうけど、じゃあ実際、一体どうすればよいのですか、という本質とこちらの痛いところをついた質問です。「新しいアイデアを創出する現場」から直感的に学習しなければならないと思うようになりました。
そうした思いを抱えるようになって、ロサンゼルスのダウンタウンから20キロぐらい離れたパサデンという町にあるアートセンター・カレッジ・オブ・デザインを訪れ、「デザイン思考」に出会うことになりました。
デザイン思考、ピーター・ドラッカーのマネジメント、そして競争戦略。
この3つは、時と分野を隔てて構築されたものですが、そのそれぞれの本質を紡ぐと、糸になり、その糸を織ると普遍的な戦略モデルのキャンバスとなるのです。そして、3つの思考を組み合わせたキャンバスの上に、新しい世界観と意味を創り、それに基づいた目的とビジョンを達成するための戦略を構築していきます。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
確かに質の向上、新たな機能付与、色揃えの追加、、、同質商品を扱う競合とのレッドオーシャンにハマりながら苦しい事業運営となっている。
消費者を元気付ける、エンパワーメントで消費者と感動を共有出来る渾身の商品企画をもってブルーオーシャンへの道を切り開くしかない。
Posted by ブクログ
私自身、社会人になってかれこれ20年以上様々なビジネス書を読み続けている。(単なる趣味なだけ)
本書は、過去の経営学などで出てきた話の総合版のような位置づけだ。
この手の包括的な内容のものは、大抵中身が薄くなるものだが、本書の内容は濃かった。(と私には感じた)
当然私は経営学を本格的に勉強した訳ではないし、本書で挙げられた、シュンペーター、ドラッカー、マイケルポーター、デザイン思考、競争戦略、その他諸々を扱った書籍を隅から隅まで熟読した訳ではない。(ただし一通りは読んでいる)
勿論翻訳本(日本語)のため、原書を読んだ訳ではない。
日本語で読んでも、正直内容は難しく、意味を完璧に理解したとは言い難い状態だ。
しかし、本書を読んで腹落ち感がある。
一つのお題について深堀していくよりも、より実践的に考えてみたところに共感できたのかもしれない。
確かにデザイン思考を活用して、課題の本質を探るところから入るのは正しそうだ。
その課題を解決するためには、既存の技術なりサービスなりビジネスモデルを、新結合させる。これが、シュンペーターが語る、イノベーションだ。
そしてそのイノベーションから、ポーターの戦略論を使って攻め方を構築し、実行段階ではドラッカーのマネジメントを活かしてコントロールするという感じか。
本書のような「良いところ取り」は、実はありそうでなかった発想だと思う。
数々の名著をつまみ食いしたような感覚だが、一連のビジネスの流れで考えてみると、実に理に適ったやり方だと感じてしまう。
例え良いアイディアが浮かんだとしても、そこからビジネスを立ち上げて、さらに実行段階まで持っていくのは非常に難しい。
もし最新の素晴らしい技術を発明したとしても、それをどうやって活かせばよいのか。
ほんのちょっと既存技術と組み合わせてみたり、全く異なるジャンルのものと結合させてみたりすればいい。
そんな試行錯誤について、「イノベーションとは新結合である」という認識すら無ければ、そもそも実行されないだろう。
日本企業の過去の成功体験が、こういう点でもマイナスに働いてしまうと感じることがある。
枯れた技術であっても、今までのやり方だけに固執するのではなく、発想を変えて、ドンドン協業していけば、新たなイノベーションが生まれる気がするのだ。
そういう点でも、まずは意識から変革していくことが大切なのだろうと思う。
本書内では地政学の変化や、社会での認識の変化についても語られている。
地政学で言えば、これからはアジア・アフリカの時代という状況において、日本はどういうポジションを狙っていくのか。
これこそ国家戦略レベルの話であるが、イチ企業であってもサイズは異なるとは言え、考えていく必要性を感じている。
落ちぶれつつあるとは言え、まだ自分たちに残っている優位性を活かして、どういう戦略で攻めていくのか。
時代の変化、社会の変化で言えば、経済第一主義から、ESG・SDGsの流れなどが顕著かと思う。
今のZ世代は、昭和を生きた我々とは価値観が全く異なっている。
これは日本だけでなく、世界で見ても流れは同じであると思う。
特に東南アジア地域は、国によるとはいえ、ボリュームゾーンの年齢が若い傾向にある。
例えばフィリピンの平均年齢は、24〜25歳と言われているから、日本の平均年齢48〜49歳の約半分ということになる。
ここまで来ると、文化の違いだけでは片付けられない発想の違いを認識すべきだ。
これから益々グローバル化が進み、そういう意味でも地政学の考え方は、地図が塗り替わっていくと考えられる。
これからの未来を担う世界の若者たちは、一体何を求めているのか。
過去、日本企業は数々の優れた製品を生み出してきたが、今後これからの製品・サービスはすべてにおいて「意味」が問われてしまっている。
「なぜ、その製品・サービスが必要なのか」
企業がパーパス・ビジョンを掲げることと連動するが、今は「単なる優れた製品」というだけでは、なかなか購入に繋がらない。
単なる優れた製品であっても、他にもっと優れた製品が出てくれば、その瞬間に「相対的に優れれていない製品」の位置に追いやられてしまうからだ。
その後は価格競争に巻き込まれてしまい、薄利もしくは利益を度外視しても、在庫を売りさばくという消耗戦に巻き込まれるという、悪循環になってしまう。
どうやって戦わずして勝つか。
それこそが、「戦略の根幹」であることは間違いない。
企業が世界観(ビジョン)を示して、それに共感する応援者(サポーター)をどうやって創り上げていくかが、今後の企業に必要とされる能力だろうと思う。
「未来を予測するのではなく、顧客とともに創造していく」
経営者自身が意識を変えていく必要性を感じるが、そんな簡単な話ではない。
年齢が高い人ほど、利益至上主義という意識に凝り固まっている気がする。
もちろんノルマ達成は必要だし、そもそも利益が出なければ、ESGもSDGsも言ってられないのが現実だ。
だからこそこれからの経営の舵取りは、本当に複雑で難しいと感じている。
例えばこれからの未来は、経済的発展を遂げながらも、同時に脱炭素も実現しなければならない。
一つのことを深く学ぶことも重要だが、こうして「良いところ取り」を行うためには、それぞれの理論の使える部分をあぶり出し、まずはライトに実践して、試行錯誤を繰り返す姿勢が大事なのではないだろうか。
複雑な組み合わせであっても、小さくスタートすれば、軌道修正もやりやすい。
本書内で取り上げた、新結合、マネジメント、ブルーオーシャン戦略、デザイン思考、競争戦略は、まさに教科書。
基本に忠実に、教科書通りに実行してみるのは良いかもしれない。
ついつい日々の業務に忙殺されてしまうが、こうして立ち止まって考えることが大切だ。
少しずつでも小さく実行してみたいと思っている。
(2025/4/15火)
Posted by ブクログ
ドラッカーやデザイン思考への興味は引くが、著者の意図するところではあるが内容はわからない
ドラッカーやデザイン思考を知ってる前提で話がすすむため、置いていかれることが多い
企業事例には所々おもしろいところはある
アメリカで電気自動車への大きなベネフィットとしてガソリンスタンドに行かなくて良い、があるというのは今までにない観点だった
Posted by ブクログ
ピーター・F・ドラッカー経営大学院で学長を務めた山脇氏による戦略本。
こうやって色々とビジネス書を読んでいるにもかかわらず、
恥ずかしながら、あまり(というかほとんど)
ドラッカーの本を読んでことがない自分…。
「どこまで理解できるんだろう?」と思いながら、
読み進めましたが比較的分かりやすく書かれていて安心しました。
要はドラッカーの考え方を使って、アイデアの種を探し、
デザイン思考を使って顧客視点で考えて、
戦略思考で規模化を考えたり、具体的なアクションに落としていきましょう、
と結構当たり前のことを丁寧に説明してくれています。
「ドラッカー、ちょっと読んでみようかな」という
気にさせてくれるような本でした。
Posted by ブクログ
この本を読んで、わかったことは、良いものを安くではなく、その先にあるものや、成長できる戦略を考えて、実践してみること、そしてどんな付加価値が求められているか?ビールの事例などが多く紹介されていたが、世の中のサービスは、まだまだ多くの付加価値を付けられる可能性があると思った
Posted by ブクログ
戦略思考に関する本。
デザイン思考と旧来からの経営戦略論の融合、総体論のような本。
メモ
・ドラッカー曰く、ビジネスとは、顧客がある製品あるいはサービスを購入して充足する、その顧客にとってそれまで欠乏していたもので定義するべき。
・環境変化pest+environmentを観察する。すでに起きた変化を観察する。そして、将来に向けてのビジョンを構築する。
・観察された事象から洞察につなげる。どのような機会につながるのか。
・新しい意味を生まない技術革新よりも、意味を生む革新が望ましい。
・ある製品について過去から現在への技術と意味の変遷から未来を洞察する。