あらすじ
琵琶湖をのぞむ時価10億円の高台の土地売買をめぐるトラブルで、仲介の弁護士と不動産屋が殺害される。事件の蔭に暗躍する謎の女。法律を盾に、虚々実々の駆け引きに辣腕を揮いながら、甘い利権に群がる地面師。専門知識を活かして、民事裁判の実態をえぐる、法廷ミステリの傑作。江戸川乱歩賞受賞作。
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面白い
江戸川乱歩賞に外れなしというのは読書家の間では常識らしいですが、後に赤かぶ検事シリーズでベストセラー作家となった和久峻三氏のこの作品も読み応え充分でした。法廷ものと分類されるようですが、二転三転四転五転の筋に民法刑法知識が絡みつつ、ミステリーの要素もふりかけられていて飽きがきません。難点があるとすれば、タイトルの仮面法廷というのは単行本化に際して改題されたとのことでしたが、内容を言い当ててはいないように感じました。とはいえ、時代を感じさせるミステリーは現在の観点から読み直してみると、興味深い風俗小説でもあり、登場人物の言葉遣いや価値観は、ある意味歴史小説でもあるとの思いを新たにさせられました。また、意外だったのは小説の主な舞台が大阪だったことで、心斎橋や谷町四丁目などが出てきます。携帯やスマホはおろか、コピー機ファックスもない70年代にも厳然と暗躍していた地面師が引き起こす物語りは、澱みなくスムーズでわかりやすい語り口で魅了されました。