【感想・ネタバレ】改訂 桜は本当に美しいのかのレビュー

あらすじ

桜を美しいと感じるのは自然の情緒なのか、そのように刷り込まれただけではないのか。記紀や万葉集から最近の桜ソングまで、誰も触れえなかった問い=タブーに歌人が果敢に挑む。

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Posted by ブクログ

桜の季節は、なぜか心が浮き立つ。愛知県に生まれた私の桜観は、ソメイヨシノの桜だった。風情のあるサクラで、入学式に咲いていた記憶がある。なぜか、そんな時は雨が降っていた。

沖縄での寒緋桜を見て、ソメイヨシノとは違った趣があった。花ごと落下するのが、サクラらしくないと思った。そして、雲南の昆明の動物園で見た雲南桜は、沖縄に似た桜だった。中国から東京に戻って、上野公園や千鳥ヶ淵の桜に魅了された。また、金沢に何度も足を運んで、金沢城の桜は群れて咲いていた。美しい桜に初めて遭遇した感じがした。そして、福島県にきてみた桜は枝垂れ桜が多く、また山桜もある。枝垂れ桜は、ライトアップされるとその姿は全く違った雰囲気がある。日本の桜には、たくさんの表情があった。

桜と言っても、それぞれの土地に咲く桜の趣は違う。歌人による本書の『桜は美しいのか?』という問いかけは、梅から桜へ。そして桜が、万葉集、古今和歌集などの歌に詠まれ、さらには枕草子、源氏物語によって、桜の美しさが継承され、日本人の心の中に深く根づいている。
昼間に見た桜とライトアップされた桜は、昼と夜の世界を繋ぐ美しさだ。そして、風に舞う花びら、雨に撃たれて落ちる花びら、川に流される花びら、さまざまな美しいシーンを作り出す。

『桜が作った日本』佐藤俊樹(著)のレビューで書いた。
私は、桜が好きだ。坂口安吾の「桜の森の満開の下」の妖艶たる雰囲気は、「檸檬」よりまさる。桜の樹の下に死体が埋めてあることを想像しながら、桜の満開を見て、桜の花びらを散らす様を想像する。死体から生命が花開き散っていく。なぜか満開になると春の嵐がきて花びらを散らす。その様が美しい。美しいとは、満開ではなく、花吹雪になるときに、つかの間の美しさに目をみはる。

著者は、「桜が、いかなる幻想からも解き放れて原始の不逞な花を咲かせてくれることを望む」という。古今集から新古今集の国家による桜文化の創造から変容の流れを書いている。桜が負わされてきた役割とは?そして、桜は美しいアヘンだったのかと問う。
とりわけ、三島由紀夫と藤圭子の自死が、著者に衝撃を与えている。桜には、そういう屍体が、栄養となって、狂うように咲かせるのだと思う。

さくらソングの中で、西條八十原作の「貴様と俺とは同期のサクラ、同じ兵学校の庭に咲く 咲いた花なら散るのは覚悟 みごと散りましょ 国のため」「貴様と俺とは同期のサクラ、離れ離れにちろうとも花の都の靖国神社 花の梢に咲いて会おう」という、戦死を散華として美化し、靖国神社で英霊となって咲くことを讃えた。著者の父親は、陸軍士官学校出身の元職業軍人で戦争中は近衛師団として皇居にいたという戦争を経験した家族だった。「花は桜木 人は武士」だった過去の記憶がある。そして、いきものがかりは「花はサクラ 君は美し」で、「花はかおり君はうるわし 水面に浮かぶ 光がおどる 風が騒ぎ 街は色めく 僕の心は 春に戸惑う」と心にサクラが漂っている。

宇多田ヒカルの「桜流し」は、「あなたなしで生きてる私を もう二度と会えないなんて信じられない 開いたばかりの花が散るのを どんなに怖くたって目を逸らさないよ 全ての終わりに愛があるなら」と、サクラへの想いと母親の愛が繋がっている。桜の中に、精霊を見ている。

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2026年04月12日

Posted by ブクログ

「はっきりしないピンクの大きな綿菓子のようなかたまりの、いったいどこがいいんだろう。春の花なら、椿や牡丹や薔薇のほうがずっときれいなのに、と私は思っていた。」(p.12)に我が意を得たりと嬉しくなって読み始めたら、思っていたより真面目な桜を巡る思想または想念を辿る歴史エッセイだった。
歌人は過去の歌やその作者のことを、歴史も含めてよく研究するものなんだな。

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2023年01月03日

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