【感想・ネタバレ】紳士と淑女のコロシアム 「競技ダンス」へようこそのレビュー

あらすじ

正装はパンツの上からスクール水着? どんなに激しく踊っても髪を揺らしてはいけません? 究極の笑顔の破壊力とは? 脇の下の筋肉を鍛えてライバルを優雅に蹴散らし、光速スピンで肉体の限界を軽やかに超える。競技ダンスは闘技場で繰り広げられる究極の格闘技だ。キレキレに踊れる小説家が、大学時代を捧げきった異世界にご案内。

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Posted by ブクログ

今年のベストになりそうな作品。『最後の秘境 東京藝大』が好きだったので読んでみたが、それ以上の内容だった。小説とはいえ、かなりのところ実体験を反映しているのではないかと思わせる(大学名などは全て実在のままだし)。

大学サークルを自分たちで運営していくことの意味を考えさせられた。一年生はお客さんとして入り、その世界にどっぷりつかりながら、徐々に運営側に回っていく。

このお話の中で一番核になっているのは、「固定」という踊るパートナーの固定の組み合わせを、二つ上の学年の先輩が決めていく仕組みなのだが、女性の割合が多い競技ダンスの世界では、どうしても相手のいない女子が出てきてしまいがちだ。相手がいなければ、ダンスの大会にも出られないわけで、この「固定」をどう決めるのかが、とても重要になる。上級生としては、できるだけみなに納得して欲しいと思って必死で考えて決定するわけだけれど、下級生の側では誰かがどうしても不満に感じてしまうことになる。

この小説は、新入部員の主人公ワンタローがこの競技ダンス部で徐々に成長する姿と、卒業から10年ほど経て作家になった彼が、この小説を書くために当時のことを振り返って、関係者にインタビューをして回る、という内容が交互に並べられて構成されている。

はじめから、この部活が最終的にとっても苦しい内容になったことが書かれているので、どのあたりが苦しかったのだろうということを想像しながら読むことになる。一年生のうちはとても充実して楽しそうなので、これがどうしてそうなってしまうのかなあと考えさせられる。
だけれど、振り返りの作業が終わった時、ワンタローにとってそのつらかった日々の意味も大きく変わっていて、読後感はとても熱い。まだ受け身だった一、二年生の日々に関するどんでん返しもあって、「ああそういうことだったのかあ」という納得感もある。

最高の体験だった。でも二宮さん、他の作品の多くはホラーみたいなんだよなあ。次何読もう。

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2024年09月16日

Posted by ブクログ

 勉強ばかりして、やっと入った学校の入学式でめちゃくちゃ勧誘されて、いい気持ちになって、酒飲まされて、褒められまくって、体験させられ、褒められまくって、突然厳しくされて、突き放されて、でも、優しくされて、プチ達成感みたいの感じさせられて、って行ったことないけど、自己啓発セミナーってこんな感じかな?
 巻末の作者紹介が、ALL 一橋大学体育会競技ダンス部卒になっていましたが、自分も授業は寝てばかりで、人生に必要なことは全て部活で教わったばりに思っていました。
 アイデンティティが部活と一体化してしまい、試合に勝てたら死んでもいいわくらいに、のめり込む始末。ホントに卒業という区切りが合って良かった。

そんな気持ちを代弁してくれる良作です。

 

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2021年07月25日

Posted by ブクログ

東京芸大に関するルポ小説をお書きになった二宮敦人さんのお作。学生競技ダンスについての1冊だ。

身内に競技ダンスの選手がいる。踊りが好きで好きで、バレエにシアターダンス、ジャズ、様々経験して、幼い頃からの踊る生活の後、学連から競技ダンスを始め、ここに書かれている、悲喜こもごもを味わい尽くして、卒部後、アマ戦に進み、現役で踊っている。

身内は一橋大ではないが、学連の競技ダンスというのは、そこに携わる選手の方たち、全部が大きな『競技ダンス選手部』とでも言いたいような、連帯があるように見える。ここに書かれていることは、誇張ではない。勉強や仕事があるにも関わらず、皆さん4時間、7時間、と練習する。睡眠を削り、毎日ウェイトをチェックし、技術を学んで、他のやるべきこともやって、なおかつ踊る。

軟弱なんて、イチャイチャなんてとんでもない。いかに激しい運動量か。互いに泣いて笑って、信じてぶつかって、感謝して。美しい本番に向けて、ひたすらに踊る。
悩んだ時の相談役だった私は、濃密なこの世界の様を、身内を通してずっと見てきた。

「悩みも、苦しいのも、色々嬉しいのも、時期が違ってもよく分かる。他大も自大も関係ない。卒部の時の幸福感と、それでもダンスが好き、ここで踊って来て良かったって思うのは同じなんだよ。」とのこと。そうだろうと思う。

固定カップル制度のことも、勝てた勝てないも、その正否いかんより、その中で打ち込んで悩んで、輝く様が、尊く思え、卒部の時期が全く違う二宮さんの心にも、それは残っているのだろうと思った。芸術スポーツ、あるいはアートとしての舞踊は、どんなものでも、どこか日本では、失笑と共に軽く見られている。でも、もしそうなら、なんで学連の方たちが寝る間も惜しんで、しのぎを削るものか。プロ・アマ共に、こんなにも幅広い年齢の表現者・競技者がいようものか。

興味を持った方が、競技を見たり、実際に踊ったりなさったら、どんな感想を持たれるだろう。チョロくないことに、驚かれるだろうか。

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2021年04月30日

Posted by ブクログ

「部の運営でも、試合の勝ち負けでも、出口が見えない。悪夢のような現実を抜け出して、別の場所に行きたい。残りの日数を指折り数えるなんて、思ってもいなかった。」
10年後、当時の仲間たちを巡る旅に出て、挫折感と後悔の念と共に押し入れの奥にしまい込んだ四年間がよみがえり、やがて昇華する。

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2020年10月28日

Posted by ブクログ

「競技ダンス」といえば『Shall we ダンス?』や『ボールルームへようこそ』を思い浮かべるけれど、「学生競技ダンス」ということで始終友人のF氏を連想しっぱなしだった。大学時代、こんなふうに部活を頑張ってきたのかなと。「2人で」作り上げる点や、「競技」であり順位が付くという点は異なるけれど、大学オケにも通じるところが多々あって、どうしたって自分の大学時代の記憶と重ねて読んでしまった。一つ飛ばしで親子関係の代になるとかあるよなあ。それでも競技ダンスは、順位が付く点以外にも、自分の不足やミスは唯一パートナーに向かってしまうとか、固定とシャドーに分かれてしまうとかがあって、流石につらそうだ。オケにはオケで別の苦しさが(もちろん楽しさも)あるけれど、オケで良かったよと思った次第。本書にも出てきたけれど、そう言えば、母校のD大の競技ダンス部は強いと学内でも有名だったことを思い出した。HPで最近の戦歴を見たら今でも強いみたい。その昔、オケの合奏をやっていた大集会室で、別の時間帯に、本作のような青春が繰り広げられていたかもしれないと思いを馳せた。

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2020年06月16日

Posted by ブクログ

筆者の出身、一橋大学の競技ダンス部の経験を基にした小説。ひたすら部活に打ち込みそして悩む姿、現在と過去の交錯した構成は感動の嵐。

ノンフィクションではなく小説とのことだが、おそらく多くは実体験に基づいていると思われる作品。

きっと誰もが心のどこかに抱えているだろう過去に対するほろ苦い思い。封印していた過去。10年以上が過ぎ、ようやく立ち向かう筆者。過去と現在の両方で主人公が成長していくストーリー。

もしかしたら自分がワンタローだったかもしれないと思いつつ、感情移入して終始楽しく読むことができた。「最後の秘境東京藝大」のような楽しいひたすら楽しい展開を想像するも予想外に哀しいストーリーにハラハラドキドキ、最後まで読めないスジが見事でした。

ダンスに限らず人生で一度でも何かにひたすら打ち込んだ経験のある人は幸せだと思う。

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2020年05月03日

Posted by ブクログ

読みすすめるとダンスがとても身近に感じられて、ストーリーにのめり込んでしまった。今になって振り返ると戻りたいような戻りたくないような青春の1ページ。

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2021年06月18日

Posted by ブクログ

「最後の秘境 東京藝大」の著者が振り返る自らの大学生活。一橋大学競技ダンス部での狂乱の四年を回顧する。技術的なことや、パートナーを固定で決められてしまうこと、大会の悲喜交交などが熱い。

知らないことが多く、面白く読んだ。監督やコーチのいる運動部とは違って上級生が後輩を指導する。高校生は、野球部やサッカー部がどんな風かは想像できるだろうし、チャラチャラ系のスポーツサークルまた同じ。しかしかなり真剣にやってる文化系サークルのことはなかなか分からないだろう。大学生活のことを知りたい人にとってもオススメ。

しかし濃厚な熱さに胸焼けしそうにもなる所もある。読んでも、ダンスをやりたいとは微塵も思わせないのはスゴイ。楽しそうというよりむしろ苦行のように感じた。

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2020年07月01日

Posted by ブクログ

競技ダンスを初めて約10カ月、教室の仲間から借りたのだが、丁度良い時期に読めたと思う。

学連に入りそこなった身としては、入りたかったような、入らなくて良かったような……。フツーに面白かった。

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2025年04月11日

Posted by ブクログ

私はこれまで一度も体育会系の部活に入ったことがないので、出来ないことを教師やコーチではなく先輩に叱られるとか、先輩の言うことは絶対とか、人生を捧げる勢いで部のため!という空気がよくわからなかった。
やりたいことをそれぞれ行い、その集まりが部だと思っていたが、そうではないようでその熱量に呆気に取られる

だが読んでいくと、先輩たちがなぜ厳しかったのか、なぜ部のために尽くせるのかが、少しだけわかった気がした。
それでも、自分やパートナーと向き合いひたすら練習するのはともかく、誰にも選ばれないという地獄のようなシャドーになる恐怖や、部のために成績を残すプレッシャーには耐えられそうにない。
真剣に取り組みすぎて、みんなが罪悪感を持っているのもしんどすぎる。

もし人生をやり直すことになっても、残念ながら部活動として社交ダンスは私にはできないと思った。
ダンス自体は楽しそうなので、趣味で習うくらいが楽しいのだろうな。

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2021年03月23日

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