あらすじ
現代の語り部が贈る、幻想ホラー超大作。直木賞&本屋大賞ダブル受賞の著者の会心の作品。
建築学部に通う大学生の平口捷は、姉と二人暮らしの平凡な生活を送っていた。そんな彼の前に若き天才美術家・烏山響一が同級生として現れる。カリスマ的な雰囲気があり取り巻きが絶えないが、なぜか響一の方から捷に近づいてくる。そして、届いた招待状。訪れた熊野の山奥には、密かに作られた野外美術館が……。奇怪な芸術作品は、見る者を悪夢に引きずり込む。幻想ホラー大作。(解説 皆川博子)
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Posted by ブクログ
大学生でありながら、世界的な天才美術家烏山響一。
彼に惹かれながら怖れる捷(さとし)と律子。
突然姿を消してしまった婚約者・黒瀬淳(あつし)を捜す婚約者の夏海と大学時代の友人である和繁。
ふたつの人間関係が、熊野で一つになる。
地元の名家・烏山家の持つ個人的な野外ミュージアムを舞台に、おぞましいほどのイメージの奔流が、読む手を止めることを阻む。
どういうこと?
なんでこんな目に合わなきゃならないの?
とにかく烏山響一が恐ろしい。
出てくるだけで不穏な気配に圧倒される。
多くの人は彼のまとう負のオーラに気づかない。
気付く者こそが、彼に招待されるのだ。
そして芸術家を多数生み出す烏山家の謎。
昔からの名家でありながら、広大な敷地を高い塀で囲った中にある烏山家。
何かある…はず。
恩田陸の作品に多々あるとおり、最後の落としどころがするっといきすぎて物足りないけれど、捷が、律子が、取り込まれそうになるところまでは手に汗握って読みました。
鍵を握る人物は最初からわかっていたので、いつ姿を現わすのか、どう現わすのかと思っていただけに、ああ、そうきてしまったのね…という感じ。
結果として私は「至上の愛」ってトラウマになりそうだけど、それは間違った読み方であることに自覚もある。
ただ、香織の婚約者の洞察力の根拠と、橘のその後(助かったの?)を知りたいです。
Posted by ブクログ
いやあ、面白かったです。
1992年デビューの恩田氏の2004年の作品。ちょっと古めですが、恩田氏得意のモダンホラー系の作品です。
あれ?表紙ってあの、羽生結弦選手!?って思ったけど全く違った。俳優の高杉真宙さんでした。これだからオッサンは嫌ですよね。
・・・
本作、主役らしい主役というのが居ません。
しいて言えば、都内建築学部に通う捷、そして造形アーティストとして駆け出しの律子、ベンチャー企業経営兼大学院生の和繁、あたりか。
対して、人の心に入ることのできる(人に容易に感応できる)悪玉的アーティスト烏山響一がもう一方の中心人物。
上記の3名の人物やその係累が、響一に影響され、あるいは直接的に、或いは間接的に、彼の実家の和歌山県は熊野のふもとの実家にしつらえた私設インスタレーションへと導かれていく。
そこで待ち構えていた「あれ」とは…
・・・
やはり本作、響一のキャラの魅力が一番印象的です。
芸術家家系に生まれ、20代そこそこでアーティストとして成功。それが何故か遅れて大学生になる不可解さ。
更に現役大学生として手掛けたPV(コンピレーションアルバム?)が大ヒット。しかし、そのPVにはサブリミナル的な「何か」が見えたり見えなかったりと噂され…。
彼は人の心を読んだり、あるいは、彼の「感応力」「共振性」により相手の忘れたい記憶を呼び覚ましたりすることが出来るという設定。非常に悪魔的な雰囲気。
聞けば実家はそもそも田舎の旧家で、アーティストをよく支援しているという。先祖も多くはアーティストと結婚するも、そのアーティストはことごとく亡くなるという。
そうした血筋や格式の上に成立している響一こそが本作の魅力であると思います。
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加えてですが、響一の実家が和歌山の山奥の熊野というのが、これまた良いではないですか!
熊野というと、役小角などが修験道を究め、結果超自然的な力を備えたという神聖な場所、というイメージです。
そこに佇む旧家のお屋敷、その山奥で何やらしめ縄でまつられる「それ」。
これは絶対何か人間じゃない超越的な存在がいるやつです。
で実際色々起こるわけですが笑
・・・
ということで恩田作品でした。
因みに結論は実はあっけない感じ?でした笑 ハッピーエンドです。展開が小気味良く、500ページ超の大部な作品ながらサクサク読むことができました。
モダンホラー、超能力等の話が好きな方にはおすすめできる作品です。
Posted by ブクログ
途中から後半臨場感溢れるシーンに緊張や恐怖が強まり一気に読み進めた。でもこれはどう終わりを迎えるんだろう?え?まさか幻想とかじゃないよね?あれ?
香織が出てきたところからあっという間に収束。何も無かったかのように…
んー、な気持ちで読み終えた
Posted by ブクログ
烏山響一と黒瀬淳の二人が焦点となる話。
イメージ映像合戦でエンドゲームを思い出した。
失踪した黒瀬淳を追う話はサスペンスで引き込まれるし、烏山響一のほうの捷と律子は何が起きるのかというワクワクで面白かった。
特に何億何十億と巨大な資産を投じた山の中の美術館のシーンは面白かった。ゲストハウスのカラクリはきっと地震体験の家のようなものなんだろうな。
記者の橘とその弟、首無し死体についてはよくわからない。弟が首無し死体になったのか?橘がそうなるには時系列的に合わないし。
作者自ら〈バリバリ邪悪路線の男〉と言われた烏山響一については、その評価に笑うが、自分はあまり邪悪さを感じなかった。置き去りにするし負のエネルギー蓄えようとするし無償の愛を信じてないし理解できないけど、彼の描写について薄くて、あんまりなあっていう印象。
黒瀬についてもそう。
夏海さんがガラリと態度を変えたというか、あれ演技なのかよ!っていうのがショック。絶対後付けでしょ。態度を変えられてよくわからなかった。
最後は姉のおかげで助かるけど、姉よくたどりついたな。『ロミオとロミオは永遠に』並みにすごくない?
あんましこの作品のオチは…って言われてたので覚悟してたけど、夢オチのような、終わり方で笑った。ホラー映画のような…まあそれに近いしな。
またあのインスタレーションを味わいたくなったら読むと思う。