【感想・ネタバレ】クーデターの技術のレビュー

あらすじ

19世紀から20世紀にかけての欧州の事例を、ルポルタージュの手法も用いながら解析した本書は、原著刊行から百年近く経つ現時点においても、さまざまに研究されており、また、現実政治の動きを見るなかでつねに参照される名著である。いかに国家権力を奪取し、またいかにそれを防御するかについて歴史的分析を行うとともに、引き起こす人間の人物論や心理状態の描写も豊富に含んだ、まさに古典中の古典といえるこの著作について、現代的観点から全貌を新訳した中公選書版にもとづき、註釈を増やしてより理解しやすくした文庫版がここに登場。

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Posted by ブクログ

こうも続けざまに権力掌握の話を読んでいると、カンタンに体制を変えられるようなそんな気がしてしまう。
こうして僕は毎日が革命前夜のような気がして、いつでも情勢を見誤ってしまう。

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2019年09月30日

Posted by ブクログ

 「クーデター」と聞くと、時の政権に不満を持つ者が(とりわけ軍部)、武力行使して政権を掌握するというイメージがある。確かに物理的な力で政府を打倒するのが基本的なパターンであるが、一方で別の手法で政府を乗っ取るパターンもある。本書では、近代以降に発生したヨーロッパ諸国のクーデターを紹介する。
 先ほど物理的な力以外のクーデターが存在することに言及したが、それは国家の既存のインフラ(鉄道や通信手段など)を掌握するという手法であり、その典型がレーニンによる社会主義政権の樹立である。著者によると、ボリシェヴィキによるクーデターは、トロツキーの戦略のおかげで成功したと指摘する。また臨時政府の首相ケレンスキーが、警察によってのみ、国家を防衛することができなかった点にも注目する。このように、既存のインフラをうまく利用して達成できる場合もある。
 また巻末の解説によると、本書の優れたところは、『クーデターの技術』が刊行された当時、すなわちイデオロギーが強かった1930年において、イデオロギーとテクニックを分けて分析する手法だという。この手法のおかげで、現代人がこの本を読んでも、クーデターや独裁者のあり方に関して考えさせられる。

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2024年06月02日

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