【感想・ネタバレ】出生前診断の現場から 専門医が考える「命の選択」のレビュー

あらすじ

「胎児の異常がわかったら、あなたはどうする?」晩婚化にともない出産の高齢化が進む中、「出生前診断」を希望する妊婦が増えている。流産リスクがある羊水検査とは異なり、採血だけでダウン症等の染色体異常がわかる「新型出生前診断」(NIPT)が二〇一三年に開始されたが、そもそもNIPTとはどういう検査で、妊婦は何を判断し結果に備えればよいのか。そして医療テクノロジーの最前線はどうなっているのか。出生前診断の「現場」に長年関わり最先端研究者でもある著者が、出生前診断を受けるかどうか迷う妊婦に正しい情報を伝え、同時に「命の選択」の本質を考える。大宅壮一ノンフィクション賞『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』著者、河合香織氏推薦! 【目次より】○いわゆる「高齢妊娠」について ○上の子が染色体疾患の病気だったとき ○超音波検査で異常を指摘されたとき ○検査の原理と精度 ○遺伝カウンセリングとはなにか ○リスクの客観的評価 ○産む・産まないという選択と検査を受けないという選択 ○出生前診断の倫理的問題 ○胎児遺伝子診断の現在と未来

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Posted by ブクログ

こちらの本は、専門家の医師の立場から、出生前診断の現在とその課題について述べている。出生前診断は急速に進歩しており、新型のNIPTは母親の血液を10㏄ほど採取するだけで、胎児がダウン症かどうかをほぼ確実に判定できる。そして、高齢出産が増え障害児を産むリスクが高まる中で、NIPTを希望する患者が急増しているという。しかし、十分な理解がないまま受診すると、もし陽性判定が出た場合に悩み苦しむことになる。そのために入念な事前のカウンセリングが必要なこと、あらかじめ十分な知識を得て、さらに陽性と判定された場合どうするかを決めたうえで受診する必要があることを伝える。晩婚化が進む今、ますます重要になってくる指摘である。

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2024年09月26日

Posted by ブクログ

出生前診断の詳しい内容やそれをめぐる議論、歴史を学べる。心が苦しくなるリアルな中絶話や人生の選択について倫理的哲学的な話が参考になった。特にラストの著者の言葉は心に刺さる。これを読んだらさらに判断を迷わされるが、後悔のない決断をするためにもとても意味のある問いかけをしてくれる本。

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2025年07月31日

Posted by ブクログ

新型出生前診断NIPTが2013年に日本でも開始されたが、この検査はどういう検査でどういうものをもたらすかということを産婦人科医の立場から書いた本。
「安楽死が合法の国で起きていること」を読んで、いわゆる「すべり坂」が、出生前診断の現場でどのように起こっているかを知りたかったのだが、その点について詳しく書かれているものではなく、むしろ出生前診断を今から受けようとする人たちへのアドバイスのようなものがどちらかと言うと詳しく書かれている。
NIPTも問題点として挙げられるのは、3つの染色体の病気21トリソミー(ダウン症)、18トリソミーと13トリソミーの3つしか判定できないこと、陽性となると侵襲的な確定検査である羊水検査が必要となること、高額であると言う事であるが、筆者は羊水検査以外は解決が可能だという。確かにこれから、検査できる染色体異常はもっと増えるだろうし、費用も検査実施施設が増加すると下がっていくだろう。何より、遺伝子検査が主流になると、もっと確実な検査が安価で受けられるだろう。

問題は、優生思想の観点からそれでよいのか、ということだ。

現在、NIPTの感度は陽性的中率が35歳で80% .40歳で90%以上と推定されている。そして、陽性の場合ほとんどが中絶を選ぶ。母親の選択(プロチョイス)が優先される。
プロチョイスか、プロライフか、の二択で考えると、無論プロチョイスを否定しない。むしろ尊重したい。アメリカのいくつかの州で中絶が禁止されているのを苦々しく思う。しかし、人工中絶と出生前診断は全く違うものだ。この二つを同時に語るのは危険だと思う。

出生前診断は、筆者も終章で触れているように、「パーフェクトベビー」を求める「エンハンスメント」の商業的利用につながるだろうし、「複数の世代にわたる、自由で平等な人格相互の対等な関係を崩していに、平等という概念すら失わせることになってしまう」だろう。

それは、「人間の品種改良」であり、やはり優生思想に必ずや繋がるだろう。

「安楽死」にせよ、「出生前診断」にせよ、人の命にダイレクトに関わる選択は、民間任せでなく、慎重すぎるくらいのカウンセリングと、法整備と罰則規定がなくてはならないなと思う。

この本で紹介されたシモーナ・スパラコの「誰も知らない私たちのこと」の一節
人工死産を選択した主人公の呟き
「最後の小さな一蹴り。(中略)ついうっかりしたような、小さめの一蹴り。その後は何もない。」

まだ子を抱くことをしていない「母になる前の人間」は、障害があるからという理由で簡単に中絶してしまうだろう。想像もつかないものね。どれだけ自分が親となって子どもを愛するか、など。
重い障害を持つ子の親としては、この子を産む前に検査しなくて良かったと心から思う。

「プロライフ」か、「プロチョイス」か、の二択、まあ、そういう、是が非か、の問題ではないということだ。
リアリティはやはりグレーゾーンにある。

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2024年06月30日

Posted by ブクログ

分かりやすくて読みやすかったけど、人工妊娠中絶後の患者の心理状態に対する、「わたしたち産科医療従事者がかならず真正面から向き合って理解してあげなければならない現実」という表現は…。理解しなければならない、では駄目だったのかな。

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2022年07月17日

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