あらすじ
冷戦後のアメリカ政府の一極覇権戦略は破綻した。日本周囲の三独裁国(中国・ロシア・北朝鮮)は核ミサイルを増産し、インド、イラン、サウジアラビア、トルコが勢力を拡大している。歴史上、多極構造の世界を安定させるため、諸国はバランス・オブ・パワーの維持に努めてきた。19世紀後半の欧州外交を支配したビスマルク、俊英外相タレーラン、哲人政治家ドゴール。聡明な頭脳とパワーをもち合わせた三賢人が実践した「リアリズム外交」は、国際政治学で最も賢明な戦略論であり、日本が冷酷な世界を生き抜く鍵となる。
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Posted by ブクログ
ヨーロッパ近代の稀代の外交家についていきいきと描くとともに、戦後の日本外交に足りない勢力均衡に対する視点、また国家、国民として不足している責任感、長年の間に培われてしまった国家的依存体質について考えさせられた。
本当にこのままでは、一部の政治家に日本を売られてしまう。隷属国になってしまう。冷静な語り口だからこそ、そのような危機感を強く持てる良書。
Posted by ブクログ
とにかく面白くて一気に読ませる。エンターテイメントとしても一級だが、それだけではない。
3人の外交戦略を知ることで、著者が信奉しているバランス・オブ・パワー外交、リアリズム外交とは何かを学ぶ最高の教科書になっている。
さらにはビスマルクの足跡を辿ることで、20世紀が経験した二つの悲劇的な世界大戦がどのようなプロセスで起きたのかを、概略的に理解することができる。
新書でこれだけのことを成し遂げる著者の力量に舌を巻いた。
Posted by ブクログ
外交に関する3人の賢人から過去の国際政治における外交戦略を学ぶことができる、とても勉強になる本であった。
バランスオブパワー外交は、勢力を均衡に維持するために必要である、特に、世界は国際的に共通の司法がない無政府機関である状態であること、価値観や宗教がバラバラであることから、いかにそれをコントロールするかが大事である。歴史から、どのようにそのための外交戦略を考えられるかが国の存命に関わるものであり、好き嫌いやその国独自の基準で考えられるものでもない。ビスマルクもタレーランもドゴールもやり方は異なれど、あるべき世界外交については共通している考え方であったと振り返る。3人の生い立ちからどのような考え方を持ち外交を実施していったのかの人物背景、歴史、外交の考え方、多くの要素を学べる良本だと感じた。
その他
外交上戦争は必要ではあるが、戦勝国となり領土をさらに拡大していくことが良いということでもなく、戦争による国益がないと見るや、非戦主義を貫いたビスマルクの偉大さについては印象的である。
Posted by ブクログ
勢力均衡が無秩序な世界の中でどれだけ重要か、3人の政治家の振る舞いから考察していく本。そこから、戦後日本の米国のみへ迎合する姿勢に対して痛烈に批判している。
国連だとか多国間の枠組みだとか、戦後は勢力均衡に変わる枠組みで紛争解決を図ろうとする努力がなされているが、最近のロシアを見ると昔から何も変わっていなかったんだなとつくづく思う。環境問題やコロナなんかも勢力均衡の上での解決しかできないのだろうか、などと悲観してしまう。
Posted by ブクログ
ビスマルクを勉強する上で、他の外交の偉人との比較として手に取った。
著者が政治アナリストというのもあり、かなり著者自身の思想が入っていた。特に日本の外交批判に結びつける内容が多かった。個人的には、率直な三人の外交の偉人についてのファクトや比較が欲しかったので、正直著者の思想はノイズだし、バイアスだった。そういうのは要らないけど、ただ、こういうふうに結びつけて考える人がいるんだな、という認識を得られたという意味では勉強になった。
あと、タレーランとド・ゴールについて知識がなかったので、概要を知れてよかった。ただ、もっとフラットに書かれた本を読まないと、バイアスが強くていかんなあと感じた。