あらすじ
高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった――。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。
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Posted by ブクログ
自分には慣れていない詩のような綺麗な文章だったので読むのにはとても時間がかかったが、最後には涙しました。
永田はこうなってしまった結論として「俺に才能がないから」と表していたのが印象に残った。二人が離れる以外の結末はなかったのかと考えても永田の成功がなければ同じ結果になっていた可能性が高いので、この考えは責任逃れにも思えるが、的を得ているのだと感じる。
Posted by ブクログ
最後の最後に永田が沙希の部屋で演劇のセリフとしながら自分の思ってることを素直に全部吐き出すシーンを泣きながら読んだ。
永田の今までの沙希に対する態度は正直最悪で、沙希に甘えてるにしてもこの態度は無いでしょと思いながら読んでたのに、最後は涙が止まらなかった。
永田の弱さもわかるし、お互いすごく好きだったんだよなぁという思いも込み上げてくるし、でもあれは酷かったという気持ちもあってぐちゃぐちゃなのに、最後の「ばぁぁぁ」でフッと笑ってしまった。
やっぱり又吉さんの書く文章は好きだ。
Posted by ブクログ
初めは永田は又吉さんの脳内に近いのかと思っていたが、そうではないのかもしれない。『火花』の主人公の方が又吉さんに近くて、永田は又吉さんの考える劇作家、つまり又吉さんの一歩その先や又吉さんの脳内の芸術家的な要素の部分を取り出した存在なのかもしれない。 あとがきで触れられるまで忘れていたが「まぶたは薄い皮膚でしかないはずなのに、風景が透けて見えたことはまだない。」という書き出しがいかにも永田らしい。永田はこういう語り出しがないと自分のことなど語ることはできないだろう。 前半は永田の変人的な部分が描写されていて、だんだんそれがクズさにつながっていき、沙希との別れの雰囲気が出た後は、なんとか沙希に対して正直になり始めることができるという感じになっている。前半〜中盤はなかなか読むのがしんどいと感じた。別れの雰囲気は辛かった。最後は多少のカタルシスを感じた。セリフと畳み掛けて感動を呼ぶのは又吉さんの得意な手法なのだろう。おそらく又吉さん自身が頭で色々考えるたちで感情が乗った時や何か心の深いところにあることを言いたいときはそうなるのだとも思える。 この物語の後は沙希は地元で就職するのだろうが、永田はどうなるのだろう。二人の関係は?個人的には沙希がしきりに謝っていたことからも別れるのだと思う。沙希は東京から離れるとともに永田からも離れるのだろう。永田は劇を作りそうだ。『まだ死んでないよ』の劇を見た後のカウンターもできていないから、きっと東京での恋愛を描いた劇を作るのだろう。つまりこの小説は永田の劇の内容なのかもしれない。そう考えると語り出しも納得がいく。永田のことだから最後のアドリブでセリフという部分は本当にアドリブでさせそうだ。 又吉さんの書く恋愛が好き。不器用でお互いや環境が変化をしていく。二人が変わらなくても環境が変わっていくのでうまくいかなくなる。そして二人が変わるところにはカタルシスを感じる。不器用さと簡単には変われない人間味に閉塞感を感じる。
Posted by ブクログ
いろんな感情を引き出してくれる一冊だった。
読み進める中で人の心の中は結局わからないものだと改めて感じた。
綺麗な感情だけではなく、リアルでしんどい部分まで描かれていて読んでいて何度も心が揺さぶられた。
「変化への抵抗と現状への違和感。私は変わっていくのに」
どうして人は、失ってからその大切さに気づくのだろう。一度壊れてしまったものは戻らないのにという切なさも強く感じた。
最後まで現実と想いのズレが胸に残る作品だった。
Posted by ブクログ
〜1周目〜
2026.07.31
演劇と女と男の話。
演劇というものに魅せられて、縛られて、自分の感情を2人の感情を蔑ろにしてしまったという話。
最後の方に出てくる1人語りがとてつもなく寂しく感じる。
Posted by ブクログ
永田がクズすぎて感情移入出来ないなとも思ったけど、永田から見た初期の沙希の魅力的なものが物語が進んでいくにつれてだんだん見れなくなってきて、最後のシーンに感じた喪失感で結局は永田に感情移入していたんだなと思った。
Posted by ブクログ
主人公・永田
「クズ」という言葉で括るのはもったいないくらい、人間臭さの詰まった人物だった。
彼の中のあまりに強い自意識と自己顕示欲が、いわゆる世間の感覚を持った私たち(読者)とのズレを生んでいる。誰しもに内在する自意識や自己顕示欲を、私たちは必死に抑え込んで生きている。それをしようとしない永田に対して、嫌悪感を抱いて「共感できなかった」と多くの人が言うけれど、実は「共感したくない」だけ。「感情移入できない」のではなくて、永田の目線に「立ちたくない」だけなのだと思った。気づかないうちに同族嫌悪してしまうほど、純粋な人間だった。
永田に足りなかったのは、狂気さ、もしくは、実績。それがあればもっと愛されるキャラクターになっていたと思う。
個人的には紗希にこそ共感できなかった。