【感想・ネタバレ】劇場(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった――。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

大抵の人は永田を嫌うだろうし、実際作中でも永田は嫌われている。ただ、なぜ嫌うのかと言うと、大人が捨ててきた子供っぽさを、永田は大事に抱き抱えつつ、大人でも子供でもない空間に浮かんでいるからなんじゃなかろうか。

徹底的に自他をいじめ抜くからこそ、そのクリティカルさは生まれている。のにも関わらず、そいつは毎日自分の元に帰ってくる。何も言わなくなるのに、そばにいる。その愛嬌がどうしようもなく魅力的にうつるのかもしれない。



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2025年09月09日

Posted by ブクログ

もともとyonigeというバンドが好きで、
その中でも沙希という曲が1番好きで。

この本から影響を受けて書いた曲だと知ったにも関わらず読んだことがなかったので、
今更ながら読んでみた。

終盤、気が付いたら涙が止まらなくなっていた。
最後の描写は実際の場面を見たかのように強く映像として残っていて、2人のこの時間に終わりが来ることを認めたくなくて、しばらく最後のページをずっと眺めていた。

永田のプライド、コンプレックス、それが人との関わりにおいて邪魔をしてしまうシーンは、
ここまでの表出さえしなくとも自分自身の中にもある感情、あった感情な気がして、読み進めるのを躊躇いそうになる瞬間もあった。

永田と沙希が歩み続けた日々が、二人にとって尊い瞬間であったことが救いに感じる。
それが逆に沙希を苦しめてしまったのかもしれないけれど。

私がこれからyonigeの沙希を聴いて
永田と沙希の日々を思い出すように、
彼らも、これからの日々で互いを思い出す時
切ないながらも今を色濃く生きる糧になりますように。

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2025年05月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

哀しいけど永田側の人間だと自覚しているし、ちゃんと生きにくいし、演劇もやってたし、わかる、わかるよ〜の連続だった。劇場、映画の方がおすすめだけど原作も良い。

変わらなかった君は何も悪くないんだよって最後の最後まで甘やかしてしまうのも沙希過ぎるし、修復不可能なことに後から気付いて、気付いても最後まで期待を捨てきれず演劇に当てはめて都合がいいように持っていこうとするのが永田過ぎる。

私は大好きな作品、映画も小説も定期的に読みたくなるだろうな〜!

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2025年02月02日

Posted by ブクログ

2人の間に起こった出来事は、決して劇的なものではない。むしろありふれた話で、だからこそ自分の経験とリンクして胸が締め付けられる思いだった。

『火花』が良すぎてなかなか読めていなかったのだけど(?)、もっと早く読んでおけばよかったと後悔。

「乱暴に言う自分の言葉で興奮しているようだった」
「涙を感動の物差しとして誰かに示すことを恥と思ういやらしさ」
「(沙希には)夢のある暮らしに対する期待があった。それを目の当たりにしてしまったことがつらかった」
「僕の場合、与えるということは「欲求」であって「優しさ」なんかではないのかもしれない。こんなことを考えている時点で下品だなと思う。」
「芸術というものは、何の成果も得ていない誰かが中途半端な存在を正当化するための隠れ蓑なのではなく、選ばれた者にだけ与えられる特権のようなものだという残酷な認識を植えつけられた。」
又吉さんの文章を読んでいると、自分の中にある卑屈な人間性やコンプレックスが刺激される。あのセリフやあの描写、普段見て見ぬふりしている自分の嫌なところを見せつけられてるみたいで自己嫌悪に陥る。

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2025年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ダメ男に引っかかった女がダメ男に尽くして結局別れて。さきは次はいい男捕まえて、幸せになるんだろうな〜という感想だけど、心理描写にグッときたので星4です!あのなんとなく過ごしている、何かを見ている、ぽやーっと考えている時の人の心の動きを的確に言語化されてるのすごすぎます…!

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

葛藤と純粋の物語。一人称内向きの心内をよく書き込んでいるので読む側もそこまでか?いやそう考えるよな〜とか心揺らされた。そんな風に思うのは男だけかな?

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

初又吉本
元々好きなタイプの喋りをする人だなとyoutubeとか見てて思ってたけど、彼の書く物語もちゃんと好きだった

一文一文が長いし、描写が緻密すぎて最初50ページくらいはいまいちだったけど、そっから気持ち持ってかれた
何度か物語としては盛り上がりではない一文に心痛めて泣いた

永田は普通に現実で会ったら一蹴してしまうゴミ男だけど、永田を産み出した又吉はとても優しいなと思った。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

主人公が本当にろくでもない人間のような気がした。又吉の人間も同じようなテーマで自分に才能がないって気づきながらそれを見ようとせず生きてるみたいな?類似性が感じられたけど。
私はやっぱり又吉の言葉遣いが好きだなと思った。
普通の人が1行でいうことを3行くらいの複雑な表現をする、感じがもっと知りたい、とかそんな気持ちになる。言葉が豊かだなと思う。
恋愛って本当にこんな感じなんだろうか?
もう一度読みたい。

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2025年09月07日

Posted by ブクログ

単行本207ページって短め?って思ったけど、そうとは思えないくらい内容が濃い。
永田がクズ過ぎて、正直感情移入が難しくかなりイライラも、した、けど、
ラストスパートでこの本の印象が一気に変わった。
結局のところ、沙希も変だし永田はもっと変という印象。でも、最後の「2人の関係性がこれ以上どうしようもなかった感」がとても切なく、泣きそうになった。

純文学は多分初めてだった。難しくて、読み返したことも多々あったけど、又吉先生のその表現方法の巧みさに唸りました!

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2025年08月15日

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ネタバレ

序盤の主人公とんでもなく尖ってたが、年月が経つにつれてだんだん丸くなっていったように感じた。
それはもちろん歳を重ねて落ち着いたからでもあるだろうけど、沙希ちゃんの影響もかなりあったんじゃないかと思って、心がじんわりした。

ふたりはきっともうどうしようもないんだと伝わってきて悲しかった。永田がふざけたり明るい調子で話すほど、余計に切なくなった。

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2025年08月02日

Posted by ブクログ

永田の悲観的で周りを認めたくなくムキになってしまい周りの人を傷つけては後悔する、良くないとわっていても彼女に寄りかかり理想を生きようとする、どこか理解できるような出来ないような。

最後の演劇の台本を2人で読んでいるシーンは演劇の中という設定だからこそ本当のことが言えるようでとても切なく感じた。

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2025年07月26日

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永田のどうしようもなさに嫌気がさすけど、そのどうしようもなさは、形は違えど自分の中にもあるから同族嫌悪的に嫌な気持ちになる気がする。人と支え合うことは大事だけど片方が一方的に寄りかかると壊れる。

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2025年05月27日

Posted by ブクログ

4.0/5.0

語り手の主人公にとって、「演劇」と「彼女」の二つの存在が自分の柱になっていて、それぞれに対する欲求、喜び、不満等をそれぞれで補い合っているような構図が印象的だった。
恋愛小説とも言えると思うけど、軟派な印象になっていないのは著者の繊細な文章表現によるものだと感じた。
あと、性的な描写をわざとらしいくらい、一切排除してるのは意図的なんですかね?

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2025年03月25日

Posted by ブクログ

読むのが苦しい。

難しくて読みづらいとかそういうことではなくて、読み進めるほどに心が締めつけられるような、息がしづらくなるような。


評価されない、評価されないどころか、攻撃される。精神的にも肉体的にも。

永田は自分のほぼ全てである演劇において、沙希はほぼ全てである恋愛において。

最初は二人で同じ方向を向いて歩いていたのになぁ。永田の行動はまるでストーカーのごとく怪しかったけど。
沙希の部屋に異物である永田が持ってきたブロックが増える度に二人の歩く角度が少しずつ開いて行ったかのよう。沙希の心に何かが染みを作るように。

沙希の純粋さに耐えきれなくなった永田が何かを持ってきて部屋を乱したかったのかな。まるで心にちょっと墨でも垂らすように。
そんな事を上手く表現できないもどかしさを感じた。

やっと二人が離れる前に、最後の最後は二人は壁を背にして同じ方向を向けたのにね。
しっかり壁に背をつければ角度が開くことも無く同じ方向に進めたのに。
同じ方向を向いても東京と青森に離れていては横を向いても姿は見えないね。

うん、必死に生きる若者だった。
切ない作品だった

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2024年12月30日

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火花、人間をこれまで読んできて、又吉作品の3冊目となりました

又吉さんの人間の本性を捉える文章力に魅了され、気づいたら又吉作品を立て続けに読んでました。

今回の作品では、一番大切な人が側にいてくれるのを当たり前だと思わずに、日々を大切に過ごしていこうと思わされました。

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2024年12月17日

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「沙希の声はラジオのなかから聞こえてくるようだった」主人公と沙希がもう届かないところにいるということが感じ取れてしまってグッとくる表現だった。

主人公と沙希の出会いから別れの訪れまでを結構リアルに表現していて、2人の不思議で特殊な出会いと対比されているように感じた。気のせいかもしれないけど。終わりが切ない。和解はしたけどもう戻せない関係という感じがして、胸がきゅっーっとなる。

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2024年10月19日

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永くんが面倒臭い人間すぎてとてもイライラしました!!!!沙希ちゃん壊れちゃったじゃん。
この2人はなんだかかわいいね。
この小説に出てくる人間たちは又吉さんの創作物だけど、世の中には本当に永田みたいに思考の海で泳いでる人もいるのでしょうかね。生きるの苦しそうだな。
火花に比べると、読むのにかなり時間がかかりました。又吉さんが他にどんな文章を書くのか知りたいので、明日また次の本をゲットしてこようと思います。

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2024年10月15日

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ネタバレ

永田がどうしようもなくクズで沙希ちゃん
早く逃げてって!思いながら読んでたけど実際離れそうになるとすごく切ない気持ちになってしまった なんなんだろうこの感情は‥
最後は復縁してほしかった 切ない

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2024年10月09日

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永田の人とは違う特別でありたいって想い強すぎ。
沙希の永田が言うことは何でも受け入れるのが理解出来なかった。
上京して何となく都会に馴染んできてる自分に違和感を覚えて、そんなとき永田ってゆー異質な者に出会ったことで彼の特異さに惹かれたのかな、、
永田が沙希を笑わせようするくだりは漫才を見てる感じで面白かった!

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2024年09月24日

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芥川賞受賞作『火花』に続く又吉直樹の小説。売れない劇作家の男・永田と、女優を志し上京してきた女・紗希が恋に落ちる話。映画が面白かったのですぐに原作も買って読んだ。

又吉の作品は『火花』しか読んだことがなかったのだけど、今回は特に又吉節が効いている気がした。感情に従順な人間を恐怖の対象として見ていた主人公こそが、最も自分の感情に従順だったという落語のようなオチで、これぞお笑い芸人の作品だなぁ〜と涙腺をグリグリされながらも笑みがこぼれおちた。

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2024年09月19日

Posted by ブクログ

サキちゃんがなんで永田じゃなきゃ駄目だったのかよく分からない。永田が演劇に生きる姿が好きだったのか、自分にないものをもっているところが好きだったのか、理由は特になくただ一緒にいることが好きだったのか。

永田は本当にろくでもない奴でサキちゃんの親を悪く言ったところはサキちゃんが可哀想でこんな奴早く別れればいいのにと思っていた。
最後までなんで別れないんだろうって思った。ああなる前に永田に自分の存在の偉大さを解らせてやるべきだったと思う、でも何故それができなかったかというとそれもまた永田のせいで、性格上聞き入れることなくまた自分のせいにされるのを恐れていたのだと思う。

最後の永田が劇のセリフで想い出を語るところは自分も経験したかのように頭に描写が浮かんだ。2人の想い出に一つ一つ区切りをつけることが悲しく泣いてしまった。絶対泣かないと思ってたのに。

最後だけ優しくなったって無駄だよ永田、最初からずっと優しく大事にしてあげればよかったのにね
と永田本人に言いたくなった。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

理想と現実のギャップを正当化したいわけではないが、何か理由をつけなければならないように感じる焦燥感とそれゆえの行動、それを見守ってくれる人の優しさにまた偽を塗り込めて真実が閉ざされるような閉塞感。劇に魅入られたが故に適当に生きられない不器用な物語。

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2025年02月23日

Posted by ブクログ

なぜそうしてしまうのかわかっていてもついやってしまう言動。心が痛くなる。なぜなら自分もしてしまうかもしれない、もはやしてしまってるのかもしれないと考えてしまった。

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2025年01月02日

Posted by ブクログ

映画でいうと今泉力哉監督っぽさを感じる。まさに下北沢や高円寺を舞台にした恋愛小説らしい。
主人公のイタイタシイ性格も呼んでいて楽しかった。

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2024年12月02日

Posted by ブクログ

クスって笑えるところが多くて、さすが芸人が書いた本やなって思った。
永田みたいな思考は世の中に結構思ってるより居て、意外と平気で自分の思考のまま生きてますって雰囲気は漂わせてるつもりかもせんけど、周りも救ってくれへんし、そんな自分に嫌気が差して自分ですらも救われへん気がする。沙希ちゃんを狂わせた理由も、最終的には自分って分かってたけど、まだ認めてないんじゃないかな、セリフに乗せて伝える所に引っかかってしまった。

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2024年12月02日

Posted by ブクログ

火花と似てた。不器用な男が東京で揉まれる話。
話自体は面白いけど、登場人物の魅力でいうと火花の神谷には及ばないので星三つ。

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2024年11月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初の主人公が歩くシーンはダラダラと難しい言葉も並んで純文学ぽくしんどかったが、最後彼女を必死に引き留めようと長々と必死に今後やりたいこととか語って説得しようとする主人公が人間らしくて良かった

又吉さんは劇も造詣があるのだな

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2024年10月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 火花を読んでから友人にこれも良いよと勧められ読みました。風景や心情に書かれている事が多く、表現も火花と似たようなものが多くありました。しかし、主人公の気持ちになるのではなく、第三者として「なんだこいつ」と思いながら読んでしまったので、後半はこんな人間にはなりたくないと思いながら読んでいました。
 見る視点で意見が分かれる作品です。

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2024年08月24日

Posted by ブクログ

夢を追って挫折をした人なら、突き刺さる小説でした。
嫉妬、努力をしないための言い訳、依存する、近くにいる人に八つ当たりをする。
感情移入するほど辛くなりました

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2024年08月01日

Posted by ブクログ

永田はクズではなく、不器用で、生きるのがヘタで、でも愛は深い人物なんだって思った。
沙季ちゃんには言えないし、してあげられない優しさは永田の中に愛として確かにあって、でもそれがどうにも価値観とか経済的なこととか、社会が邪魔をして上手く伝えられない。
「どうして幸せになれないんだろう」って、永田の言葉が印象的。どうやってもこの社会では、「何かを得るものは何かを捨てなきゃならない」から彼らは彼らだけで幸せになれないんだって考えさせられた。
それから、演劇って夢があるなと....

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2025年02月14日

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