【感想・ネタバレ】長い時間をかけた人間の経験のレビュー

あらすじ

圧倒的事実の<生と死>――8月9日に、すでに壊された<私>。死と共存する<私>は、古希を目前にして遍路の旅に出る。<私>の半生とは、いったい何であったのか……。生の意味を問う表題作のほか、1945年7月、世界最初の核実験が行われた場所・ニューメキシコ州トリニティ。グランド・ゼロの地点に立ち《人間の原点》を見た著者の苦渋に満ちた想いを刻す「トリニティからトリニティへ」を併録。野間文芸賞受賞作品。
◎林京子――私は立ちすくんだ。地平線まで見渡せる荒野には風もない。風にそよぐ草もない。虫の音もない静まった荒野は自然でありながら、これほど不自然に硬直した自然はなかった。荒野は、原子爆弾の閃光をあびた日以来、沈黙し、君臨していたガラガラ蛇の生さえ受けつけなかった。大地は病んでいたのである。<「著者から読者へ」より>

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Posted by ブクログ

ネタバレ

表題作と、併録された「トリニティからトリニティへ」を両作とも読むことで、作者の思考する「長い時間をかけた人間の経験」が、眼前に広げられる。
後年、トリニティの爆心地に立ち、8月9日に流れなかった涙が流れたという場面は、思いを致すに余りある。再読したい。

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2016年06月05日

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