【感想・ネタバレ】性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困のレビュー

あらすじ

「彼女たちは、なぜ、その仕事をやめられないのか?」経済的困窮におかれたシングルマザーの中で、デリヘルなどの性風俗店で働く人たちが増えている。首都圏に比べて賃金も低い、働き口も少ない、行政の公的サービスも十分でないという地方都市において、「性風俗シングルマザー」はどのように仕事と育児をこなし、貧困から脱出しようともがいているのか? 地方都市で困難な状況に直面する彼女たちと社会福祉をつなげようと、性風俗店での無料法律相談を実施する著者が、現場の声を丹念に拾いつつ、単なるルポの枠を超えて、具体的な問題解決策まで提案する。【主な内容】・子供たちがひしめきあう託児所 ・風俗で働いていることを隠して結婚 ・子育て支援の充実した隣町に引っ越し ・高時給の仕事を探し、いつの間にかデリヘルに ・離婚できない「隠れシングルマザー」 ・接客中に保育園から電話がかかってくる ・スマホで分娩の方法を調べて自宅出産 ・「最悪の客」に指名される ・最初の仕事で性暴力被害に ・足りないのは「夫」でも「お金」でもない ・財政難の地方都市が貧困の連鎖を断つためには

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読み進めていると辛さを感じる一方で、取り上げられている方々の前向きさに驚かされる。もちろん、筆者が現場を回る中で聞き取った情報のうち、公開が可能だと思われるものだけをいれているのだろう。

本書を読んでいて気づくのは、やはり貧困は連鎖するということだろう。本書に取り上げられている多くの例では、シングルマザーを選択する女性は、やはりシングルマザーの家庭で育っていると記されている。今回は「親」である女性たちに焦点を当てているため出てこないが、この親たちに育てられた子供達も、やはり多くが中卒で学歴を終えてしまい、同じような人生を歩まざるをえないのかもしれない。

こういった問題を読むたびに、自分だったら何ができるだろうという気持ちと、自分の家族だけは守らなければならないという両方の気持ちが湧き出てくる。本書の筆者やNGO運営をされている方々はうまく両立されているのだろうけれども、残念ながらその両立がうまくいかない家族もたくさんある。うちもその「うまくいかない方」に含まれるだろう。

本書の最後は、多くの人が"呪い"に囚われているという言葉が出てくる。機能不全の家族に育った身としては、確かそういった"呪い"は存在する。一方で、そういった地縁や血縁を全て捨て去り、呪いから逃げ出したとしても、それはマイナスをゼロにしただけで、戦い続ける人生からは逃れられない。呪いを捨て去った先に救いがないと、弱い人はよりつらい環境に落ち込んでしまうだけなのだろう。

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2020年03月15日

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