あらすじ
誤解だらけの「リーダー」と「リーダーシップ」を解き明かす
「リーダー」にふさわしい資質とは何か──。部下を持つ人なら、一度は考えたことがある問いだろう。
だが、そう簡単に答えは出ない。例えば、リーダーにふさわしいと思われている資質と、実際にリーダーとして大成功した人の資質はあまり一致しない。
ウォルト・ディズニーは専制的かつ、執拗なまでの完璧主義で周囲を振り回したからこそ、類いまれな創造性を発揮できた。一般に「良い」資質、「悪い」資質と呼ばれるものは、単独ではなく混ざり合って効果を発揮するものだ。
リーダーシップは状況(場所、時代、体制、フォロワー、運など)に大きく依存し、常に左右される。たとえある時代の英雄と同じ資質を持っていても、時代が違えば成功するとは限らない。つまり、リーダーシップの理解のために、過去の成功者や偉人の資質をリストアップするのは、ほとんど意味がないということだ。
こうした誤解だらけの「リーダーシップ」と「リーダー」を丁寧に解き明かし、「リーダーシップの再定義」を試みたのが本書だ。著者のスタンリー・マクリスタルは米国陸軍大将(退役)で、かつてアフガニスタンで司令官として多国籍軍を率いた。自身がリーダーを経験して、「リーダー論として座学で学んだことと、現実に大きな乖離がある」と感じたことが本書の執筆動機になった。13人の歴史的リーダーを題材に、リーダーシップの本質に迫る。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
元米軍司令官のマクリスタルが描くリーダー像。
軍人だけに指示命令型のリーダーシップの進化系みたいな話かと思うと、そうではない。
プルタルコスの英雄伝ふうに、リーダーを2人づつ比べながら、リーダーシップについて探求をしていく。その最初は(なぜか一人しかでてこない)、南軍のリー将軍。負けた側の将軍なのだが、リーダーとしては、アメリカの軍関係では尊敬され続けていたようなのだが、イラクで戦っていたマクリスタルは、そのリーダーとしてのあり方に疑問を抱き始める。
そういう問題意識をベースに、いろいろな人が取り上げられて、こう言う資質や行動がリーダーにとって必要みたいな法則はないということを示していく。
そこまでであれば、従来のリーダーシップ論における条件適合理論と一緒じゃないかと思うのだが、読み進めると、マクリスタル将軍はそこで止まらすコンテキストとか、関係性、象徴作用の重要性というところに着地する。
一見、条件適合理論と似ているようにも思えるのだが、条件適合理論では、条件によってリーダーとして必要な「行動」が違うという行動主義(条件→行動)の範疇にいるのと比較すると、その違いは明らかである。
つまり、個人主義、行動主義的なリーダーシップ論から、関係性、言語・認知、つまりナラティヴ・アプローチに近接しているわけだ。
マクリスタル恐るべし、だな〜。
そして、もっとも過酷で、VUCAな状況のなか機能する、生き残ったリーダーシップ論が、しばしば「理論的すぎる」と批判されるナラティヴ・アプローチに近づいているというのはとても興味深いことだ。