あらすじ
「8050問題」とは、80代の親が50代のひきこもりの子を抱えている家庭、そしてそこから派生する問題を指す。1990年代後半から顕在化してきた若者のひきこもり問題が、解決せぬまま長期化。親が高齢者になるとともに当事者が中高年に達し、今、深刻な社会問題として浮上してきている。本書では「8050問題」の根源には「家族の機能不全」があると捉え、当事者や家族、支援者に密着取材。その現状や心理をリアルに描写する。彼らはどこでつまずき、何によって光を見出したのか。その格闘の姿を伝える、希望と救いのノンフィクション。<山田ルイ53世さん(漫才師「髭男爵」、6年間ひきこもり)激賞!>本書で描かれるのは、7つの家族の物語。皆一様に、「普通」から滑落した人々だ。そこからの再生、「ルネッサンス」の物語でもあるが、その歩みはあまりに弱々しく、輝かしいものではない。しかし、長い間「社会と関係ない人間」だった筆者には、痛いほどわかる。踏み出した一歩の偉大さも、それが半ば奇跡だということも。彼らを知れば、「8050問題」はすべての家族に起こりえるリアルな「将来」の1つであり、にもかかわらず差し伸べられる手の少なさに愕然とする。かつて「当事者」だったことを盾にとり、不謹慎な物言いをお許しいただこう。本書は「面白い読み物」。絶妙な距離感で取材対象と接し続けた著者が、丁寧かつ情熱的に書き上げた一冊……「ひきこもって」一息に読み終えることをお勧めする。(本書オビに掲載の言葉)
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Posted by ブクログ
林真理子さんの「小説8050」を読んで、じゃ実際はどうなのか…と、この作品を手にしました。「8050問題」とは、80代の親が50代のひきこもりの子を抱えている家庭から派生する問題のことです。
それぞれの家庭には、父や母の抑圧、家庭内暴力、無関心、共依存、教育及び心理的虐待、過干渉などの問題があり、その上、外部に対して閉じてしまう傾向にあった…。親が働けている時とはまた異なり、病気や介護の問題、年金の問題も…読んでいてひたすら苦しかったです。
でも支援者は、「安心してひきこもれる社会」が大事だと説きます。支援のゴールは「自分が生きたいようにいきること」…ひきこもりの状況を無理に矯正するのではなく、医師の中村哲さんの言葉をかりて「今、何ができるかではなく、今、何をしなければならないかを知ることが大切なのだ」と…。
長い経過があって家庭内の確執もあって、即効性のある支援に必ずしもつながるわけではないし、まだ表に出ていない「8050問題」を抱えている予備軍的な家庭もあったりします。まずは、気付ける私になれればと思っています。
Posted by ブクログ
2019年3月に内閣府が発表した調査結果では、15〜39歳の引きこもりが54万1,000人、40〜64歳が61万3,000人いるという。65歳以上の調査報告はないが、間違いなく何万人といるのだろう。愛着なく、又は異常な愛着の元で育てられた人間の末路である。
この100万人を越える人たちを一人でも救うすべはあるのだろうか?
Posted by ブクログ
80歳台の親と引きこもりの50歳台のこども。地域から孤立し、社会から忘れられた隠花植物のような生活。
貧困の中で共に老い、やがては精神的に朽ちてゆく。
その中で、奪われた人生を取り戻し、「自分自身」を回復するために孤独で壮絶な闘いを闘うこどもたちがいる。すべて、とは言えないまでも、引きこもりの根っこにあるのは歪んだ家族関係だ。言わば親子という底無し沼。「家庭内の問題」であるがゆえに、社会から隠し、あるいは隠され、支援の手は届きにくい。もしくは当事者である家族から拒否される。あまりにも深刻で悲惨な実態に私は何ができるのだろう。引きこもりからは遠い人生を過ごしてきた自らを省みるとき、深い虚無感に襲われる。しかし、これは過去の問題ではなく、私たちの「家族」が抱えるかもしれない未来の問題なのだ。
Posted by ブクログ
本書に登場する7つの事例をもって、8050問題の全てを包括しているわけでは無い、100の事例があれば全て違った問題を抱えている、というスタンスは評価できる。
しかしながら、7つの事例に関しても表層をなぞっているだけという印象はまぬがれない。それだけ家族の問題というのは奥深く、他者の介入を許さないということもできる。
この手の本では「居場所」づくりなることが盛んに言われる。確かにそれで救われる人も少なくないのだろうが、「徹頭徹尾人とは関わりたくない」人へのアプローチをどうするべきなのか、就労をゴールとするこれまでの支援に意を唱えたのは良いが、やはり他者との交わりを最終ゴールに据えている点ではこれまでと変わりないのではないかと感じてしまった。
Posted by ブクログ
ここ数年、よく聞くようになった8050問題。しかし、報道では歪んだ情報として挙がることも多く、問題の本質が分かりにくいけど、これを読んで少しでも理解できたような気がする。きちんとした情報として、もっと知られるべきと思う反面、世に広まれば広まるほど当事者たちは益々社会に姿を現しにくくなるのかなとも思い、この問題に関わらず、情報の発信の仕方って簡単なことじゃないなと思った。
Posted by ブクログ
8050問題の中には、中高年の引きこもりが、親が亡くなった後も、親の年金を頼りとしていることから、死体を放置する問題があると思うが、その話題は今の所、書かれていない。
引きこもりの人に精神的な病気があることが多いかもしれないが、何か違和感がある。
満員電車に耐えられなくて仕事を辞めたなどの話が出てくるが、それって単なる怠けではないのか。
なかなか理解しづらい。
Posted by ブクログ
7つの家族の再生の物語との副題.読み終わって,必ず再生したかどうかはこれからの課題だろうとは思った.彼らは今の現状を家族の関係性に置いているが,それを改善したからと言って根本的な解決にはならないだろう.とにかく当事者にとっては気の毒だ.