あらすじ
カラフルで楽しい、絵入り身辺エッセイ集。
パリの小さな広場に出ている花売りのマダムが、あまりにきれいだったので、広場の端からスケッチをした。マダムはそれと気づいたが、少しも嫌な顔をせず、婉然たる微笑を送ってよこした──。幼いときから絵を描くことが好きだった池波正太郎が、「うまく描けたかしらん」と、はにかみながら発表した、絵と小文。
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Posted by ブクログ
著者による絵入りの身辺エッセイ集。池波正太郎が時代小説作家で昔気質の人
だから現代人でだらしない生活をしているおれにとっては耳の痛いことが書かれて
あったりする。それで読むのが嫌になるどころか気持ちがリラックスしてくるのが
不思議なもんである。叱られるのが判ってるのにお話が面白いからついつい会いに
行ってしまう頑固親父みたいな人ですね、池波先生は。京都や男の和服について
語っているページにフランスの風景や人物の絵が挿入されているのに雰囲気が
壊れておらず、とてもお洒落な本になっていると思います。道端で拾った畳針を
ずーっと大切に道具として使っていたという話が印象深い。この畳針から鍼医者で
殺し屋という裏の顔持つ「仕掛人・梅安」が生まれたのかも知れない。実際にその
畳針を見てみたいものですな。チップのことを日本語で「心づけ」と言うのもこの
本で初めて知った。同じ意味でも「心づけ」だと味わいがあっていいなあ。後半の
「絵日記」では一昔前の日本の風景、著者が海外旅行で出会った光景や人物などが
大胆な色彩で表現されていて素敵。収録された絵が全てカラーなのが良いですな。