あらすじ
「嫌いな親」を介護できるか? 暴力、暴言、過干渉、きょうだい差別……自分を傷つけた親が老いたとき、あなたの人生はどうなるのか──。
児童虐待やDV、パワハラなど、身体的・精神的な暴力への関心が高まっている。親子関係においても、幼少期に親から身体的・精神的暴力を受けてきた人は少なくない。そうした「毒親」の問題が近年、テレビや新聞でも指摘されるようになっている。
子どもが成人して独立すれば、そうした「毒親」から逃れることもできるが、その親に介護が必要になったとき、子どもは再び親と向き合わなくてはならなくなる。親への責任感の一方で、積年の憎しみや嫌悪は簡単にはぬぐいきれない。
様々な葛藤を抱えながら介護をすることになっても、「毒親」はそう簡単には変わらない。老いてますます尊大、横暴になったり、経済的にも子どもに依存し、子どもの生活を破壊しかねない親もいる。
本書は、「毒親」との関係に悩む人たちの生々しい声を紹介し、その実態や心の内に迫る。介護の経済的負担や認知症への対処、介護をする側の夫婦間、兄弟間の考え方の違いから生じるトラブルなど、「毒親介護」の様々な事例をルポする。
また、専門家によるアドバイスや具体的な対応策なども探り、「毒親介護」の中に希望を見出すための処方箋も提示する。
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Posted by ブクログ
毒親を介護している当事者のリアルを忠実に表しながら、心理状態や構造を明確にしている作品。
特に毒親(加害者)が実は前の世代においては被害者であるのが興味深い。
被虐待経験が加虐に転じるのは、
・体罰に対して肯定的
実際に体罰によってしつけられているため、自分がいざ子育てする際しつけるには体罰が必要であると考えてしまう。
・常に思考パターンが被害認知
幼少から被虐に生きたことで、大人になって子育てする側に回っても、「子どもから被害を受ける(生意気に口答えして親をバカにしている、泣いて親を意のままにしようとするなんてずる賢い)」というように認知が被害的に偏ってしまう。
・自分の欲求を満たすことへの執着
幼少に得られなかった、愛や欲を満たすことに対して執着的。子どもがいようが恋愛に依存的であったり、お金を無心してギャンブルにはまりこんだり。理性よりも欲が優先される。
このような要素によって毒親が形成され、それが老いと混ざって子どもを苦める。
なんたる負の連鎖。
毒親への理解のひとつに“コーホート”があり、確かに当然といえば当然なんだが忘れがちの考え方。
親には親の“世代的背景”がある。もっと虐待が虐待として扱われなかった時代背景、精神疾患が精神疾患として扱われなかった時代背景。
親のコーホートが、今とは大きくズレている事実は確かに冷静に思考する必要がありそうだ。
後半はより“介護”的な話であり、
認知症の法則を念頭にいれて介護を進めるといいとされる。
・記憶の欠落が起こりうる
・症状は身近な人にほど強く出る
・自分に不利なことは事実として認識できない(または認識しても“本能的”に隠す)
・まだらに症状が出る
・行動記憶が消えてもその時抱いた感情だけ消えずにいる
・こだわりが生じると頑なになる
・介護者が強く反応するとより強く反応する
・2〜3倍のスピードで老化する
Posted by ブクログ
・ものすごく重い介護の話が詰まっている本。
・ただ、単に悲惨な話を並べるだけではなくて、綿密な取材に基づく知見がたくさん書いてある。なぜこうなったのか(当人と社会の状況)、これからの日本の高齢化社会はどうなるのか、どう対処するべきなのか、とか。
・自分はまだ親の介護が始まっていないけれど、自分の行く末を目の当たりにしているようで肝が冷えた。少しでも実家との関係性を改善しないと...。
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毒親であるという事も一つのキーワードではあるのだが、中身は基本的に介護の話という印象。
一番驚いたのはあとがきにかかれていた著者自身の体験だった。
Posted by ブクログ
こんな目を引くタイトルあるか?
『歴史の本棚』の紹介から興味を持って読む。
こんな読んでて辛い本ある?
本書の2/3ほどを占める、親にいじめられた幼少期、介護する立場になってもワガママな老いた親に苦しめられ続けるエピソードは読んでいられず、胸糞悪さ全開である。
「一度くらい感謝の言葉がほしい」という気持ちで隘路に陥る。
最後に解決策編が少しだけあり、全体の暗澹たる内容に一筋の光を差すが、まだまだいやな後味が残る。
認知症の話のはずが、対人関係一般にも使えそうな法則があったのでメモしておく。
【認知症の九大法則】
1記憶障害に関する法則
→現在から過去にかけて忘れる
2症状の出現強度に関する法則
→より身近な人に強く出る
3自己有利の法則
→自分にとって不利なことを認めない
4まだら症状の法則
5感情残像の法則
→言ったり聞いたりした記憶はすぐ忘れるが、そのとき抱いた感情だけは残存する
6こだわりの法則
7作用・反作用の法則
→介護者が強く対応すると、強い反応が返ってくる
8認知症の了解可能性に関する法則
→老年期の知的機能低下から、すべての認知症の症状が理解、説明できる
9衰弱の進行に関する法則
→認知症の人の老化の進行は早く、介護する期間はそう長くない
【激しい言動を理解するための三原則】
1本人の記憶になければ本人にとって事実ではない
2本人の思ったことは本人にとっては絶対的な事実である
3認知症が進行してもプライドがある
Posted by ブクログ
いろいろな例を知ることができたし、毒親介護に取り組む際のアドバイスも役立ちそうで、よかった。
第4章以降が興味深かった。
P191
健康的なあきらめについて。
「親との関係性を突き詰めて考えるのではなく、いい意味での、健康的なあきらめも大事です。親はもうおいている、今さら仕方ない、そんなふうにできる範囲で受容してみると、また違った向き合い方もできるはずです。」
P201
「毒親」と向き合う子ども側に苦悩があることは当然だが、一方で親の「老い」に関しては客観的な視点も必要だろう。親の問題のすべてを「毒」だと片づけるのではなく、心身の不調や加齢がもたらす問題と捉えることがあってもいいはずだ。」
そして最後の最後、著者自身の介護経験が語られるが、これがすごい。二世帯住居で暮らす義母の施設入居が決まった直後に夫と離婚、複雑な事情により介護を担うことのできない夫の母親(義母)を赤の他人となった著者が担ったという話。I became speechless. 言葉を失ってしまった。すごい人が世の中にはいるものだ。
Posted by ブクログ
一緒にいて子供に悪影響を与える毒親を介護するようになった場合、どのように対処すればいいのか。豊富な事例とともに紹介してくれる1冊だった。
毒親とは、単純に子供に対して暴力や暴言を与えていた親だけではなく、子供のやることに過干渉だったり、自分の老いを盾にして負担を強いてきたり、肉体的・精神的・経済的に子供に悪影響を与える親全般を指している。
嫌いな親であれば見捨てればいいと思ってしまうが、大嫌いだったからこそ最後に自分のことを認めてほしい、愛してほしい、そういった感情を抱く子供も少なくないようだ。
具体的な介護で苦労している人の話は読んでいて、こんな親なのによく介護する気になったな、と思うものが数多く紹介されていた。
介護をするにあたって頼れる機関やサービスがあること、認知症や老いによる変化への心構えがあるのも良かった。
一番重要だと思ったのは「親を『捨てる』」選択肢があるということだ。第6章の最初の数ページでしか紹介されていないが、あまりにも親が酷い場合は、見切りをつけることも大事というのは新鮮な考えだった。ただ、親と縁を切る場合、ちゃんと行政に引き継いでおく必要があることも覚えておいた方が良いだろう。
Posted by ブクログ
介護で自分の人生が消えて行く。
毒親の介護をして面倒を見ているうちに、自分自身が老齢になってくるが、貯金もなければ、年金もほとんど無い。そんな状態でどうやって生きていけば良いのか?
まさに、8050問題だ。
Posted by ブクログ
自分の他にもこのように苦しんでいる人がいると分かっただけでも良かった。
読んでいて暗くなるのでなかなか読み終わらなかったが、逃げ道もあるということが分かった。その逃げ道(相談する人とか)を知っておくのは重要だと思った。