あらすじ
生きるとは、何者かになったつもりの自分に裏切られ続けることだ。直木賞受賞作『何者』に潜む謎がいま明かされる―。光太郎の初恋の相手とは誰なのか。理香と隆良の出会いは。社会人になったサワ先輩。烏丸ギンジの現在。瑞月の父親に起こった出来事。拓人とともにネット通販会社の面接を受けた学生のその後。就活の先にある人生の発見と考察を描く6編!(解説・若林正恭(オードリー))
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Posted by ブクログ
「あんたもさ、子どもができたって言われてから今まで、うれしいって本気で思った一秒くらい、あったでしょ?すぐ別の気持ちに呑み込まれたのかもしれないけどさ、でも、その一秒だって誠実のうちだと思うよ」
「っていうか、いきなり百パーなんて無理じゃん!誠実への一歩目も、誠実のうちに入れてあげてよ〜」
何者で出てきたキャラクターやその周りの人たちの過去とそれからの話、といえどれも単体でも十分楽しめる短編集だった。
この作品を通して朝井リョウ先生の、どこにでもいる人の、日常の中で人に話せない、伝えにくいけど本人にとっては無視できない感情を掬い取るのが本当にうまいなあと思った。
・中高生が気軽に口に出す夢(軽い展望で本人は本当に叶うとは思ってない)の話しと誰にも話せない本気の夢
・他の人たちが交際相手や結婚相手、子供を作っていくことの過程の中で努力したり決意をしていく中で何もしてこなかった人の劣等感
・仕事が与えられた途端、あたかもその仕事の人でとして存在していたかのように振る舞うに見えてしまう様子を誠実と思えなくなり、苦しむ新卒一年目
タイトルが前作のもののセルフオマージュだったから内容としては結構ライトかなと思っていたけど想像以上に人物の心理面でディープだったので、何者 よりこっちの方が好きかも。
Posted by ブクログ
あらすじによると、「【何者】に潜む謎が今明かされる」とのこと。謎なんて潜んでいたっけ? と思いながらページをめくったけど、確かに『何様』を読んだあとは『何者』に厚みが増している気がした。
明かされる謎というのは、
第一話は「なぜ光太郎は出版社ばかり受けているのか」。『何者』でも言及されていたけど、本当の話だったのか。爽やかで心洗われるよう。ただ、翻訳家になりたいならアメリカより国内の文学部に行ったほうが早いよなとは思う。翻訳は英語力より日本語力なので。
第二話は、「なぜ理香たちは付き合って間もないのにルームシェアをしているのか」。まさかルームシェアから始まった付き合いだったとは。『何者』から際立っていた里香の不器用さ、プライドの高さ、潔癖さなどが本作でさらに際立つ。これがいちばんアナザーストーリーっぽい。
第三話の謎ははっきりしないけど、あえて言えば「あの頼もしいサワ先輩は結局どこに就職したのか」だろうか。しっかりした鉄道会社に就職している。理系だから技術職だろうか。
第四話もはっきりしないけど、「烏丸ギンジは新興の劇団、いや激団を続けられるのか」だろうか。ちなみに雑誌の表記は「劇団」となっていた。10年経って多少丸くなったのだろうか。ただ、ギンジ本人は今作でも直接の登場はしない。まるで「桐島」みたいだ。
第五話もこじつけのようだが、「瑞月のお母さんは心が弱いというけど、それは具体的にどういうことなのか。瑞月が就職先を考え直さなければいけないというなら、夫は何をしていたのか」だろうか。この話、いわゆるまっとうな人生を続けている自分には刺さった。
第六話はフィーチャーする登場人物はいないけど、就活を終えた新社会人には身につまされる話だと思う。スーツ着て、仕事ごっこをしているような自分は何様なのか、という疑問は誰しも頭の隅によぎったことがあると思う。そんな疑問にひとつの答えを差し出してくれる、優しい話。
Posted by ブクログ
『何者』のエピローグとも言える短編集です。各章で登場人物たちの背景が深掘りされており、本編で抱いていた彼らへの印象が大きく変わる人もいて、深く心に残りました。
Posted by ブクログ
短編集
最後の何様を読んで
やっぱり誠実かなあ
嘘をつかない若者と仕事がしたい。
訳のわからない理由で勝手に辞めないでほしい。
数回の面接ではわからない?
社会人になり長年たくさんの人たちと関わることになると、なんとなくその人の人となりがわかる気がします。
人事部の人は、採用時と採用後の人事考課を長年見ていると、人を見る眼の型が作られるのかもしれません
初めての面接官であれば、自分を何様と思わず、誠実に、誠実な人は誰かを考えるとよかったのではないかと思いました。それが先輩からの期待だったのでしょう
多様な人材を採用する現在の会社では、誠実さをどの程度重視しているのだろうか?評価の一項目だったりして…
Posted by ブクログ
直木賞受賞作の「何者」の登場人物の過去や未来について、6人のエピソードが書かれた物語。
事前情報が薄い中で読んでいたので気づかなかったが、読み進めていく途中で、これが前作の「何者」の登場人物に潜む謎を明かす物語だと判明する。
何者で、軽音サークルに所属し、就活のタイミングでは上手く思考を切り替えて内定をもらった光太郎の初恋の話や、留学やイベント運営など履歴書は優等生ながらプライドが高くどこか不器用で就活が上手くいかなかった理香と、同棲するちょっと厨二病風な彼氏の隆良との出会いなど、短編の物語が6作品綴られている。
特段、作品間で繋がりがあるわけでは無かったので、あくまで短編小説として読むかたちになる。前作の記憶が鮮明なうちに読めば、楽しさは増すであろう。
オードリー若林が解説を書いているが、自分の欠点を表裏一体な長所と捉えて受け流すことや、社会に出て正しさを追求しすぎず、状況に合わせて適応し擬態していくことなども時には必要だよね、という内容に共感できる。
物語の中では、面接官を務める若手社員が、自分は人の合否を判断できる人間なのかと悩むシーンや、優等生であるがために面白みがないと言われる事に理不尽さを感じる女性など、朝井リョウの作品はいつも解像度が高くて心理描写が上手いので、共感できる人物が度々登場してくれる。自分が日頃思っていたことを、思っていた以上の解像度で言語化してくれるので、やはりこの人の作品は面白い。
Posted by ブクログ
何者のその後って感じなんだろうけど、2冊で1冊のような、個人的には何様の方が好きだった。
結局「何者」に出ていた瑞月は母親だけじゃなくて父親にも裏切られて、夢も何者かになることも出来なくなったのが悲しいなぁ…
そしてサワ先輩がやっぱり良い人で良かったし、また理香みたいなめんどくさい系かと思っていた君島さんが本質をついていたのもいい終わり方でした。
Posted by ブクログ
『何者』のアナザーストーリーであり、正直前作を知らないと掴みどころがなく面白くないと思う。私が『何者』を読んだのは何年も前のことですっかり記憶になく、あらすじや登場人物を調べながら読んだ。
以下、印象に残ったエピソード。
「きみだけの絶対」
生きづらさを抱えている人に寄り添いたいというギンジ(主人公の叔父さんで作家)の話を聞いて。
“叔父さんが何かを差し出すことができているとして、その相手は、土日にきちんと自分の時間を持つことができて、この舞台を観に行くお金と身体の使い方ができる、本当にごく一部の人だけだ。”
「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」
友人に正しい姿しか見せたことがない。
自分より劣っていたはずの栄子が、結婚して子育てをして、自分の知らない母の趣味や関心ごとを知っていて、自分より先を歩いているように見える。正しいはずなのに、パッとしない”私”が自分の心情と重なった。ラスト、『何者』主要人物・瑞月の父親とああいう裏切りに着地するのか・・と。
Posted by ブクログ
思ったより「何者」との繋がりはなく、
光太郎の初恋、理香と隆良との出会い、逆算を考える女の子とサワ先輩との出会い、ギンジと親戚、むしゃくしゃしてやったと言ってみたかった、ずっと正当に生きてきた心のブレーキが強い人、当事者になった振りは誠実ではないと言う誠実を探している若者。「本気の一秒」の中の誠実。
どれも人の心の内の解像度が高く、言い表せることができない人々の感情をこの本を通じて改めて感じさせられた。
Posted by ブクログ
それぞれの話の良さがあると思うけど、「きみだけの絶対」も良かったが、「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」が1番印象に残りました。真面目に生きてきた人間が不利益というか、どうこう言われるのって何なんだろうか。真面目な人間、元ヤン人間どちらにも違って良いじゃだめなのか。。
最後の話が難しく私の腹落ち具合が悪かった(;;)
当事者や何様って話はわかるけど、いまいち落ちてこなかった。
朝井リョウさんの書籍はこれで3冊目ですが、言いたいことはわかるのにオチについていけないт т
もっと朝井さんの世界観を探検したいです!
Posted by ブクログ
1. 水曜日の南階段はきれい
バンド活動に打ち込む高校時代の光太郎と、密かに彼を見守る女子生徒の淡い青春を描き、後に彼が出版社を志す原点となる物語。彼女は金曜日の光太郎のライブを怪しまれずに見る口実として窓掃除をしており、そのカモフラージュとして水曜日に南階段を掃除していた。自身の目標を決して口に出せない彼女にとって、目標を堂々と公言して着実に達成していく光太郎の姿はひときわ眩しく、強い憧れの対象だった。有言実行を貫く彼の強さに深く惹きつけられ、読んだ私自身も「光太郎のように目標を言葉にして真っ直ぐに実現できる人間でありたい」と強く前向きな気持ちにさせられた。
2. それでは二人組を作ってください
何者』で同棲していた理香と隆良の出会いを描く前日譚。同居人を探す理香は、インテリアショップで働く隆良と出会う。二人は「意識高い系」や「クリエイター気取り」といった互いの虚栄心や中身のなさを冷酷に見透かし合う。しかし、学校の「二人組を作って」という言葉が象徴する孤立への恐怖から逃れるため、似た者同士として同棲を始める。理香の不器用で痛々しい自意識と人間的な弱さが描かれる。
3. 逆算
『何者』で達観した姿を見せたサワ先輩の過去と恋愛を描いた物語。彼は常に理想の結末から「逆算」して行動する合理的な生き方をしてきた。しかし恋愛でも相手を自分のレールに乗せようとし、すれ違いを生む。そんな中、予測不能な現在の恋人と出会い、理想に縛られ「今」を見失う逆算思考の罠に気づく。ゴールからではなく、現在を積み重ねて未来を築く大切さを知り、不器用な彼が人間らしく成長していく過程が描かれている。
4. きみだけの絶対
就活せず劇団を立ち上げたギンジの現在を、甥の高校生・亮博の視点から描いた物語。世間のレールから外れ泥臭く活動するギンジの姿は、安全な場所から観察する亮博たちには最初みっともなく映る。しかし、他者の評価に左右されないギンジの圧倒的な熱量と「自分だけの揺るぎない絶対的な価値」に触れ、彼らの心は大きく動かされる。他人の目に怯えず、自分だけの絶対を信じて無様に突き進むことの尊さと希望を描いた、読者への力強いエールとなる作品。
5. むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった
瑞月の父親と不倫関係になるマナー講師・正美の視点で描かれる。親の期待に応え常に「優等生」として生きてきた彼女だが、元不良の妹や「元ヤン」を売りにする同僚の方が周囲から愛され、評価される現実に理不尽さを募らせる。ずっと正しく生きてきた自分が損をしているという抑圧された不満から、「自分もむしゃくしゃして道を外れたい」という衝動に駆られ不倫に走ってしまう、真面目な人間の息苦しさを描いた物語。
6. 何様
『何者』で主人公たちと同じグループ面接を受け、内定を勝ち取った学生・克弘のその後の物語。社会人1年目となった彼は、人事部の都合で急きょ新卒採用の面接官を任されることになる。つい最近まで「評価される側」として就職活動の理不尽さに苦しんでいた自分が、たまたま内定を得て入社しただけで、今日から突然、他人の人生を左右する「評価する側」の椅子に座らされる強烈な違和感。必死にアピールする学生たちを前に「自分は一体何様のつもりなのか」と激しい葛藤と自己嫌悪に苛まれる。それでも自分の不完全さを自覚しつつ、与えられた「何様」としての役割を引き受けて生きていく覚悟を決める、大人への痛みを伴う通過儀礼を描く作品。