あらすじ
日暮れどき、ダートムアの荒野で、スコットランド・ヤードの敏腕刑事ブレンドンは、絶世の美女とすれ違った。それから数日後、ブレンドンはその女性から助けを請う手紙を受けとる。夫が、彼女の叔父のロバート・レドメインに殺されたらしいという……。美しい万華鏡のように変化しつづける、奇怪な事件の真相やいかに? 江戸川乱歩が激賞した名作が、満を持して新訳版で登場!/解説=杉江松恋
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Posted by ブクログ
とても評価が難しい作品です。レビューを参照しても賛否両論で、「江戸川乱歩が称えた通りの名作」から「時間の無駄」まで様々です。共通するのは犯人の分かりやすさで、特に後半は作者自身あまり隠そうとしていません。逆に言えば犯人が分かってからも楽しめる内容にしてあります。また風景描写は良かったという意見も多く、イタリアやイギリスを旅しているような楽しさがあります。という評価を得ることから、文章自体は一定以上の読みやすさはあると言えます。
低評価としては、犯行の理由に説得力がない、刑事が気づかないのがおかしい、探偵役の能力なら防げた犯行もある、などミステリ的な点や人物描写によるよものが多いです。
私は古典作品であればトリックに目新しさが無くてもリスペクトしたり、海外作品であれば登場人物の言動に違和感があっても「この時代のこの国の人はこういう考え方をしたのか」と興味深く感じたり、良いように解釈してしまうタイプなので、あまり評価を下げることはありませんでした。
ただ高評価の人、低評価の人、どちらなの意見も腑に落ちる点が多く、この作品はそこに魅力があると思います。読んでみて自分はどちらの評価に傾くのか。一度は読んでみる価値がある作品かと思います。
Posted by ブクログ
江戸川乱歩が猛プッシュしてた本なのでいつか読みたいと思ってた。
確かに面白くて読み応えがあったけど、どうしても古臭く感じてしまった。
推理小説という意識はすっぱり捨てて、普通の小説として読んだほうが楽しめる。
登場人物が魅力的で、特にドリアが際立っている。一般にイメージするイタリア人そのままで、当時の欧州の人も同じような認識だったらしいのが微笑ましい。
ブレンドンの間抜けさが読んでいてちょっとつらいものがあった。心情的にも状況的にも。
あとはレドメイン兄弟の一人、読書家の人物像も興味深かった。今でいうオタク。
トリック関連は現代人からすると厳しいものがあるので、当時どれだけ斬新で衝撃的なものだったのか知る由もない。そこは残念。
定番のラストのネタバレ展開は二段階、ギャンズと犯人の呼応形態になっていて面白い。
タイトルのレッドレドメインがすごくしゃれててお気に入り。
Posted by ブクログ
原著1922年刊。
本格推理小説黄金期(の前期?)の名作の一つとされ、特に日本では江戸川乱歩の絶賛以来評価が高いらしい。
冒頭の1,2章はちょっと読みにくさを感じ、あまり面白くないかなと思ったのだが、次第に物語に没頭させられた。
ちょうど私は1泊2日の検査入院で、その空いた時間を本書がとても楽しませてくれたと思う。
巻末の解説によると作者フィルポッツは普通小説の作家でもあったそうで、なるほど、本作は恋愛心理も追っていてそんな感じかもしれない。
エラリー・クイーンのような謎解きパズル小説とは違って、かならずしも結末前に全ての情報が読者に開示されるわけではない。が、そんなに不満が残る訳でもない。
後半は確かに心理戦のようなスリルがあって、面白かった。とにかく入院中の私を楽しくさせてもらい、たまたま持っていったこの本に、満足している。
Posted by ブクログ
余談ですが、今からちょうど100年前に書かれた作品。そんなに古い作品を読めるとは、今更ながら、文字ってすごいなぁと改めて思いました。作品自体は、驚くほどのどんでん返しがあるわけではありませんが、堅実な本格ミステリーだと思いました。アンソニーホロヴィッツの作品が好きな人にはオススメです。最後の犯人の手記は、当たり前のことながら、犯人視点なので、それだけ読むと倒叙もので、一冊で2度楽しめてなんか得した気分。主人公の刑事の無能ぶりが暴露されていて面白かったです。
Posted by ブクログ
江戸川乱歩が絶賛したらしい作品。良くある探偵が被害者の美人に惚れ込み、彼女のために捜査に邁進していく。のはいいのだが、兎にも角にも未亡人命!すぎるため、言っては何だがちゃんと出来てるのかな…ていうのが前半の印象。そしてそれを刑事のメンタルをガンガン抉ってでも真実をさらけ出していく後半。まあ未亡人だろな…て思ったけど、追い詰められていく様はなかなか面白かった。ただ描写が長いので読んでて大変ではあった。
Posted by ブクログ
イタリアやイギリスの美しい風景の中を、旅行するような気分でミステリーを楽しめました。
《自分ひとりに都合のいいようにものごとが進んでいたら、すぐさま疑ってかかったほうがいい。これは仕事でも人生でもおなじことだ》―ピーター・ギャンズ
江戸川乱歩さんが本作を激賞し、翻案したのが『緑衣の鬼』だそうです。
そちらもおすすめ。