あらすじ
文武兼ね備えたエリート武将は、いかに本能寺の変へと追い詰められていったのか。牢人医師としての出発点から、延暦寺焼き討ちで見せる冷酷さ、織田家中における異例のスピード出世、武官としての比類なき実力まで。近年急速に進む光秀研究の成果を踏まえ、謎多き素顔に英雄史観・陰謀論を排し、実証的に迫る。気鋭の中世史家による、渾身の一作!
序章 新時代の子供たち
第一部 明智光秀の原点
第一章 足利義昭の足軽衆となる
第二章 称念寺門前の牢人医師
第三章 行政官として頭角を現す
第四章 延暦寺焼き討ちと坂本城
第二部 文官から武官へ
第五章 織田家中における活躍
第六章 信長の推挙で惟任日向守へ
第七章 丹波攻めでの挫折
第八章 興福寺僧が見た光秀
第三部 謀反人への道
第十章 領国統治レースの実態
第十一章 本能寺の変へ
終章 明智光秀と豊臣秀吉
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Posted by ブクログ
○目次
まえがき
序章:新時代の子供たち
第一部 明智光秀の原点
第1章:足利義昭の足軽衆となる
第2章:称念寺門前の牢人医師
第3章:行政官として頭角を現す
第4章:延暦寺焼き討ちと坂本城
第二部 文官から武官へ
第5章:織田家中における活躍
第6章:信長の推挙で惟任日向守へ
第7章:丹波攻めでの挫折
第8章:興福寺僧が見た光秀
第三部 謀反人への道
第9章:丹波制圧で期待に応える
第10章:領国統治レースの実態
第11章:本能寺の変へ
終章:明智光秀と豊臣秀吉
あとがき
○感想
明智光秀を史料を通して見たとき、様々な側面で、光秀個人や織田政権の構造の実態を垣間見ることができた。
本書で学び得たものは多いが、特に興味深い織田政権の実態でいえば、光秀のような義昭麾下の足軽衆や朝山乗全、木下秀吉などの中途採用組が運営していたことから、在地でのトラブルが起きたり、慢性的な人材不足からの労働過多が起きていたこと。
また一方で、光秀は、室町幕府の政所執事を務めた伊勢家などの旧幕臣などの能吏を自下に組み込み、後半な任国統治の運営・支配に当たるスペックを持っていたこと。
織田政権は、こうした光秀ら多様な家臣に対象さし、明確な指示ではなく、大きな基本方針を示すに留まり、家臣はその基本方針に忖度して臨むことで忠節を示すという、前近世的な政権運営であったこと、など興味深い点は多々あった。
本書は上記のような事柄だけでなく、光秀の動きを丹念におった時系列確認用としても使えるので、是非オススメしたい。
Posted by ブクログ
麒麟がくるがものすごく面白いので、関連本を読んでいるうちにたどり着いた本の一冊。
ミーハーなもので、中高の知識もすっかり抜け落ちた上に、これまで戦国時代にさして興味もなかったうえに、最近読んだ戦国ものがへうげものだったおかげで、大した印象もなかった光秀のことが、帯にある通り、まさに「勝者が作る」歴史書や伝記などではなく、当時の書簡や存在にびっくりした「裁判記録」などによって実証的に光秀像を浮かび上がらせてくれた。
ドラマや最近の各局の関連番組で作り上げられる「心優しき名君」とか、ちらっとみたルイスフロイスの「腹黒い謀略家」とも違う、生々しい光秀像を得られた気がする。
何より驚いたんは、「光秀には信長の側室になった妹がいた」という点で、この妹の存在と、その死が光秀を最終的に謀反に導いたんだろうなぁ、という感じで。この妹が大河にはまだ出ていないから、お駒さんが養子になるのかなぁ、などと思った。
加えて、いろいろ過剰評価、逆ハリの過小評価も極端な信長の実際の革新性、そして問題点も浮かび上がってきていて、目から鱗が何枚も落ちてしまった。
本能寺の変の実際は、信長が推進した領国内の街道整備と、それが下支えする拡大政策、さらに平定された勢力圏内での一族優遇、という革新性と守旧的な政策に、最前線で東から西へ奔走しなければならないうえに、妹を失って家的な繋がりがなくなり、「検地よりも指出」なシステムによる統治を優先する光秀が家臣団の中であまり良い立場をもてずに、焦りと疲れから、という感じなんだろうかなぁ。
悪辣な魔王を成敗、というよりは、他の家臣もわかってくれるやろてきな発作的な行動で、結局人心掌握がうまくなくて失敗したんだろうなぁ。
いやー、面白い本だった。
Posted by ブクログ
光秀が謀反に至るまでの経緯が整理されており、また理解しやすい内容だった。また、その背景には現代の職場環境との共通点が見られる。特に以下の3点が顕著である。
1. 人材不足に伴う一人ひとりへの業務過多
2. 成果に対する過剰な質とスピードの要求
3. 一部人材の優遇に起因する立ち位置への不安・不信感
これらは現在の組織においても課題となり得る要素であり、光秀の事例は「過度な負担や不公平感が組織全体に及ぼす影響」を考えるうえで示唆的である。