あらすじ
十世紀に産声をあげたポーランド王国は、十四~十六世紀に隆盛を極めるが、王朝断絶後、衰退に向かう。十八世紀、ロシア・プロイセン・オーストリアによる分割で国家は消滅。第一次大戦後に束の間の独立を勝ち取るも、第二次大戦中にはドイツとソ連に再び国土を蹂躙された。冷戦下の社会主義時代を経て一九八九年に民主化を達成。潜在力を秘めた地域大国は今、どこへ向かうのか。栄光と悲運に彩られた国と民族の歴史。
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Posted by ブクログ
2019年がポーランドと日本の国交樹立100周年であったということを知り、この本を読んでみた。
凄絶な歴史を刻んだポーランド。
結果としてヨーロッパ諸国としては珍しく「敗北の美学」という文化がある。日本と共通した文化でもあり、親日家も多いとのこと。
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日本では、国境の策定という作業はめったには起きないのである。しかして、大陸の国にとっては、よくあることなのである。
歴史のイベントを負いながら、国境線の変更を追うのはちょっとむずかしいと思ってしまう。
日本では、地方という単位は、単なる地理上の区分であるが、大陸にある国は、国境策定の歴史、民族の歴史を反映しているものである。
ポーランドの歴史は、
ポーランド王国の黎明期時代
ポーランド・リトアニア連合王国時代
ポーランド3分割の時代
両世界大戦の時代
第二次世界大戦後の世界
にわけられる。
数度の蜂起の鎮圧、シベリア抑留、ナチスのポーランド侵攻、アウシュビッツ、そして、ソ連軍のカティンの森の将校3000人殺害
ポーランドも他の東欧の国々と同様、近年、ロシア(ソ連)とドイツ(プロシア・オーストリア)との脅かされた歴史なのである。
ポーランドは、芸術にも、科学にも憧憬の深い地である。
ショパン、ワイダ、スタニスワフ・レム
コペルニクス、キュリー夫人
政治的にも、ワレサや、ローマ教皇 ヨハネパウロ2世 を生んでいる。
目次は、以下です。
序章 王国の黎明期
第1章 中世の大国
第2章 王政の終焉と国家消滅
第3章 列強の支配と祖国解放運動
第4章 両大戦間期
第5章 ナチス・ドイツの侵攻と大戦勃発
第6章 ソ連による解放と大戦終結
第7章 社会主義政権時代
第8章 民主化運動と東欧改革
終章 ポーランドはどこに向かうのか
あとがき
主要参考文献
ポーランド略年表
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物語 ポーランドの歴史 - 東欧の「大国」の苦難と再生。渡辺克義先生の著書。第二次世界大戦が始まったのはナチス・ドイツがポーランドに侵攻したことが直接のきっかけ。中世には隆盛を極めていて、歴史的にも重要なポーランド。でもポーランドの歴史について詳しく語れる日本人は多くないと思います。ポーランドの歴史を一から学べる良書。
Posted by ブクログ
高校世界史では深く掘り下げなかったポーランドの歴史を一通り扱った新書本。ポーランドと聞くと、過去の歴史から他国から蹂躙されたイメージを持つかもしれない。事実、地政学的に見て、ポーランドは国土が平坦である。それに加えて、周囲が超大国ばかりであるので、それ自体は間違っていない。しかし、だからといって、建国以来、常に他国からの攻撃を受けたわけではない。
本書を読んでいくとわかるが、中世時代では「ポーランド・リトアニア連合王国」としてヨーロッパ諸国のなかでも絶大な力を持っていた。またその時代の時点で、今日でいう国会が開かれたり、ポーランド独自の文化が形成されたりなど、国として大きく発展していたことがわかる。
また古くからアメリカとの関係が深いことを今回読んで知った。これはアメリカ独立戦争時に、ポーランド出身「タデウシュ・コシチュシュコ」と「カジミェシュ・プワスキ」が、アメリカの独立に協力したことに関係する。
Posted by ブクログ
ポーランドと聞けばどうしても第二次世界大戦のイメージが強く
弱い、かわいそうといった印象的を持ってしまう。
しかし実際に本書で歴史をなぞってみると
蜂起、暴動、動乱、そして戦争と荒々しい印象に変わっていった。
その中でも地理的要因で大国の餌食となり、幾度も消滅と復活を繰り返す特異な国である。
本書は基本的な内容になっており
世界史が良くわかってなくても理解できた。
また新書サイズで短く親しみやすかった。
一方で仕方ないことだが名前は覚えきれなかった。
忘れた頃にまた読みたい。
余談だが本書を手に取るきっかけとなったのはhoi4だった。きっと同じ方もいるかもしない。
Posted by ブクログ
ポーランド、名前は耳にするがその歴史はほとんど知らなかった。ソ連、ドイツに挟まれたこの国の歴史は常に戦争がつきまとう。自国が地図から消えたことも。日本で暮らしていると、そんな国賀あるのか⁈と思ってしまう。戦国時代に国内で戦っていた日本はある意味平和だったんだろう。
Posted by ブクログ
ベルギーに続いて、物語シリーズのポーランド。ベルギーもそうだがヨーロッパの歴史はむしろ小国から学ぶべきなのかもと思った。大国に翻弄され、綱渡りをし、時には国家としては滅亡し、また復活する。しかしその復活の際には領土は以前と違っている。感覚的にはそんなことあるの?という話が普通にあり、「固有の領土」という概念は、現実世界には存在しないこと理解させられる。その教訓のなかでは色々な問題があるとしてもEUの成立は画期的だし、存続することは重要なのだ。西洋文化だけを賛美する必要ははないが、両大戦の重みを背負った上での文化がそこにはある。
Posted by ブクログ
王国の出現から現代に至るまでを網羅した、ポーランド歴史書です。
強国に挟まれた立地が続き、強国でありながら苦難が続いてきたポーランド。
やがて共産主義と全体主義の強国が生まれ、国境だけでなく民族的・主義的にも分断されてしまいます。
戦争の見え隠れする時代での講和は、ポーランドにとっては嬉しいものではありませんでした。
第二次世界大戦後の世界で、彼らはやっと自分たちのために生きることを始められたように思えます。
情報量が多いですが、内容はとても難い一冊。
Posted by ブクログ
手堅くまとまっている。ポーランドは理解の難しい国だ。まあ、理解の簡単な国などないが。読んでいて、また、読み終わって、暗澹たる気持ちになる。国家の発展の可能性は、ポーランドも日本もどこにあるのだろうか?
蛇足だが、コラムがどれも面白かった。
Posted by ブクログ
渡辺克義「物語ポーランドの歴史」(中公新書)
ポーランドの歴史について中世から現代までを要約。
1.7世紀ごろから今のポーランドにつながる部族が出てきた。10世紀ごろにキリスト教化したポーランド国家が現れた。13世紀からドイツ騎士団と対立。
2. 14世紀に女王ヤドヴィカは、隣国リトアニア大公ヨガイラ(ポーランド語ではヤギェウォ)と結婚。ヤギェウォ朝による同君連合が成立した。16世紀には中小貴族シュラフタの発言力が増す。そのころポーランド・リトアニアの両国が統合して大国になるが王朝の断絶により選挙王制になり、王権は弱体化した。
3. 18世紀になると貴族間の対立が隣国の干渉を招くようになり、1795年にはロシア、オーストリア、プロイセンによる第三次分割でポーランド国家は消滅した。
4. フランス革命後、ナポレオンの征服によりワルシャワ公国が設立された。ナポレオン敗退後はロシア皇帝を統治者とするポーランド王国とプロイセン領、オーストリア領に再び分割された。
5. 第一次大戦後、ポーランドは独立。当初の共和制はピウスツキの独裁体制に変貌した。
6. ナチスドイツがポーランドに侵攻、ソ連も東方から侵攻した。ポーランド亡命政府がパリ、次いでロンドンで活動。一方ソ連でもポーランド解放組織が作られた。ドイツが退却しつつある中で、亡命政府と国内パルチザンがワルシャワで蜂起するが失敗。その後にソ連がポーランドを解放した。ワルシャワ蜂起の功罪については議論が続く。
7. ソ連の意向を英米も承認し、ソ連がバックアップする労働党政権に亡命政権が加わる形でポーランド人民共和国が成立するが、ほどなく統一労働者党の独裁に以降。
8. 社会主義政権下でも何度も国民の蜂起や政権交代が続いた。
9. ソ連の崩壊のなか、連帯を率いたワレサ政権が誕生するが安定した統治はできず。今日まで多くの政権交代が続いている。
ポーランドの歴史を駆け足で紹介
ポーランド人は被害者意識が強い印象を持っていた。ウクライナの歴史を読むうちに、近隣諸国の歴史も知る必要があると思って、この本を読んだ。人名や出来事が並べられている感じで、読後感も薄い。その反面、コラムは面白かった。ミュンヘン協定でポーランドがチェコから領土を獲得していたことも記されている。
Posted by ブクログ
日本と同じく、敗北の美学を持つ国、ポーランドの歴史を紐解く入門書です。
この本を例えるならば、東京にある地方アンテナショップでした。
全く知らない読者に、ポーランドの征服の歴史、文化、風俗を幅広く教えてくれます。
なので、一分野に限った研究をしたい方には不向きかもしれません。
あと、ポーランド語源の名前が列挙されるので、一度読んだだけでは覚えきれないこと必定です。一目でわかったのは、辛うじて、コペルニクス、ショパン、キュリー夫人くらい(ワイダ元大統領って、一般常識の範疇ですかね?)
私は、年末の渡航の予定に合わせて読みました。
この本をプレゼントしてくれた友人いわく、
『旅行は、現地の歴史を知るほど魅力的になる』とのこと。
その助言に納得しました。
ゲットーや市民蜂起を知らずにワルシャワにいくのは、源平合戦を知らずに壇之浦に行くようなもの。第二次世界大戦を学ばずに、広島原爆ドームを下から見上げるようなものだからです。
歴史的な意義が、ただの瀬戸内海、火災事後処理待ちの建造物に貶められてしまいます。
地図上いくども姿を消しながら民主化を達成した国、ポーランド。
この国に初めての輪郭を与えてくれる良書でした。
Posted by ブクログ
ロシア、ドイツ、オーストリアという強国に挟まれ、百年以上国自体が失われていたこともあるポーランド。
地動説を唱えたコペルニクス、フランスにありながら生涯ポーランドへの愛国心を燃やしたショパン、ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世などの世界的な名声を持つ歴史上の人物を生み出した国、ポーランド。
そして、ヒトラーとスターリンの密約により第二次世界大戦の最初の侵略の標的となり、その後はアウシュビッツ(アウシュビッツはドイツ語読み。ポーランドにおける地名はオシフィエンチム)などホロコーストが行われた収容所なども置かれたポーランド。
欧州において波乱の歴史を経ながら、なかなか日本でその国の歴史を知る機会はない。そのポーランドの歴史を10世紀のポーランド王国の誕生から、現代までを辿った一冊。
Posted by ブクログ
『プラヴィエクとそのほかの時代』を読むにあたって歴史を少しでも知っておいた方が良いかと思い読み始めた。人名や地名がすんなり頭に入らず多少読み難かったが、大まかなポーランド史の流れがわかる。本書でも紹介されている『また、桜の国で』の舞台がワルシャワ蜂起だったので、その辺りは分かりやすかった。第二次大戦中にユダヤ人の迫害や虐殺といえばナチスドイツだと思っていたが、ポーランドでも反ユダヤによる虐殺などもあったのだと知った。戦時下において虐殺と報復を繰り返し、そこまでして守らなければなかない国とは何なのかと疑問に思うこともある。
Posted by ブクログ
中世から現代までのポーランドの歴史の概観。タイトルにもある通り、「苦難と再生」というテーマが本書を貫いていた。
ページをめくるたびに必ずと言っていいほど闘争が行われている。ドイツとロシア/ソ連に挟まれた地理的条件ゆえか、国内外問わずとにかく闘っている。日本人には想像もできないほどの歴史であるとともに、それでも今日なおポーランドという国が存続していることに人間の強さを感じないわけにはいかなかった。
読み物としては、歴史的背景や他国の事情、実際の戦闘の様子など痒いところにも手が届くものであった。一方で、政治に関する話に偏っており、やや説明に退屈した部分もあった。