あらすじ
真打ち昇進を目前に控えた二つ目・佃家花蔵が、高座で「犬の目」を口演中に、酔客に左眼を殴打され殴打され、廃業の危機に。佃家傳朝と梅蔵は長年の不仲を改め、弟弟子を援助することを誓うが、その直後、夜道で傳朝が命を狙われる。相次ぐ噺家受難の陰には思いもよらぬ真実が……。名探偵・八代目林家正蔵の推理がまたもや冴え渡る、痛快落語ミステリー第三弾! 文庫書き下ろし。
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Posted by ブクログ
昭和稲荷町らくご探偵シーズ3作目。
座布団探偵・林家正蔵(後、彦六)の登場する場面は多くははないけれど、鮮やかの一言。
3作の中では一番すんなり読めた。
弟弟子が高座で酔客に殴打され、眼球に大変な怪我を負う。彼の為に一肌脱ごうと相談の帰り、主人公、佃家梅蔵の目の前で兄弟子が暴漢に襲われる。
ここまで何の謎も感じなかったのだが、主人公が正三の長屋を訪ねた途端に、事件の様相がガラっと変わってしまった。
後半は話が悪い方へ悪い方へと進んで、終盤は早い展開で結末を迎える。苦い諦観を感じていたんだけど、ほっと息をつけた。
シンドイ状況でも洒落のめす落語家たちの会話が、心地よかった。
「まあ、ここで小判の五十枚も叩きつけて姿を消せば本寸法だが、急だったから、懐都合があいにくなんだ」
名文句。
解説によると、このシリーズに登場する山桜亭馬八が、後の神田紅梅亭寄席物帳シリーズの寿笑亭福の助とのこと。
Posted by ブクログ
作者の座布団探偵シリーズはみな面白いのです。今回も一気に読み切りました。長編ではあるのですが、読んでいる感覚は連作短編のよう。予想しない展開に読む手が速くなるのですが、読み終わってみると、「こういう結末を予想していた。いやいや、こういう結末を期待していたんだ」という、これもまた、収まるところに収めてくれるほっとする話でした。
160ページに「あたしくが聞いた中では」とあるのが、誤植なのか、それとも高座の世界ではこういう言い方があるのか、勉強しておこうと思いました。
解説の中では座布団探偵シリーズの関連も整理され、スターウォーズと同じように、今度、時系列に並べて読み直すのも一興、と思ったところです。
次の活躍を待ち望んでいます。