あらすじ
本書は、中国の自動車強国戦略の実態を解明し、2030年に到来する中国のモビリティ社会のシナリオや日本自動車関連企業のあるべき姿を大胆に議論します。
中国政府は自国の製造強国戦略、「中国製造(メイド・イン・チャイナ)2025」の中で、自動車産業の成長こそが先進国にキャッチアップするためのキーになると位置づけ、「2025年に世界自動車強国入り」する、との目標を掲げています。過去100年にわたり形成されてきた世界の自動車産業構造を変革しようとする中国政府の“戦略”は、電気自動車(EV)を核とする“新エネルギー車革命”で自動車産業のパラダイムを転換させようとする大胆な試みです。それは今後日本の自動車産業界にも甚大な影響を及ぼすこととなります。
安倍晋三首相はG20大阪サミットで来日した中国の習近平国家主席と会談、来春に国賓として習主席の訪日を招請し、習主席も原則としてこれを受け入れました。これは日中関係が「正常な軌道に戻った」ことを表す象徴的な出来事です。現在日本自動車大手3社は中国を最重要市場に位置づけ、EVの生産能力増強に取り組み、これに追随するサプライヤーも中国戦略の策定を急いでいます。いかに中国のEV革命の実態を正確に把握しつつ中国戦略を練るかが、各社喫緊の課題となっているのです。
その一方、昨年来、EV、コネクティッドカーなど次世代モビリティ関連の書籍は多数発売されているものの、中国のEV革命に伴う自動車産業政策の変化、電池・新興EVメーカー、自動運転、スマートシティの動向全体を俯瞰する書籍は皆無です。本書は中国で進められているEV革命の全体像と日本へのインパクトがわかる待望の本です。
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Posted by ブクログ
2019年と今となっては少し古くなった情報だが、筆者は長年現地取材を重ねているほんとうの専門家で、中国自動車発展の概観と内燃機関自動車では果たせなかったブレークスルーがEVによって成し遂げられようとしていさまを知るのに最適。製造業大国だった日本に学んだ叩き上げ型(BYD、CATL)、アメリカのIT、ソフト開発から学んだ新興ブランド(NIO、シャオペン)、それに国家政策で成長した国営自動車産業(日米欧の合弁企業含む)の3つに大別されるようだ。自分は現在の中国は私有を否定したマルクス経済学の世紀の失敗を経て、経済的には成功したドイツ型の国家社会主義の運営だと思っているが、この本でも国家政策がまず基本にあることが解説される。競争力のある企業育成のため、乱立は防ぎ生産基盤を持たない場合は認可しない。電池など、外資に不利な技術規制で巧みにコントロールして中国企業の育成を図る。また都市の住民は環境規制から自家用車を望む層のうちわずかしか許可されないなど、まだまだ需要は多そうだ。
投資目線で伝えられることが多い中国EVについても、背景/全体像などを識るのにとても良い本だった。
Posted by ブクログ
2つの100年 「中華民族の偉大な復興」
2021年 共産党創設100年
2049年 中華人民共和国建国100年
中国製造2025 10大産業の発展
①IT ②NC/ロボット ③航空宇宙 ④海洋設備 ⑤鉄道/交通
⑥省エネ ⑦電力設備 ⑧農業設備 ⑨新素材 ⑩バイオ/医療
2022年 中国自動車産業の外資への開放 合弁規制撤廃
年間3000万台生産(日米各1000万台) 3.2億台保有(2019年)
シェア VW17%、GM15%、日産7%
中独連合
中国 :AI、メガEVメーカー
ドイツ:スマートファクトリー、メガサプライヤー
2005年~
中国自主ブランド(=知財権を持つもの)
民族系 吉利汽車 VOLVO LYNK&CO、長城汽車 SUV
地場サプライヤー 低利益率
NEV(新エネルギー車)市場
政府+地場自動車メーカー+電池メーカー
BYD
2010年 オギハラ買収
2018年 EVプラットフォーム33111
2019年 トヨタと共同開発契約
テスラ
中国生産 ナマズ効果=敵がいると強くなる 競合もサプライチェーンも強くなる
NIO 打倒テスラ ES8 NOMI 対話型AI
小鵬 中国のテスラ
チャイナビッグ1 一汽、東風、長安 大手3社が統合?
トップの交代、包括的戦略提携 実施
トヨタ、VWなみ1000万台 25兆円 60万人のメーカー
電池
1.CATL、2.パナソニック、3.BYD、4.LG
主要4部材 中国国産化率90%以上
正極材 33% セパレーター12% 負極材7% 電解液8%
コバルト 鉱石 コンゴ48%、精錬 中国50%
硫酸ニッケル 中国60%、リチウム 中国30%
中国の産業政策 多産多死
AI
中国 交通事故と渋滞で年間4兆円の損失
国産AIチップ、人材、理論研究、インフラ
BAT 百度、アリババ、テンセント
日本のAI予算 1200億円(2019年) 中国、米国の2割
日本車
1.機能、省エネ 2.プラットフォームによる価格競争力、3.現地設計
2023年 トヨタ 日産 ホンダで660万台へ
地場電池、地図ライセンスの地場アライアンス、
全個体電池 特許の5割が日本
FCV インフラ整備 補助金
日本車500万台、日本車以外2000万台強
欧米部品メーカー
ボッシュ AI事業部 蘇州研究開発センター 広州イノベーションセンター
コンチネンタル 長沙市スマートシティ
アプティブ 蘇州研究開発センター 中国電信共同実験室
Posted by ブクログ
①中国は自動車産業中長期発展計画を発表し、中国初の世界ブランドを育て、自動車強国入りを実現させようとしている。
②中国は自動車産業においてドイツと手を組み世界を狙いに行く。
③地場サプライヤーの発展が遅れ、外資系サプライヤーによる寡占状態になっている。
④その中で中国はまず、NEVの導入を進めている。
EV革命においては電池が大切な要素。
自動運転に関しては百度が圧倒的トップで、アポロという自動運転プラットフォームを作成している。
雄安新区
燃料タンクから車輪へから、油田から車輪へに変化
水素を水の分解から作るFCVが大切
Posted by ブクログ
登録漏れ。復習的に読んだ記憶がある。マークラインズなどでとれるデータと中国人らしく中国の一次資料からとった情報を日本人にわかりやすくまとめている。中国に行く前の予習、復習レベル。
Posted by ブクログ
2015年に李克強首相が全国人民代表大会で提起した「中国製造2025」、「2025年までに世界の製造強国の仲間いりを果たし、2035年までに世界の製造強国の中位に到達、2045年までに製造大国としての地位を固め、世界の製造強国のトップレベルへ躍進」を掲げた。IT、先端NC工作機械・ロボット、航空宇宙設備、バイオ医療・先端医療機器等、10大産業の発展を計画。その大きな柱の一つが省エネ・新エネルギー自動車。エンジンが電池に置き換わることで、タンク、マフラー、ラジエーター、トランスミッションといった多くの部品が不要になる。ここで日米欧との技術的な遅れを克服し、電動化とITの融合で、「カエル跳び型(リープフロッギング)」発展戦略で競争優位を構築、自動車産業のパラダイム転換を目指す。中国の自動車生産台数は、2008年に米国、2009年に日本を抜いて世界一。米国や日本が1000万台前後/年なのに、既に2800~2900万台弱の規模にあるが、「2025年に世界自動車強国入り」を目標に掲げ、第1ステップは、新エネルギー車(NEV)市場を育成。補助金制度とNEV生産の義務づけにより促進。政府の販売目標は、2020年に200万台、2025年に700万台、2030年にには新車販売の約半分の1700万台の計画。第2ステップは中国発の世界ブランドの育成。2025年までに、自動車メーカー及び自動車部品メーカーのトップ10に複数の中国企業が入ること。第3ステップは、自動車強国の発展を象徴する地場メーカーの海外進出。
2030年頃にはモビリティ(人々の移動)が大きく変わり大変革期を迎える。クルマの消費は「MaaS」(Mobility as Service)へ進化し、「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)が自動車メーカーの競争力を左右する。中国は「世界のEV生産工場」として、スマートカ―やスマートシティ関連サービスの海外輸出の拡大を目指す。
上海汽車、東風汽車、中国一気、北京汽車等、外資との提携グループの再編と、吉利汽車と長城汽車等の民族系自動車の育成を進めている。東風汽車等大手国有自動車メーカー3社は統合の計画があり、3社が合同すれば、2018年の合計販売台数は約1000万台・従業員60万人超、売上高約25兆円の巨大自動車メーカーとなり、トヨタ、VW、日産・ルノーに肩を並べる「チャイナビッグ1」が誕生。NEVで言えば、2018年の乗用車販売台数は、テスラに続き、BYDと北京汽車が2位・3位に位置し、BMW、日産を上回っている。BYDのEVバス・タクシー事業は、日本・米国・英国・ブラジル等、既に50ケ国300の都市で展開。昨年中国政府はNEV市場の外資の出資制限を撤廃、合弁を拒絶していたテスラも、中国政府の政策転換と米中の貿易摩擦で輸入関税が15%から40%に引き上げられたこともあり、「ギガファクトリー3」を建設・現地生産を始める。地場自動車産業の競争力低下の懸念があるが、補助金に依存した体質の転換を図り、競争環境を整え、EV事業環境全体の活性化を図ろうとしている。事実、「打倒テスラ」を目指す中国新興EVメーカーが台頭しつつあり、NIOは「対話式AI機能」を搭載した高級EVを製造・販売、ニューヨーク証券取引所に上場。
EVの未来を左右する電池開発も政府の保護政策のもと、育成が進んでおり、TDKの子会社から車載電池部門を独立させCATLを2011年に設立。外資系を含む自動車メーカー30社以上に電池を供給。創業後7年でパナソニックを抜いて電池市場世界トップの座に。既に世界の市場の中で中国のシェアは45%という見方もあり、中国製電池が世界を席巻しつつある。
自動運転の鍵となるAI。BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)が、海外企業を含むAI関連企業60社に投資し、傘下におさめ、自動運転技術の開発やスタンダードの確立を進めている。習近平国家主席の肝いりで雄安新区ではスマートシティの構築・整備も進められている。
IRとインバウンドが目玉となっているようなどこかの国と違って、中国の成長戦略は明確で力強い。中国EV車が街中で目立つようになるのも、そう遠い先ではないかもしれない。