【感想・ネタバレ】決定版 マーラーのレビュー

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Posted by ブクログ

河出文庫から出ている吉田秀和の文庫本は「バッハ」、「ブラームス 」を読んでおり、本書が初めてではないが、それでもまず、初めに思ったのは、かつては吉田秀和全集や単行本でしか読めなかった吉田秀和の文章が、近頃、河出文庫から出るようになってきて、文庫本で気軽に手に取り、読むことが出来るようになったのことは、良い傾向であり、嬉しいということだ。

これからもどんどん文庫化していって欲しいものである。ついでに言えば、同じく現行で買える、ちくま文庫の「吉田秀和コレクション」より、文字のサイズが若干大きく、太字になっているので、視認性が上がり、読みやすくなっていのはありがたい。

さて、内容についてだが、私はマーラーを頻繁に聴くようなマーラー愛好家ではないので(マーラーのCDは、この本でも取り上げられている、バーンスタインの全集、ショルティの全集をはじめとし、バルビローリ、カラヤン、テンシュテット、アバドなど100枚近くは持っているが、他の作曲家に比べると遥かに少ない)、他の作曲家に比べて理解が足りないところがあり、むずかしいと思える部分も少なくなかった。特に、本書の中でもっともボリュームのある批評文「マーラー」は、むずかしかった。

全体としては、「世界の指揮者」や「之を楽しむ者に如かず」にも同じ文章が載っているので、何本かの批評はすでに読んだことがあり、全集などでも、内容が似通った文章を読んだことがあるので(それに吉田秀和一流のレトリックにも見慣れているのも手伝ってのことだろうが)、既視感がかなりあった。

吉田秀和は文庫あとがきに「これはマーラーがまだ新しかった頃についての一音楽執筆業者のささやかな体験の記録でしかない。だが、不完全ながらもマーラー入門のような役にたったらとしたらうれしい」と書いているが、マーラー入門者には、少しむずかしいと思う。だが、アナリーゼやむずかしい部分を飛ばしたとしても、勉強にはなるので、読む価値は十分にある。

そして、体験の記録=マーラーの受容史としては貴重な価値がある。その面を重視して、文庫化の際に、批評文の書かれた年代順に並べてくれていたら、吉田秀和のマーラー受容、ひいては多くの日本人にとってのマーラー受容史がもっともわかりやすい形で見えたのではないかと思う。

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2021年10月30日

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