【感想・ネタバレ】運命の塔(上)のレビュー

あらすじ

死刑制度について、職務を逸脱した発言をした元法務大臣・榎木雪夫の孫が、誘拐された。巧妙に仕掛けられたトリックによって、身代金1億円の奪取を図る一方で、反政府組織を名乗る犯人は、犯行声明文を公表する。榎木の義父で、政界の重鎮である大河原善造の特命を受け、元秘書・平岡道義は、事件の裏を探り始める。政治家一族を襲った誘拐と脅迫事件。<上下巻>

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

上下巻読み通しての感想。
登場する人物達がみんな複雑に絡み合っている。
相関図にすればひと言で済んでしまうような関係だけれど、そこに至るまでは互いの関係がはっきりとしないまま物語は進んでいく。
主人公である平岡道義は3歳で両親を放火殺人で殺されていた。
父か母か、どちらかの手によって炎の中から外へ放り出された彼は、大変なやけどを負ったものの命は助かる。
燃えさかる炎への恐怖、成人してからもときにパニックに襲われてしまう心に刻まれた大きな傷跡。
幼い道義が経験した過酷な過去である。
やがて道義は警察官となり、その後代議士・大河原の私設秘書を経て、現在は調査事務所を開いていた。
秘書を辞しても大河原との縁は切れることはなく、大河原の孫が誘拐された事件をきっかけに、自分自身を襲った過去の放火事件を調べ始める。
自分を守るために嘘をつき続けた人たち。
過去に犯した犯罪も、結局のところ自己保身のための身勝手な犯行でしかない。
否応なく巻き込まれてしまった道義こそ、彼らによって人生をそのものを狂わされてしまったと言ってもいいと思う。
だからこそ、亜矢との出会いの意味は大きい。
人としてもう一度人生を歩んでいくことが出来ればいいなあと思う。
かなりの長編だったけれど、その長さが特に苦にはならなかった。
構成も展開も壮大になりすぎた感じがしないでもないけれど、「運命」というものを感じた物語だった。

0
2017年03月01日

「小説」ランキング